映画とライフデザイン

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映画「黒薔薇昇天」 谷ナオミ&岸田森&神代辰巳

2021-12-29 07:08:49 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「黒薔薇昇天」を映画館で観てきました。


黒薔薇昇天は1975年の日活ポルノ映画だ。数多く見た日活作品の中で自分には最も衝撃的な作品だった。18歳前だけど、リアル映画館で観ている。いい時代だった。神代辰巳監督にとっても最盛期といえる時期だ。谷ナオミといえば、団鬼六原作の、SM的縛りものがあまりにも有名だが、神代辰巳三部作ともいえるコミカルなタッチの日活ポルノ作品がある。

今回名画座の日活ポルノ特集では「悶絶どんでん返し」と「黒薔薇昇天」を観た。11PM関西版司会の藤本義一原作で、ブルーフィルム製作の男の物語だ。ブルーフィルムが題材の今村昌平監督「エロ事師たちとはちがう面白味がある傑作といえる。

感想を書こうと思ってなかなか筆が進まないときがある。それはつまらない映画の時ではない。衝撃をどう表現しようと思って筆が止まってしまうのだ。少年の時の衝動を思い浮かべ脳裏でようやく言葉がまとまってくる。

紀州和歌山の海辺のホテルでブルーフィルムの監督である十三(岸田森)は裸で戯れる男女を撮影している。ところが、演じている女優のメイ子(芹明香)が男優で亭主の子供ができたので、休ませてほしいと駄々をこねる。結局、やむなく撮影を中止せざるを得ないので大阪へ戻ることになる。

監督の十三はエロテープもつくっていた。犬猫の息遣い、歯科治療に苦しむ女性の悩ましい声等を寄せ集めて、生録りテープのように仕立ていた。いつものように仕掛けていた歯医者の診療所に置いたテープレコーダーを再生する。すると、歯科でよく出会う令夫人(谷ナオミ)が、診療台の上で歯医者からいたずらをされるよろめき声が聴こえる。これは何かあると、早速十三が調べあげると、女が財界の実力者の愛人幾代であることがわかる。


十三は実は探偵事務所の者だと偽って幾代に接近する。十三が執拗に幾代を追いかけると、徐々に気持ちがほだされてしまい、十三の仕事場に連れ込んでしまう。そして、ブルーフィルムを見せながら幾代に迫って身体をからませる。しかし、いつのまにか取り囲んだ映画スタッフたちが、撮影し始めるのに気づき幾代は激しく抵抗する。でも、もとに戻れない快感に狂う。こうして、幾代は十三のブログションに加わるのだったのであるが。。。

⒈谷ナオミと想い出
想い出深い女優である。中学生のとき、試験前などスッキリしない気分になると五反田のピンク映画館に行った。池上線の五反田駅を階下に下り、御殿山に向かって少し進んだところの奥にあった。道路を隔てて三井銀行の反対側である。好奇心で恐る恐る最初入ったが、超未成年にもかかわらず何も言われなかったのでずっと通った。

ピンク映画を観ていると、作品が替わってもいつも出てくる俳優が変わらないことに気付いた。男優では港雄二や久保新二、女優では珠瑠美、原悦子と谷ナオミが取っかえひっかえ出てくるのだ。その中でも谷ナオミの張りのある豊満な肉体に魅かれた。日活ポルノとはまた異なるアウトローな感覚に魅せられた。やがて、谷ナオミも日活作品に出演するようになる。その頃には日活の映画館が地元五反田からなくなっていたので、新宿まで観に行っていた。その頃観たのが「黒薔薇昇天」である。


当時20代半ばだったという谷ナオミの年齢が信じられないくらい年上の役柄が多かった。団鬼六作品で悶える姿が目に浮かぶ。

そんな谷ナオミが引退して熊本でクラブを経営していることを知った。ずっと気になっていたが、突如熊本出張があり大学の同期で地元の役人になっている友人に事前に声をかけていた。日本三大SOと言われているエリアには東京から一緒に行った同僚といきなりいった。そこで体力使った後、おいしい熊本名産物を食べて、同期と落ち合い谷ナオミのクラブへ行った。行く前から心は高揚感であふれていた。そこで実際にお会いした谷ナオミのやさしい笑顔はもう15年以上あれから経つが忘れられない。

話すだけで緊張した。そのむかしお世話になったんですよ。と話しかけると、やさしい笑顔でそうおっしゃる方っていらっしゃるんですよ。そう言っていた。一生の想い出である。

⒉岸田森
何せわれわれの世代にとっては、怪奇ものドラマと「傷だらけの天使」での萩原健一、水谷豊コンビを雇う探偵社で岸田今日子の下につく辰巳さん役である。自分には、中山麻理がストリッパー役をする回での裸を見るエロい目つきが脳裏から離れられない。「黒薔薇昇天」は、「傷だらけの天使」が終わってそんなに経っていない頃だ。

それにしても、ここでの谷ナオミとの絡みは絶妙である。当時映画を観ていて、本気でやっているんじゃないかと思った。大阪の海岸側に建つとおぼしき寂れた船宿での絡みではお互いに真剣度が増して、汗で身体が濡れているのがわかる。岸田森の髪が汗で濡れて薄いのが露呈する。何かいやらしい。迫力あるとしかいいようにない。


⒊神代辰巳
ここ数年神代辰巳作品が映画館で観られるとなると、ついつい仕事の合間を抜け出しても行ってしまう。今年は萩原健一の「恋文に行った。喜劇とまではいかないが、コミカルなタッチが強いのに気づく。以前、内田裕也特集を名画座でやっていた際にも、神代辰巳監督作品だけ観ている。常にロックンロールと言っているだけの内田裕也に笑いを誘う演技をさせる。撮影の姫田真左久との名コンビはいつも通りで、激しめの絡みの演出で臨場感あるカメラが冴えわたる。

日活での谷ナオミが出演する神代辰巳三部作は、かなりコミカルな要素をもつ。上流の貴婦人が罠にはまってSMの縄で苦痛と快楽に喘ぐというのがいつもの谷ナオミパターンなのにこのシリーズだけはちがう。谷ナオミに笑顔が見えることも多い。この映画を久々見て熊本のクラブで自分に振りまいてくれたあの笑顔が目に浮かんだ。

⒋紀州の海景色と70年代半ばの大阪
映画がはじまりすぐさまブルーフィルムを撮っているホテルの外にある景色に見覚えのあるのに気づく。和歌山市と南紀白浜の中間あたりにある白崎海岸だ。まるで北極に来たかとも思える石灰岩で真っ白な海岸線を平成のはじめに初めて見た時の感激は忘れない。地元の人でもこの辺りは行かないと思うし、関西の人でも知らない人の方が多いだろう。産湯海岸など近場の海の透明度は奇跡的だ。その海岸をロケ地に選ぶ神代辰巳のセンスがいい感じだ。


大阪に戻ると、ブルーフィルム撮影隊は街中に繰り出す。大阪難波の南海電車の駅のタクシー乗り場谷ナオミが彷徨うシーンでは心斎橋パルコ前でのシーンを含めて今から46年前、万博から5年しか経っていないミナミの雑踏が映る。


そして、圧巻なのは松坂屋の屋上の遊園地のゴンドラに乗って、谷ナオミと岸田森がエロいやりとりをするシーンだ。何と、ゴンドラには松坂屋の老舗看板マークが付いている。日活ポルノの撮影とわかっていたのであろうか?撮影の姫田真左久が別のゴンドラに乗ってアクロバット的な撮影をしている。1975年当時、大阪松坂屋は京阪電車の天満橋にあったようだ。こんなことって今では考えられない。

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