映画「光る川」を映画館で観てきました。
映画「光る川」は大河の上流に面する山村での古くからの伝承を基調にした物語。長良川スタンドバイミーの会が製作し、監督は金子雅和。岐阜県の山間部で撮影された。主演は華村あすかと葵揚で、脇役は安田顕や根岸季衣をはじめとして名優が揃う。物語は子役の目線で繰り広げられる。予告編で山間部を流れる川の清流や淵を映し出す映像がきれいだ。それだけで魅せられる。
1958年、山間の集落に暮らす幼い男の子ユウチャ(有山実俊)は、紙芝居で土地の言い伝えを見て関心を示す。
里の娘、お葉(華村あすか)と、漂泊の民、木地屋の青年、朔(葵揚)がお互いに惹かれあう。お葉の父親(安田顕)と木地屋の親分(渡辺哲)は2人が結びつくことに反対していたが、2人で村から離れようと約束していた。ところが、待合せに青年が来ないことに嘆いたお葉が身を淵に投げる。そのたたりで大きな洪水が起きるという伝承だ。
ユウチャは祖母(根岸季衣)に言い伝えの場所を地図で確認する。台風で降りしきる大雨の中、反対する父親(足立智充)に内緒で危険を顧みず川に沿ってさかのぼる。そしてお葉が身を投げたという「青い淵」に向かう。
緑あふれる山と美しい川の滝や淵に目を奪われる。
寺島しのぶ主演の「赤目四十八瀧心中未遂」という傑作がある。三重県にある赤目四十八瀧に映る瀧や淵の光景に似ているなとアナロジーを感じる。今回は岐阜県の山奥でロケをした。作品情報にロケマップがある。金子雅和監督はかなりロケハンをしたらしい。風景だけを見せる映画でないけど、水辺のショットや滝や淵の映像は抜群に良い。
悲哀物語で、里の者と木地屋が一緒になるのは御法度とのセリフがある。2人が何で付き合ってはいけないの?意味がよくわからない。木地屋とは山を徘徊する木工職人で流れ者だ。青年はまだまだ修行の身で親方から我々から離れても良いが、その前に手を切り落とすとまで言われている。青年は約束を破って娘と一緒に暮らすのを断念する。失意の娘は「青い淵」で身を投げる。そんな昔話と1958年に暮らす少年をつなげるのだ。
そんな伝承が気になって仕方ない少年ユウチャが、家の外で嵐の気配が出てきた後で1人大雨の中現地に向かうのだ。普通だったら、祖母も行かせないだろう。それがこの映画の見どころなので仕方ない。少年が鍾乳洞にも潜りこむ冒険物語がしばらくすると、娘と青年が現れてファンタジーの世界にも繋がってくる。
傑作とまではならない。山間部の神秘的な雰囲気に少しだけ浸る気持ちがもてれば良いのでは。