映画とライフデザイン

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映画「女ばかりの夜」原知佐子&田中絹代

2021-01-30 10:55:04 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「女ばかりの夜」は昭和36年(1961年)の東京映画(東宝)、名画座で観てきました。


原知佐子特集を渋谷の名画座でやっている。昨年亡くなったようだが、中年過ぎてからはTVドラマでの意地悪なババア役が多かった。特撮で有名な実相寺昭雄監督の奥さんとは当然知らなかった。この特集の中でも池部良と加賀まりこコンビの乾いた花はすでに観ている。原知佐子は池部良を服役中ずっと待っている情の厚い女を演じていた。「女ばかりの夜」田中絹代の数少ない監督作品で、今まで観たことはない。TV連続小説に作品を提供している田中澄代の脚本で、当時の東宝を代表する豪華キャストが揃っている中で原知佐子は主演を演じている。

昭和33年の赤線廃止の後も街娼で生計を立てる女はたくさんいたようだ。元赤線で働いていた女が堅気の職にありつけようとするが、なかなか上手くはいかないというのがこのストーリーの趣旨である。こういう映画化されるのも、同じような女たちがこの当時多かったということであろう。今のように独身女性が自立する時代と違って、結婚こそが幸せという時代なのに、年上の男たちの数多くが戦争で死んでしまい相手が少ない中、独り身でつらい思いをした女性は多かったに違いない。


元赤線などで働いていた女性が街娼にまわった時に摘発され収容される厚生施設の一つに白菊婦人寮がある。寮長の野上(淡島千景)や北村(沢村貞子)たち寮母たちと摘発された女性たちが更生をめざしていた。邦子(原知佐子)はその中の一人である。ある食料品店から住み込みの女性を求むという照会があり、邦子に白羽の矢がたち働くことになった。

食料品店の店主(桂小金治)と妻(中北千枝子)には2人の子どもがいて、一緒に住み込むなるが近所にある店の男たちが美貌の邦子をみて色めきだつ。寮長は更生した邦子の手紙がくると、周囲の寮生に見せつけ喜ぶ。しかし、元いた白菊婦人寮がどういうところかを近所の男たちが知るようになり、みんなの態度がかわってくる。それに嫌気をさして店主を誘惑したりして家庭をバラバラにした上で店を飛び出す。行くあてもなく、街をさまよう邦子は歩いている男を誘うと警察手帳を見せつけられ、捕らわれてしまうのであるが。。。

寮長に諭された後に工場の女工になったけど、やはり元赤線ということで差別を受けてやめてしまう。ここでは大丈夫かと平田昭彦と香川京子演じる夫婦が営むバラ園に行き、後の青春スター夏木陽介が演じる男に惚れられたりするが、昔の売春の元締めが訪ねてきたりまあ何をやっても上手くいかない。言いたいのは赤線や街娼に落ち込んだ女たちは堅気の世界に戻ろうとしてもそうは簡単にいかないということなんだろう。

この映画でのおばさまたちの話す言葉が昔のザアマス東京弁である。こういう言葉遣いの人減ったなあ。つい先日、昔の自分のお客様にちょっとしたお世話したらお礼をいただき連絡したら90歳過ぎても同じような正統派ザアマス東京弁だった。きっと抜けきれないのであろう。それも今の80代までであろう。「ございます」「~よ」など、美しい香川京子が話しているきれいな言葉も含めて、もしかして徐々に死語になりつつあるのかもしれない。


1.昭和40年代のTVドラマを彷彿させる出演者
この映画の昭和36年となると、さすがに小さすぎて記憶はない。でも、ここで出演している東宝の俳優たちはほとんどが自分が小学生時代のTVドラマで見かけた人ばかりである。寮長の淡島千景はどちらかというと、東宝の喜劇映画でおなじみという感じだが、寮の幹部の沢村貞子はよく見かけた。

彼女の小説「おていちゃん」は朝のTV小説にもなった。その昔は毎日のように沢村貞子の顔をTVで見かけたが、「犬神家の一族」が映画で超メジャーになる前に横溝正史の同じ小説を元にしたTVの火曜サスペンスドラマ「蒼いけものたち」で映画の高峰三枝子に対応する役柄を沢村貞子が演じていたのが個人的には極めて印象深い。そのときに沢村貞子の妹役を演じた千石規子がここでは元売春婦の寮生を演じている。死ぬまで活躍した脇役として欠かせない俳優で、「蒼いけものたち」で演じた宗教に狂う役柄がもう50年くらい前だけど頭にこびりついて離れない。


あとは浪花千栄子の怪演だ。これには驚いた。上方の俳優なので関西を舞台にした映画には溝口健二作品をはじめとして昭和20年代から目立った活躍をしているが、売春の元締めとかやりそうでも、元売春婦の59歳の女なんて役柄、良く引き受けたかと思う。

映画館でも彼女の奇怪な動きに観客がうなり、どよめいていた。それってすごくよくわかる。なんと今、朝のTV小説のモデルになっているんだって、これには本当ビックリ!東京人の自分にとっては、松竹新喜劇というより「オロナイン軟膏」のおばあちゃんのイメージが強すぎる。


2.原知佐子
性格の悪い近所のおばさんとか姑なんて役柄は絶妙のうまさだ。私生活ではどうだったのであろう。小林桂樹主演の名作「黒い画集 あるサラリーマンの証言」では小林桂樹の浮気相手という役柄だった。こうやってみると、当時25歳の原知佐子はきれいだ。略歴をみたら、この年で同志社大学を中退して映画界に入ったとのこと、この年代で4大卒の女性はおそらくは3%もいないと思うので、ある意味インテリだったのかな?


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