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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「国宝」 吉沢亮&横浜流星

2025-06-10 05:13:59 | 映画(自分好みベスト100)

映画「国宝」を映画館で観てきました。

映画「国宝」は任侠人の息子に生まれた男が歌舞伎の世界に入り、女形として身を立てようとする道筋を描いた吉田修一の原作を映画化。吉田修一は黒装束の裏方として歌舞伎界に3年身を置いていたようだ。名脚本家の奥寺佐渡子が脚色して監督は「悪人」李相日だ。相当な準備期間を経て製作された前評判の高い映画である。

とにかく豪華キャストだ。主演の吉沢亮のライバルになる師匠の息子が現在の大河ドラマの主役横浜流星で,国際派俳優の渡辺謙が師匠役だ。その妻を梨園出身の寺島しのぶが演じる。上映時間が約3時間と長いけど、作品の出来を期待して映画館に向かう。

長崎で任侠の頭である立花権五郎(永瀬正敏)の宴会に歌舞伎役者花井半二郎(渡辺謙)が訪れる。そこでは組長の息子立花喜久雄が女形の芸を披露していた。ところがその場に敵対する組が押し寄せ立花組長は殺される。

喜久雄は父の復讐に燃えていたが果たせず、上方歌舞伎の丹波屋・花井半二郎の元で預かってもらう。半二郎の息子俊介とともにで芸の稽古に励むことになる。稽古は厳しいながらも、半二郎から花井東一郎の名を与えられようやく重要な役を掴むようになる。

その後半ニ郎の負傷で図らずも十八番「曽根崎心中」の代役が回ってきた。当然、息子の俊介(横浜流星)が演じるべき話と誰もが思ったのに、半二郎が指名をしたのは喜久雄(吉沢亮)だった。そこで葛藤が生まれ俊介は喜久雄を追って長崎から移り住む春江(高畑充希)と一緒に暮らすようになり歌舞伎界を一旦離れる

すばらしい作品だ。当然のごとく日本映画の今年ナンバーワンになるであろう。

最初に長崎での襲撃場面で一気に観客の心をつかむ。その後も高いレベルで観る自分を刺激するシーンが続く。歌舞伎の舞台だけでなく、芸者のいるお座敷での和のショットもいい。撮影も適切なアングルだ。原作を読んでいないので、次の展開はどうなるんだろうと思わせて物語は進むので長時間でも飽きない

自分は歌舞伎には詳しくないが、各俳優が演じる歌舞伎のシーンは呆れるほどすばらしい。出演するたびに毎回強い存在感を示す田中泯(女形の小野川万菊)がここでも怪優ぶりを発揮した。

吉沢亮演じる外様の歌舞伎役者と血統を受け継ぐ横浜流星ライバル物語である。高校生の時、長崎から引き取られた喜久雄は稽古に精進して、師匠の息子俊介と肩を並べる。ともに成長していけばよいが、長期間にわたって交互に片方が浮上すると片方は低迷する。ある時期にそれぞれが歌舞伎界から遠のく状態になってしまうのだ。

ここで強調されるのが血統だ。周囲はもちろん花井半二郎の妻(寺島しのぶ)はずっと息子の俊介の活躍にこだわる。

⒈吉沢亮

この映画を観て吉沢亮は本当に運が良かったと思う。昨年末飲み過ぎでうっかりマンションの隣室に入ってしまうという問題を起こした。日本人特有の「過度な足の引っ張り症候群」にやられなかったのはラッキーだ。もし失脚したら、我々はこのすばらしい映画に巡り合うことができなかった。

代役が演技しているわけでなく、このレベルの歌舞伎の立ち回りができるようになるまでかなりの鍛錬が必要だったはずだ。お見事だ。横浜流星と組んだ「二人道成寺」に驚き、「曾根崎心中」では男役と女役の両方をこなす。特に最後の紙吹雪が舞い上がる中での場面には身震いした。3時間を長いと感じさせない。

⒉血統と歌舞伎界

歌舞伎役者の世襲が延々と続くのは仕方ないと思う。それこそ、小学校に入学する前から歌舞伎の道に入るための英才教育を受けている訳だ。タニマチ筋のようなスポンサーもいるだろう。梨園の世界はカネがかかるとその筋の方から聞いたこともある。後ろ盾がない普通の役者が追い抜いていくのは容易ではない。血筋と関係ない片岡愛之助超レアだ。

この映画では主人公の立花喜久雄が高校在学の頃から花井半二郎の門に入る設定だ。まだまだ成長期の頃に超一流の師匠から教えを受けるのなら現実的にはあり得る感じもする。師匠を通じての後ろ盾だってあるからだ。歌舞伎の興行を担う会社の社員(三浦貴大)から世襲でないのにうまくいくわけがないと言われケンカする場面がある。うーんと思いながら見ていたが、三浦友和と山口百恵のセガレがいう言葉なので妙な感じがした。

 

⒊歌舞伎

架空の歌舞伎の劇場として西の浪速座と京座、東の日乃本座の名前が使われていた。実際に撮影した歌舞伎劇場ってどこなんだろうと映画を観ながら思っていた。いわゆる東西の歌舞伎の殿堂である東京の歌舞伎座と京都の南座は使われたのかな?

