映画とライフデザイン

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映画「仁義の墓場」 深作欣二&渡哲也

2015-01-02 10:20:06 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「仁義の墓場」は深作欣二監督による1975年公開の実録バイオレンス映画である。
これは傑作だ。


昨年亡くなった菅原文太主演「仁義なき戦い」は戦後の日本映画史において重要な位置を占める。「仁義なき戦い」の持つスピード感はすばらしく、深作欣二監督が手持ちカメラ中心に撮る映像は敵味方入り乱れてすさまじい迫力を放っている。「仁義なき戦い」シリーズ全般にわたってハズレはないが、警察側の視点からみた深作作品県警対組織暴力も優れた作品だ。その「県警対組織暴力」の前に撮られたのが「仁義の墓場」である。

渡哲也が主演というと、テレビでの二枚目役のイメージが先行して、外してしまいがちだ。しかも笠原和夫の脚本ではない。それでご縁がなかったが、見てみてビックリ、これは凄い映画だ。深作欣二は実在した石川という狂犬のようなヤクザを戦後の闇市に放つ。自らの親分を刺したり、兄弟分を殺したり、同じ極道でも杯を分けた身内にここまでやるやつはそうはいない。その暴れん坊を深作欣二の指導のもと、渡哲也が絶妙の演技をみせ、思いっきり暴れまわる。最近のエリッククラプトンしか知らない人が、クリームを聴いてそのワイルドなギタープレイにおったまげるというような気分みたいな感覚をもつ。


昭和二十一年。終戦直後の新宿では、戦勝国という名のもとに第三国人たちが好き勝手し放題であった。テキ屋一家「河田組」の石川力夫(渡哲也)は連中がのさばるのを見過ごさず、痛い目にあわせていた。河田組は、河田修造(ハナ肇)を組長に、組長(安藤昇)が衆議院選挙に立候補をする最大勢力野津組に次ぐ勢力を誇っていた。


兄弟分の今井幸三郎(梅宮辰夫)、杉浦(郷治)、田村(山城新伍)らを伴った石川は、中野を拠点とする三国人の愚連隊「山東会」の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は置屋の若い娘、地恵子(多岐川由美)を衝動的に犯した。

この抗争によって双方摘発される。しかし巧みに警察を利用して自分らのみ釈放され、まんまと山東会を壊滅に追い込んだ彼らは中野今井組を興す。兇暴な石川に手を焼く河田は、縄張りを荒らす「池袋親和会」の青木政次を消すように示唆した。石川は青木の情婦夏子を強姦し、駈けつけた政の顔を叩きのめす。


報復のために、幹部の梶木(成田三樹夫)率いる兵隊が新宿に進出して来て、にらみ合いとなる。だがこの抗争は、野津組組長野津の発案によって、進駐軍に鎮圧するよう仕向けることで事なきを得た。
それから間もなく、兄弟分杉浦は野津の盃を受ける。一方、無鉄砲な石川は、賭場で悶着を起こし、野津から一喝される。


その腹いせに野津の自家用車に火をつけた。この一件で怒った河田は石川に猛烈な制裁を加えたが、逆上した石川は河田を刺してしまう。一時は今井の許に身を隠した石川だが、今では石川の女房になった地恵子が彼の身を案じ警察に報せたために、石川は逮捕され、一年八カ月の刑を受ける。

出所した石川は、河田組から関東の渡世の世界からの追放を意味する十年間の関東所払いになっているため今井に説得され大阪へ流れた。この地で肺を病んだ石川は、釜ヶ崎のドヤ街で娼婦からヘロインを覚え中毒となり、売人を襲撃しようとしたところでやはり中毒患者の小崎(田中邦衛)と出会い、意気投合する。


そして一年後。石川が小崎とともに無断で帰京し、今井組の賭場で騒動を起こす。だが、石川は兄弟分の今井からも説教されると、狂ったように石川は今井を刀で斬りつけ重傷を負わす。そしていったん逃走した後に今井を撃ち殺した。

アパートに潜伏していた石川と小崎を、警官隊と河田組員、今井組員が包囲する中、石川は無差別に発砲を繰り返す。追い詰められ石川は、弾も尽き自棄になって表へ飛び出したところを取り押さえられる。警察病院に収容された後、彼は殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。昭和二十六年一月二十九日、肺を病んだ体に鞭を打って保釈金を工面するなど石川を献身的に支え続けた地恵子は、心身を磨耗し尽くして自殺した。刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであったが。。。

映画がはじまってまもなく、「仁義なき戦い」ファンなら誰もが好きになるような、ハチャメチャな乱闘シーンが続く。
敵味方入り乱れて暴れまくるスピード感あふれるシーンだ。どっちがどっちだかよくわからない。
狭い場所での乱闘を的確に手持ちカメラがとらえる。すげえなあ!こんなの何回もできないよなあ。
すげえ衝撃を与えてくれる。

今までいじめられてきた腹いせに日本人から金をむしり取る第三国人を懲らしめてやろうとする姿には「もっとやっちまえ!!」と叫んでみたくなるが、この男普通じゃない。渡世の義理で生きようとする気持ちは持っているが、一度キレてしまったらまったく見境がつかない。敵味方が入り乱れる姿は「仁義なき戦い」でよく見る展開だが、狂犬のように親分や兄弟分に切りかかる姿ってそうはない。粗暴で凶悪な姿は「仁義なき戦い」第二作の千葉真一演じる大友勝利のようだ。



日活で活躍してきた渡哲也が、ポルノ路線に日活を飛び出し新天地を求めて東映に移ってきたころの作品だ。やる気も満々だ。
脇役もいい味出している。多岐川由美は可憐な印象、後年はいやな女が似合う顔立ちになったがこの映画ではかわいいなあ。東映ピンク映画の女王池玲子はヤクザの姐さんがよく似合う。。

まさに「本物」だった安藤昇が持つ貫禄、成田三樹夫の苦味つぶした表情、ヤク中常習者になりきった演技を見せる田中邦衛、裏芸をもつ親分という役がまさに適役のハナ肇、兄弟分梅宮辰夫、山城新伍を含めて最高のキャストである。

後半堕ちていく石川の姿はエレジーじみているが、さすが深作欣二といいたい傑作である。

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