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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

王手  赤井英和

2010-08-26 17:07:56 | 映画(日本 1989年以降)
赤井英和が大阪通天閣の新世界エリアで賭け将棋の真剣士に扮する91年の作品である。荒戸源次郎が制作にあたっている。いかにもディープなエリアの中で、こってりした大阪弁でのやり取りはいかにも大阪らしくて好感が持てる。20年くらい前の猥雑な大阪にタイムスリップした気分を味わせてくれる。



大阪の将棋真剣師の赤井英和と、プロの名人を目指して奨励会に通う加藤雅也は二人は将棋が取り持つ親友だった。赤井は新世界の将棋道場の顔役だが、生活が荒れて借金取りに追われてあたふたしている。ひょんなことでタクシーの運ちゃんと縁ができ、彼の故郷の日本海の町に出向いた。そこで赤井はストリッパーと出会い、想いを果たす。その翌日プロとの交流戦で赤井はその勢いに乗ってプロ棋士に勝ってしまい有頂天だ。そんな折り、伝説の老真剣師若山富三郎が現れ、対局でコテンパンにやられるが。。。。



平成3年はちょうど自分も大阪にいたころである。天王寺から駅一つの所に住んでいた。このロケ地もさほど遠くない。東京から初めて大阪に行くと聞かされたときはショックだった。でもバブルの絶頂の大阪は何かと楽しかった。勤務地は難波だった。
大阪着任してすぐ、地元の人間に通天閣へ行ってみたいんだけどというと、やめておいた方がいいよと言われた。あのあたりは大阪でも有名な危険地域だとね。それゆえか新世界エリアにはあまり近寄らなかった。

そういうディープな場所で、そこを地元とする赤井英和が主演だからいいテンポで話が進む。大阪というのは赤井英和のようなタイプの男は多い。気性がワイルドだ。今回地でいっているので彼もやりやすかっただろう。今よりもやせている。かっこいい。

あとは若山富三郎だ。伝説の真剣士ということでプロとの交流戦で勝つ赤井を赤子を手でひねるように退ける。ふるまいはさすがに貫禄がある。出演した大阪ロケの「ブラックレイン」から数年たったばかりだ。「ブラックレイン」の直後、松田優作が亡くなった。この映画のあと若山富三郎が亡くなっている。ネタばれになるので言えないが、この映画で何かを案じさせるようなセリフを通天閣の上で言っている。不思議だ。
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裸の十九歳  新藤兼人

2010-08-26 07:48:01 | 映画(日本 昭和35年~49年)
「裸の十九歳」は連続殺人で死刑となった永山則夫をモデルに新藤兼人監督がメガホンをとった70年の作品だ。主演はさきごろ参議院選挙に出馬して話題になった原田大二郎で、新藤監督の長年にわたるパートナー乙羽信子が母親役を演じる。主人公の境遇があまりにも悲惨でやるせない気持ちにさせる映画だ。学生運動全盛時代の40年代半ばの世相が手に取るようにわかる映像が貴重である。観て損のない映画である。

道夫こと主人公原田大二郎は中卒の集団就職の一人として青森県から上野駅に着いた。そして渋谷のフルーツパーラーに就職した。寮に住み込み生活を始めた。
しかし、一緒に就職した仲間が徐々に去り、やがて道夫も辞めてしまう。辞める時外国に行くとはったりを言った手前、横浜港の貨物船で密航を企てた道夫は捕まった。保護観察処分がでて長兄の家に引き取られた。しかし、長兄の嫁が自分のことでの愚痴を言うのを聞き、道夫は長兄の狭いアパートを飛び出す。
その後、大阪の大きな会社に再就職すると上京した母親に嘘を言い、大阪へ向かい職を探す。大阪で住み込みで働き始めたが、すぐやめて再び東京へ舞い戻り、いくつもの職を転々とした。そして自衛隊の募集に応募するが不合格となり、徐々に精神がすさんできていたが。。。。

このあと犯罪のルーツを探る意味合いもあり、青森県で魚の行商をしている母乙羽信子の幼いころからの軌跡を描いていきながら、映画は進んでいく。

主人公やその母親はこれほどまでにドツボな素性もないだろうと思わせるほどかわいそうな人生を歩んできたようだ。父親がばくち好きで金がないのに子供8人つくってしまうというのが今の世相からすると奇妙だがそれは事実だ。実際そういう家庭が多かったと聞く。
先日母親が1,3歳の子供を残したまま餓死させてしまう信じられないような悲劇があった。でも彼も同じようなことを経験させらている。
昭和40年代前半はまだ集団就職という制度は残っていた。いわゆる安い労働力は金の卵と言われたものだった。自分の実家にも中卒で地方からくる従業員が40年代前半まではきていた。でもいずれの実家もここまでの悲劇はなかった。

この映画では当時全盛だった学生運動のリアルな活動場面での撮影や、上野駅に向かう集団就職の中卒者、不良がたむろう深夜喫茶、ゴーゴークラブなど、ひと時代前の日本の姿がリアルに描かれている。
主人公が最初に勤めた先が渋谷の西村フルーツパーラーだ。ここでは当然名前を変えているが、この画像はおそらく西村のフルーツパーラーでロケしたのではないかな?昔からずっとある渋谷の店が少なくなる中、相変わらず頑張っているようだ。

演技者としては新藤のパートナー乙羽信子が汚れたシーンも嫌がらずに体当たりしている。こういったところは新藤監督はかなり強引だ。昭和45年当時といえば、乙羽はテレビのホームドラマの常連で、いつもやさしい母親役を演じていた記憶がある。元宝塚スターの彼女にここまで汚れた役を演じさせるとは観ていてかわいそうになってくる。でもこの役者魂はすごい。
不慮の事故で亡くなった太地喜和子も娼婦役で出演する。人気が出てくる前だと思うが、彼女の役もこの映画の中では重要な位置を占める。

この映画では主人公の描写だけでなく、性の問題が一つのキーポイントになっている。上の二人をはじめとして、かなり多数の女性を汚れた世界に陥らせる。田舎社会での性、都会生活での性、今とは違う何かがあるのを感じさせてくれた。
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