レースの開催されるパイクスピーク ハイウェイのゲートは午前4時にオープンする。そのため午前3時に目覚ましで起床。なるべく音を立てないように出発の準備をし、午前3時20分トラックのエンジンをかけ、キャンプ場を出発。こんな朝早くにうるさくしてごめんなさい。昨日下見をした24号線を東に向かう。しかしレース観戦に向かうような車は全く走っていない。ちょっと早すぎたかなぁ? 3時50分、24号線を下りるとパイクスピークハイウェイに登る道は大渋滞。皆コロラドスプリングスから観戦に来るんだね。料金所ゲートは2つしかないから午前4時をすぎても渋滞の列はなかなか進まない。重いトレイラーを牽引しながら、上り坂をゆっくり少しずつ登っていくのは結構辛い。料金所ゲートを通過したのが午前4時30分。その後は順調に走るが、スタートライン近くの湖まで来るとまた渋滞。スタートライン手前にピットがあり、レース前のレースカーやオートバイが並んでいるからだ。
スタートラインをすぎるとまたスムーズに走れる。しかしあたりは真っ暗、何の案内もないためいったいどこまで行って良いのやら?しばらく行くとダートロードに。路面は雨に削られたのか?結構溝が出来ていて走りにくい。こんな荒れたところをレースで走るのか?とちょっとびっくり。長いトレーラーを牽引しているため大きな駐車スペースを捜すが、そのようなところは全くない。あっても道路脇の小さなスペースか?だいたいの場所はキャンプ許可費100ドルを払って前日から泊まり込んでいるキャンピングカーに占有されている。結局グレンコーブまでに停められそうなスペースはなくそのまま車の流れにのってさらに山の上に向かうことになった。グレンコーブから先は九十九折れの急坂、おまけにガードレールもなく同乗者達は祈るような気持ちでいたそうである。こんな坂をトレーラーを牽引しながら上るバカは他にはいないだろう。道幅をいっぱいいっぱい使ってカーブを曲がる。森林限界を超え、眼下にコロラドスプリングスの街の明かりを見下ろしながら登り切り、午前5時15分やっと大きな駐車スペース デビルスプレイグラウンドに着いた。ここの標高は3940メートル、トラックの外に出るとさすがに寒い。真冬用の防寒具を持ってきて良かった。
やがて朝日が昇り始める。今日は天気が良さそうだ。
N38.86349 W105.06871 標高3940m
ここまで登ってきたキャンピングカーは我が家のトレイラー以外はトラックキャンパーが数台とC型モーターホームが1台、後はポップアップトレイラーが一台であった。とりあえずトレイラーの中でレースまで仮眠を取る。午前8時30分、トレイラー内で簡単な朝食を摂ってから、レース観戦に出かける。会場にはヘリコプターが飛び交い結構盛り上がっている。 子チャック(弟)を背負子にのせ、折り畳みイスと、水筒、カメラ等を持って駐車場はずれの崖に陣取る。ここはラジオの実況地点のコーナーの上でラジオの実況が良く聞こえる。子連れでさらに標高が高くちょっと歩いただけで息切れするので、あまり動き回ることはできない。するとすぐにレースカーがやってきた。
これはスーパーストックカークラス
このグレンコーブからデビルスプレイグランドまでの急坂は今は舗装されてしまっているのが非常に残念。昔のレース写真を見るとガードレールもない急坂をドリフトしながら崖際すれすれに走っていくここが一番の見所だったようである。デビルスプレイグラウンドから上はまたダートロードになっているのだが、歩いて簡単に見に行ける範囲は直線ばかりであまりおもしろくない。この先は観戦車両進入禁止のためかなり歩かないとおもしろい観戦ポイントまでたどり着けない。確かに森林限界を超えたこのあたりの眺めは素晴らしいのだが、レース観戦のためにはちょっと今一かなぁ。
次回は100ドルのキャンピングフィーを払って前日から泊まり込みグレンコーブより下のダートロードで観戦した方がおもしろいかもしれない。
これはオープンホイールクラス
これもオープンホイールクラスだがインディーカースタイル
さすがに実際のレースカーの音は迫力がある。
このレースで一番の期待は日本人レーサー、スズキスポーツ社長のモンスター田島がコースレコードを破れるかどうか?1994年にRod Millen 選手が樹立した10分4秒が今までのコースレコード。これを車両開発に100万ドルをかけたモンスター田島が破れるか?そして10分の壁を破れるか?そこに大きな期待がかかっており、ラジオの実況も田島選手の名前と100万ドルというのを盛んにアナウンスしている。実は田島選手の名前と僕の名前は発音が結構似ており、アメリカ人が発音するとまるでラジオで僕の名前を連呼しているよう。最初は何でラジオで僕の名前を呼んでいるのか分からず、ビックリした。そしていよいよ田島選手のスタート。ところがすぐメカニカルトラブルでコースを外れたとのこと。ガッカリ、しかしラジオの実況では後で再度挑戦するとのことでそれに期待する。そしてすべてのレースカーのタイムアタックが終わったところで再度田島選手のスタート。今回は順調にスタートした模様。眼下に田島選手の車を追尾しているヘリコプターが見える。レースカーの速度観測地点の記録は普通の選手がだいたい120~150 km/hr のところ 田島選手のスズキXL-7はなんと 203 km/hr を記録。まわりからは「すげぇー!」とどよめきが上がる。そしていよいよ田島選手の車がやってきた。
もっとド派手なドリフトを期待していたが、以外と地味な走り。やっぱり速く走るには無駄なドリフトはしないのね。
早すぎて車の頭が切れてしまった。あっという間に通り過ぎていく。 ラジオの実況を聞いていると無事頂上に着いた模様、しかし、コースレコードを破ったのかどうか?10分の壁を破ったのかどうか?なかなか結果が出ない。ラジオのアナウンサーは思ったほど記録は伸びていないと言う。そしてようやく非公式ながら結果の発表。
10分1秒
10分の壁は破れなかったが、見事新コースレコードを樹立した。同じ日本人として田島選手の偉業を誇りに思う。
トレイラーに戻り、遠くにオートバイのレースを見ながら昼食とする。最後にビッグリグクラスという 大型トレイラートラックの頭の部分 が一台だけ走り、競技を終了した模様。しばらくするとレースを終わった競技車両が一斉に頂上から降りてくるパレード。
観客は皆道路に走り寄り、選手達に良くやったと手を振る。
競技終了と同時に山は雲に覆われ、急に土砂降りの雨が降り出した。パレードが過ぎると駐車場の車が皆一斉に山を下りだす。駐車場の車がほとんど出払った午後2時に我が家も山を下りる。予想通り帰りは大渋滞。田島選手が約7分で登ったスタートラインからデビルスプレイグラウンドまでを逆に降りるのに2時間15分を要した。キャンプ場に戻ったのが午後5時50分。今日は本当に長い一日でした。夕飯は簡単にカレーライス。