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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

闇の列車光の旅 

2011-02-11 17:58:33 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
これはすごい傑作に出会ってしまった。
まだ2010年日本公開の主要作品全部見終わったわけではないが、自分がキネマ旬報の審査員であれば、たぶんこの作品を1位にしたと思う。

「闇の列車光の旅」は中米メキシコ、ホンジュラスを舞台に、アメリカへの移民となることを目指してまさしく「闇の列車」で移動する人たちの物語である。映画に例えるとブラジル映画の傑作「シティオブゴッド」をロードムービーにしたような基調に、アルドリッチの「北国の帝王」、ペキンパーの「ワイルドバンチ」のスパイスをかけたような雰囲気を持つすばらしい作品だ。
地球の裏側で100年近くタイムスリップしたような世界があることに驚かされる。



ホンジュラスで暮らす主人公の少女サイラの元に、別居していた父がアメリカから強制送還された。アメリカにいる家族と一緒に暮らすため、主人公の少女は、父と叔父と共にメキシコを経由してアメリカを目指す旅に出た。
メキシコのある町。主人公の青年カスペルは、ギャングの一員として堕落した生活を送っている。彼は美しい恋人と密会を重ねていた。それはリーダーには秘密だった。結局ばれて彼女にリーダーが言い寄り、犯そうとする。ところが抵抗したはずみに頭をぶつけて死んだのだ。主人公の青年は落胆するが、逆らえず黙って現実を受け入れる。
そのころ、少女たち3人は、アメリカ行き貨物列車の屋根に乗り込んだ。同じようにアメリカを目指す移民たちとともに列車が進んでいた時、ギャングのリーダーと主人公の青年とギャング仲間に入った12歳の少年の3人が、強盗目的で列車の屋根に上がってきた。3人は移民たちを脅し、なけなしの金品を容赦なく強奪。さらにギャングのリーダーは、少女に銃をつきつけて暴行を加えようとした。それを見た主人公の青年には、同じような経緯で命を落とした彼女の姿が浮かんだが。。。。



映画を見始めてすぐに画像に引き寄せられ、ずっと目が離せなくなった。
序盤戦からあっと言わせる。
いきなり少年のリンチのシーンが出てくる。1、2、3から13まで数えながら少年がリンチされ続ける。泣きべそをかく少年を見ながら、むごいなあと思ったら、ギャングの仲間に入るための儀式であった。そこで耐え忍んで初めて仲間に入れるということなのだ。少年も主人公の二人同様の重要人物だ。このシーンの直後にギャング団の映像が出てくる。近代的ギャングというより、強烈な刺青がアフリカの部族のようだ。
青年と少女全く別々に暮らしている二人の話を同時並行に交互に写していくので、最初はどっちがどっち?というように感じさせる。ストーリーというより中米で現実に起きているあっと言わせるようなシーンが続きどきどきする。映画「シティオブゴッド」を連想させるようなスラム街にたむろするチンピラ達の偶像と移民たちの悲惨な姿を見ていると画像から目を離せない。
そうしていくうちに列車の上で2つの物語を合体していく。そのあとは逃走劇的スリル感のあるシーンをつぎからつぎへと我々の前に見せてくれる。



ホンジュラスなんて国の存在まったく意識していなかった。調べると、世界でも有数の貧困国のようだ。家並みの映像が出てくる。映画「望郷」に出てくるカスバの街のようだ。そんなところを抜け出してアメリカに向かう移民はかなり多くいるのであろう。アメリカは日本と違い年間300万人ほど人口が増えている。不法移民を取り上げた映画は最近ずいぶんと多い。映画に映る光景を見ていると、日本でいえば戦中戦後通り越して、明治大正くらいにさかのぼるのではないか。ギャングたちのふるまいは「青春の門」の初期のころの映像や土佐を舞台にした任侠抗争の映画がちかいのかなあ?

ロードムービーはその映像の変化が楽しみである。列車の移動というのは不思議な気持ちを見ている我々に感じさせる。貨物列車の屋上を舞台にして移民たちを写す。列車から見る中米の田舎は美しいという風景ではない。むしろその強烈な貧しさを印象づける。カメラワークは巧みである。同時に日系の血も入っているフクナガ監督の手腕に脱帽である。

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