映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「オッペンハイマー」クリストファーノーラン&キリアン・マーフィー&ロバート・ダウニー・Jr

2024-04-01 17:06:52 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「オッペンハイマー」を映画館で見てきました。


映画「オッペンハイマー」は、本年度アカデミー賞作品賞に輝いた原子爆弾製造のリーダーを務めたロバートオッペンハイマー博士の物語である。クリストファーノーランがメガホンを取る。アメリカの公開からかなり遅れての日本公開である。下手すると同時公開がある位の時間的感覚なのに、今回は原子爆弾が題材になっているだけでせっかくの傑作をようやく見れた。3月は飲み会だらけで,映画をあまり見れなかった。本当の最終日にようやく観れた。

アカデミー賞受賞の主演男優賞のキリアン・マーフィー,助演男優賞ロバート・ダウニー・Jr、いずれもハイレベルの演技で当然の受賞であった。キリアンマーフィーは、特徴ある目の演技が素晴らしかった。オッペンハイマーと敵対するルイスストローズ役をロバート・ダウニー・Jrであると一瞬でわかる人は映画ファンでも少ないだろう。


3時間ずっと音楽がなり続ける。不穏な音楽だ。流れるムードは暗い。
原子爆弾がテーマではあるが、よくよく見ると,マッカーシズムの赤狩り摘発の映画と言ってもいい。東西冷戦に至る前、共産主義に強い対抗意識を持った戦後アメリカ史を理解しないで,この映画を理解できるのかなと言う感じもした。オッペンハイマーは、いらぬ疑いをもたれた被害者である。


原子爆弾製造の過程のプロセスと,原子爆弾の実験, 投下にもっとストーリーのウェイトがあると思っていた。オッペンハイマーがもともと共産主義者だったこと,組合結成に入れ込んでいたことなどを通じて左翼思想者だった事実が強調される。戦後ソ連が原子爆弾を開発する。それに対して,オッペンハイマーがソ連のスパイではないかと疑われた。そのための公聴会だ。映画を通して、その公聴会の映像が映る。周辺には確かにソ連のスパイが存在した。オッペンハイマーの妻は元共産党員であり,エロい場面もある浮気相手も共産党員だ。要はかなり前に共産主義者だった人まで摘発してしまおうとするマッカーシズムの怖さである。赤嫌いの自分が見てもやり過ぎだ。

いくつかの出来事が,時間差で映し出される。頭が混乱する観客も多いだろう。戦後の公聴会でのオッペンハイマーのパフォーマンスと, 1942年原爆製造の「マンハッタン計画」が始まってから原子爆弾完成までの映像が交差する。

コンピューターを作り上げ、原子爆弾製造にもにも関わった物理学者フォンノイマンの伝記を繰り返し読んでいたので,原爆投下までの流れは一応わかっているつもりだ。フォンノイマンはバリバリの赤嫌いだ。逆にオッペンハイマー共産主義に入れ上げていた過去がある。対照的なので、ファンノイマンの伝記ではオッペンハイマーの存在は英雄ではない。水爆の開発に関わった人たちに、オッペンハイマーに不利な証言をした連中がいたようだ。


原子爆弾の後に,より強い破壊力を持った水素爆弾製造に至るときに,オッペンハイマーが反対していた事は本を読んで知っていた。原子爆弾投下で一躍ヒーローとなったオッペンハイマーをトルーマン大統領がホワイトハウスに招いたときに、その発言に、あいつは二度と呼ぶなと言ったシーンもある。水爆製造反対だからといって,ソ連寄り、共産主義者とは違う。


この映画はオッペンハイマーの苦悩を示すものとなっていると想像はできた。確かに,原子爆弾が広島に投下された時、歓喜の声を上げるシーンはある。日本人はむかつくだろうと想像したわけだ。でも,原子爆弾投下完了の時点でも自分がリーダーとして爆弾を作ったのにオッペンハイマーは良心の呵責に悩まされている。それなのに、こんなに世論を気にして、この映画を公開させない日本映画興行界の知的レベルの低さを感じた。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする