福森の2年振りとなる直接FKによる先制点。チームの実質的なエースである小柏の今季初得点を含む4点を奪って,なおかつクリーンシート。今季初の連勝。試合数は違えど,降格圏の16位とは勝ち点で6点のアヘッド。
結果だけ見れば文句なしの快勝といえる試合だが,不安は募る。横浜,川崎,広島等の上位チームとの対戦を多く残す日程においても安全圏とは言えない上に,何より監督の采配に疑問ばかりが残るからだ。
ここま . . . 本文を読む
1970年代のハリウッドを舞台にした若者の恋愛劇,というシンプルなプロットを,あのポール・トーマス=アンダーソン(PTA)が撮ると,ここまで捻れて豊かな物語が現出するものなのか。主人公を演じる二人に新人を充て,トム・ウェイツ,ショーン・ペン,そしてブラッドリー・クーパーというビッグ・ネームを,メイン・プロットから逸れていく横道に配することで,映画ならではの贅沢な空間を生み出す手腕は,まさにPTAな . . . 本文を読む
ラインの押し上げ,中盤における複数選手による囲い込み,スペースへの走り込み。札幌がJ1残留のためにやらなければならないことを,すべて鳥栖にやられた。
札幌は小柏との絶妙のコンビネーションで挙げた興梠の先制点は見事だったものの,今季逆転勝ちのない鳥栖がビハインドにもめげず,決して焦らず,愚直に走り続け,セカンドボールを完全に掌中に収めた後半は,ほぼ一方的な鳥栖の試合だった。
今日の試合内容を見る限り . . . 本文を読む
MARVEL弱者の私にとっては,初見参となるルッソ兄弟のアクション作品。加入者数の減少が話題となっているNETFLIXが,過去最高額の制作費を注ぎ込んだ大作,ということが喧伝されているが,それなのにこのタイミングで「劇場先行公開」という手に出たのは何故なのか。これだけの派手なアクションであれば,是非とも大スクリーンで観たい,という声が上がったことは容易に想像できるが,劇場の興行収入がサブスク会費の . . . 本文を読む
まさかの展開だった。日本代表町野を擁し,阿部と中野を補強で獲得した湘南は,同勝ち点で並ぶ札幌とのホーム戦を,降格圏争いの重要な一戦と位置付けていたことは間違いなかった。簡単な試合になる訳がなかった一戦が,今季一番の大量得点ゲームとなった最大の原因は,何を措いてもまずは小柏の復帰だろう。
前半の早い時間帯に,右サイドのタッチライン沿いで粘ったルーカスのパスに反応して見事に抜け出した小柏が送ったクロ . . . 本文を読む
「メタモルフォーゼの縁側」
未読の人気コミックの映画化だが,老若芸達者の共演が実に楽しい。ゲイに対する知識をほとんど持たないように見える老婦人(宮本信子)が,表紙の美しさに惹かれて買い求めたボーイズ・ラヴのコミックを読み進め,巻末で主人公二人がキスをするコマを観て「あら!」と声を上げるシーンが作品のトーンを定める。続きが読みたくて再び訪れた書店のアルバイト店員うらら(芦田愛菜)と徐々に距離を縮めて . . . 本文を読む
「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」
スティーヴン・ジェイ・スナイダーが総編集にあたった「死ぬまでに観たい映画1001本」は,まだ観ていない,知らなかった映画のチェックにとても重宝している。私が持っている2004年版で気になっていた,エリア・カザンの妻(当時)が監督したという「WANDA」がとうとう日本公開されることになった今年,スナイダーの慧眼に匹敵する批評眼の持ち主マーク・カズンズ . . . 本文を読む
前半終了間際に左からのクロスを受けようとして侵入した興梠が上島に倒された場面で,主審は笛を吹かなかった。VARに問い合わせる素振りも見せなかった。結果的にはそれが全てだった。