情報によれば、どうやら南座は使われたようだ。満席のエキストラも南座が会場のようだ。ここが使えるかどうかで映画のクオリティは雲泥の差になる。びわ湖大津館の外観が東京歌舞伎座の雰囲気に近いため、映画の歌舞伎劇場「日乃本座」の外観として、また中村鴈治郎(智太郎)が出てくるロビー稽古のシーンで撮影に使用されたとのことだ。京都の撮影所では、歌舞伎特有の「せり」を再現するための大規模なセットも組まれたようだ。

吉沢亮や横浜流星が演じる以外は実際の歌舞伎役者が相当数出演しているようだし、中村鴈治郎も大物役者役で出演する。寺島しのぶはまさに人間国宝の尾上菊五郎の娘だ。歌舞伎界からは好感をもって受け入れられていると自分は理解する。

⒋女性陣と花柳界

女人禁制の歌舞伎役者の世界なので、あくまで女性は連れ合いだ。立花喜久雄(吉沢亮)には幼なじみで一緒に寄り添うと誓った春江(高畑充希)がいる。ともに背中に刺青をしている。ところが、祇園のお座敷でひいきになった芸妓の藤駒(見上愛)との間に女の子が生まれる。藤駒は結婚しなくていいと言い続ける。そのまま添い遂げるはずだった春江は俊介のもとへ行ってしまう。その後、喜久雄は大御所の歌舞伎役者の娘(森七菜)に惚れられてしまうのだ。

そんな感じで女性関係はゴチャゴチャだ。以前坂田藤十郎(今回出演した中村鴈治郎の父)が若い女性との逢引きアソコを露わにして写真雑誌にスクープされたことがあった。妻の扇千景は芸人だから仕方ないと開き直っていた。でも相当絞られたんだろうと仲間うちで苦笑したものだ。祇園は南座のそばだ。芸妓とその娘をクローズアップして花柳界の世界を垣間見せる場面もいくつかある。最後に向けて現代映画界の人気女優が娘だと名乗り出る。なかなかしびれるシーンだった。


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Unknown (Paseola)
2025-06-18 10:05:25
昨日、観てきました。こちらをお読みせずに…ww
強い力を放つ作品でした。観る側にも力が要ります。場面の切り替えが断続的かとやや感じられましたが、美しさと舞の仕上がりの見事さに集中します。吉沢亮が素晴らしい。横浜流星との演目も双美形wに魅せられます。私は時代考証がやや古い様に思いました‥地方色を表したかったのでしょうか。和装の着付けを絶賛する感想だけを聞いていたので楽しみにしたのですが、白半衿の出し方が一様でその人物なりの着こなしがある筈なのに…と感じました。フォーカス操作によって視点を移すのに慣れなくて。コマ落としを2ヵ所感じましたが無くて良い大作だと思って観ました。成人した綾乃とのシーンは最後あたりのセリフが無い方が良いのでは?と感じました。実母の源氏名を問うて、いきなり自分の名を呼ばれる名乗りは新しい…故に「ずっと応援してきた」的な台詞は蛇足に思えて…。門閥外の役者の胸の内や弛まない精進を思う作品でもありましたね。見応えある2時間55分でした。
…しばらくぶりです、お変わりございませんか。赤レンガ倉庫にはお出かけになりましたかしらと思っております。
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ありがとうございます (wangchai)
2025-06-18 21:00:03
>Paseola さんへ
>昨日、観てきました。こちらをお読みせずに…ww... への返信

先ほど気づきました。コメントありがとうございました。
時代考証が古いというのは序盤戦でしょうか?ヤクザ映画っぽいところは1964年とするともう少し前かもしれませんね。美術が「キルビル」の種田なのでこのシーン上手いなとは思っていました。場所柄多分降らない雪が象徴しています。

和装の着付けは知識がないのでわからないです。この辺りはpaseolaさんさすがですね。個人的にはカメラは上手かったかと思っています。

綾乃との出会いの場面は、最初は気づかなかったのです。すぐに瀧内公美とわかり思わず唸りました。確かにとってつけたみたいなシーンかもしれません。当代きっての人気女優をここで使うのはぜいたくでしょう。彼女は何でもこなしますね。すごいです。

赤レンガのお言葉に何かと知らずショックを受けました。実は週に1〜2回横浜に仕事で行っています。今日は時間に余裕がありものすごい近いところにいて、散歩で赤レンガ倉庫方面歩こうかと思っていていました。ところが30℃台の猛暑でランドマークの建物の中を歩きました。コメントを見てショックです。もっと早くblog確認すればよかった。まいったなあ。

またよろしくお願いします。夏すぎてgoo blogなくなるのが決まったのでどうしようかなと思案中です。
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