映画とライフデザイン

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ショートカッツ ロバートアルトマン

2010-10-28 19:45:56 | 映画(洋画 99年以前)
「ショートカッツ」は94年制作のロバートアルトマン監督得意の群像劇である。3時間を超える長さに、小さなドラマがいくつも組み合わさる。8組の夫婦関係を軸として、20人を越える登場人物たちが巧みに組み合わされ、ひとつの世界になっている。ミステリーの要素があるこの前作「ザ・プレイヤー」と比較すると、より複雑な印象だ。完全なアルトマンの世界である。

個人的にはサスペンスの要素もあり「ザ・プレイヤー」の方が好きだが、村上春樹は「ショートカッツ」の方を推す。彼のエッセイ集「やがて哀しき外国語」の中で、底が深い映画と評価している。見終わって時間がたてばたつほど「面白かったな」と実感がじわじわ湧いてくると述べている。一部の欠点も指摘するが、エッセイの一コマをとって推奨する。

最初の30分は登場人物を次から次へと紹介する。アルトマンは巧みに出演者に職業を与える。
テレビのニュースキャスターとその夫人と子供、ホラー映画のメイクのプロ、チンドン屋のようにピエロに扮装する出張サービス、妻がテレホン・セックスのアルバイトをするプール掃除を仕事にしている男。浮気症な警官ティム・ロビンスの妻は画家の姉ジュリアン・ムーアのために裸になる。そしてジャズクラブの歌手は、チェロリストの娘を持つ。そんな彼らの普段の姿を自然な流れで特に解説もなく紹介する。
そのあとに事件が起きる。ファミレスとも言うべきダイナーで働く女性リリ・トムリンにはタクシー運転手の夫がいた。その彼女が運転する車が子供をはねてしまう。その子供はニュースキャスターの子供であった。はねた後運転する彼女は子供を自宅まで連れて行こうとするが、子供は普段から知らない人についていってはいけないと教育されていて、一人で帰る。しかし、ぐったりした子供を見て母親アンディ・マクドウェルが病院へと運ぶ。このあたりから、ストーリーらしいものが見えてくる。。。。。


これだけ出演者が多いと、メモが必要となりそうだが、ずっと見ていると何度も出てくるので、だんだん顔を覚えてきて慣れてくる。流れに身を任せた方がよさそうだ。出演者は関係ないようだが、お互いに少しづつ近づいてくる。
クラブでのアニー・ロスのジャジーな歌がこの映画のベースである。これが実にいい。その娘が弦楽のアンサンブルをやっていて、それが交互に演奏されるのもいい。普通にバックに流れる音楽も極めてセンスがあり、気分よく映像に見入ることができた。9つの短編の組み合わせとの話であるが、つなぎあわせの中断がまったく感じられない。


あまりに駄作でブログに出来ないと思った作品に「カミュなんて知らない」という日本映画があった。アルトマンの手法をまねているような匂いがしたが、まったく不自然だった。脚本、演技すべてにおいてつまらない映画であった。ビートルズの「アビーロード」のB面を想像するといい。まったく別々な歌が美しく編集されて流れるような一つの歌のようになっている。これと同じだ。

この映画の後につくられた名作「マグノリア」と根底に流れるムードが一緒である。あの映画でも、カエルが降ってくる「あっと驚く為五郎!!」のシーンがあった。ここでも最後少しいじくられる。
まあ楽しめたなあ。
アルトマン監督の長い歴史の中で自分のベスト1が「ザ・プレイヤー」2位が「ショートカッツ」3位「MASH」ということになるかな?

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