映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

噂の女  田中絹代

2009-05-09 07:32:48 | 映画(日本 昭和34年以前)
溝口健二が、京都島原遊郭のお茶屋を舞台に描く男と女の物語。
田中絹代と久我美子が同じ男性を好きになる設定。スタジオの撮影が中心で溝口健二がきっちり演技指導をしたというのがわかるしっかりとした劇仕立てである。

田中絹代は、京都島原にある大夫の置屋兼お茶屋の女将である。娘の久我美子は、東京の音楽大学に学んでいた。彼女はある男性との恋が実らずに自殺未遂をして、田中が京都へつれて帰ってきた。しかし、久我は御茶屋の仕事が気に入らない。毎日のように店で男たちが遊んで、それを女郎たちが接待する姿を見て、不快な顔をしている。田中は茶屋の組合の侍医をしている年下の医者に気があり、彼を開業させてあげたいと思っている。娘の久我は地元に知り合いがいないので、出入りしている医者と仲良くなるが。。。

田中絹代の演技は非常にすばらしい。このころのいくつかの作品と比べても、一番力が入っている気がする。溝口健二との名コンビで非常に冴えている。
久我美子は、もう少し年をとってからのテレビの母親役のイメージが強い。ここでは花魁たちの中に入っていかにもモダンな姿である。彼女は源氏時代からの華族の家系であのころの学習院を中退して女優になっただけに、気品を感じさせる洋装は他の俳優たちとは違う匂いを持っている。顔が他の俳優と比べて一回り小さいのも特徴
相手役の大谷友右衛門はそののち中村雀右衛門となり、文化勲章までとる歌舞伎界の大御所女役。育ちの良い彼の医者役は非常に合っている。医者にもタイプいろいろいるけれど、私が付き合っている若き30代の医者って彼のような顔をしている人が多い。

浪花千栄子は「祇園囃子」と比較するとおとなしい。女将役と女年寄役の違いか
進藤英太郎は御茶屋の大御所役、「祇園囃子」では貧相な役であったが、ここでは
貫禄を見せる。二人とも溝口作品に欠かせない人たちである。

思うにこの時代、まだまだ女性の地位が低く、なかなか普通の仕事にありつけない。男に頼って生きていくか、女を売って生きていくしかない。溝口健二はこのテーマが大好きなようである。現代劇と古典を題材にした時代劇を交互に演出しているが、個人的には現代劇の方が好きだ。

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