5人で組む最終ラインを固めて,前線のプレスで札幌の攻撃を自由にさせない柏は,支配率やシュート数,パス数で圧倒されたように見えながら,その実ボールを持たせて,天皇杯から中2日というスケジュールを考慮した戦い方を選択した。終わ . . . 本文を読む
「ノルウェー人の女性」と言われて真っ先に思い出すのは,国連でSDGsの基礎となる報告書をまとめ,WHO事務局長も歴任したブルントラント首相。皆が皆,彼女のような傑出した人物であるとは限らないまでも,ヨアキム・トリアーの新作「わたしは最悪。」の主人公ユリアのように,自分の感情や思考の指し示すところへ自由に羽ばたいていく,というイメージは根強くある。何せ,元々は囚人に対する刑罰から始まったという説もあ . . . 本文を読む
リンダ・ロンシュタット。1970年代に青春を送った世代には、忘れることのできない名前だが、先日,マスコミに勤める20代の方に尋ねたところ「名前も曲も、一度も聞いたことがない」という返事が返ってきた。今ならさしずめ「テイラー・スイフト」的な存在と言っても過言ではないと思うのだが,無理もないだろう。本作を観て初めて知ったが、リンダはまさに人気がピークだった時に「大きすぎるギターの音が鳴り響く巨大なスタ . . . 本文を読む
フライヤーには「事件から60年が経つ現在も,香港やミャンマー,ウイグル地区など民衆弾圧事件は絶えない。この不穏な世界情勢と地続きにあり,決して遠い過去の話と言えない重いメッセージをはらんだ本作。ソ連解体から30年,まさに「今」観るべき作品が誕生した」とある。制作年が2020年である本作の日本での公開は,ロシアによるウクライナ侵攻後の4月(札幌は5月)。公開に向けた宣材の準備段階では,まさかロシアが . . . 本文を読む
攻撃型チームを標榜しながらも,FWの離脱が相次いだこともあって,さっぱり得点を奪えない代わりに,ボール支配率を上げることで何とかクリーンシートを続けてきた札幌だったが,「脱ジーコ」を掲げて首位を走る鹿島の勢いの前ではなすすべもなかった。試合終了後にミシャは「鈴木と上田がこちらにいたら,結果は違っていたかもしれない」というコメントを発したそうだが,指揮官のそんな試合分析が根本的に間違っていたことは, . . . 本文を読む
復帰したばかりの小柏を欠き,何処から見てもくさび役には不適当なガブリエル・シャビエルのトップという迫力を欠いた布陣で臨んだアウェー戦。しかし札幌とは10度は気温が違うであろうパナスタで,札幌イレブンは最後まで足を止めず,ゴールに迫り続けた。シャビエルのPK失敗や苦労人GK一森の素晴らしいセーブの連発という喝采もののプレーもあって得点には至らなかったが,ゲームとしては充分に満足できる内容だった。
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どう見ても一般受けするとは思えなかった怪獣映画によって,思いがけず世界中から喝采を受けることとなったメキシコの俊英ギジェルモ・デル=トロの新作。今回彼の元に集まった超豪華な俳優陣をサッカーチームに喩えると,ワントップがブラッドリー・クーパーで,ボランチはケイト・ブランシェット。シャドウ・ストライカーにルーニー・マーラを配して,CBはウィレム・デフォーにリチャード・ジェンキンス。更に両サイドバックは . . . 本文を読む
前作「ホーリー・モータース」の中盤で,物語を加速させたマーチングのシークエンスに手応えを感じたからなのかどうかは分からないが,レオス・カラックス10年振りの新作はなんとミュージカルだった。しかもまるでオペラのようなフレームを持ったファンタジーの中核を担ったのは,50年のキャリアを誇る兄弟グループのスパークス。彼らの音楽を聴く度に,残念ながら分裂してしまったKIRINJIが,もしも仲良くデュオを続け . . . 本文を読む