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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「私の男」 二階堂ふみ

2014-06-18 16:55:06 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「私の男」は待ちに待った二階堂ふみ主演作品。早速映画館で見てきました。
二階堂ふみにとっては「ほとりの朔子」に続く主演作品。今回は桜庭一樹の直木賞作品を映画化した。流氷をバックにした北海道の冬景色のもとで、禁断の恋に落ちていく2人の姿を描く。原作の時系列を逆転した脚本、北海道の流氷を美しく映しだした撮影、ジーンと心に響く音楽、二階堂ふみと浅野忠信の演技いずれも高い水準の映画である。ネタばれありで語りたい。

ここでは二階堂ふみが七変化を見せる。
北海道の田舎で、どんくさい高校生を演じていたと思いきや、浅野忠信と強烈な濡れ場を演じる。東京に移った後、派遣の受付役で化粧をした顔は美形だ。高級レストランで父親と面と向き合い、足で挑発する色っぽい姿も印象に残る。
ヒミズ」、「脳男と一作ごとに凄味が増している。

あと素晴らしいのがジム・オルークの音楽である。映画全般にどんよりしたムードが走る中、静かに流れる音楽が映像にぴったりとなじんでいる。「春を背負って」で池辺の音楽が全く合っていないのと好対照である。

北海道に大地震が起き、奥尻島の島一帯が津波にさらわれた。その時10歳の女の子花が家族と離ればなれになり1人取り残される。その花を遠い親戚で1人暮らしている淳悟(浅野忠信)が引き取る。

数年後海上保安庁に勤める淳悟と高校生になった花(二階堂ふみ)の2人は紋別の町でひっそりと暮らしていた。淳悟には小町(河井青葉)という銀行に勤める美しい恋人がいた。小町は淳悟に別の女の気配を感じるが、それが一緒に暮らす花のことと気づく。高校生の花と淳悟がただならぬ関係になっていたのだ。

遠縁にあたる大塩(藤竜也)は花が引き取られるときから面倒を見てきた。2人の間によからぬ気配を感じて、花を親戚の所へ預けようと企んだ。それを拒否する花は大塩を流氷の海に誘い出す。大塩がのった氷は流され凍死してしまう。
やがて2人は東京に向かう。淳悟はタクシーの運転手をしながら、高校生の花と暮らしている。そこに北海道から刑事(モロ師岡)が訪ねてくるのであるが。。。

印象に残るシーンが数多い。ここでは3つ取り上げる。ネタばれ要注意

1.流氷の海を追いかける藤竜也と二階堂ふみ
海上保安庁の巡視船にのっている淳悟は10日程度遠出している。そのときに藤竜也演じる大塩が、2人のよからぬ関係を知りしつこく花に親戚の家へ移れと迫る。いやがる花は流氷の海に逃げる。ひたすら花はつらなる流氷の間を走り抜けていく。大塩が追い続ける。
やがて、大塩がうっかり離れた流氷の上にのってしまう。そのまま氷はオホーツクの沖合へ流されていく。
助けてくれと叫ぶ大塩
大塩は凍死した。淳伍と花は葬儀に出席するが、その後この町を離れる。
こんな流氷の冬景色をバックに撮った映画ってあるだろうか?藤竜也が氷に取り残されたシーンは、実際に彼をどうやって助けたのかな?とこっちまで心配になる。

先週の週刊文春に二階堂ふみと阿川佐和子の対談記事があった。
そこに藤竜也の二階堂評が掲載されていた。引用する。
「ああ、あの子はいいでしょう。顔だけで気持ちを自在に表現できる女優です。」と嬉しそうにきっぱりと絶賛されていました。

この緊迫感のあるシーンで2人の連帯感は高まっただろう。
藤竜也は「スープオペラ」以来だ。「時間ですよ」で影のある男を演じた時からの彼のファンで、パリで「愛のコリーダ」を見て彼のチ○こも見ている。日活の残党でいまだ頑張る藤竜也にはエールを送りたい。

2.抱き合う浅野忠信と二階堂ふみ
淳悟がしばらく遠出するのを寂しく思った花が抱いてくれと誘う。2人は濃厚に抱き合う。二階堂はブラジャー姿になる。胸は大きい。ぞくぞくするシーンだ。
やがて上から赤い液体が2人の身体に落ちてくる。これは血を意味するのか?幻惑させられるシーンになってくる。まるで、現実ではないように映し出される。その2人を窓の外から覗く男がいる。大塩老人(藤竜也)だ。赤に染まった2人の身体を映す映像が、普通の映像に代わる。

これはかなり過激だ。でも二階堂はバストをさらけ出さない。
まだまだ若い。いずれ気前よく見せてくる日を楽しみに待つしかない。


3.追ってきた刑事と浅野忠信の格闘
東京(川崎?)に移り住んだ淳悟のもとを刑事が訪れる。玄関に出た淳悟は刑事を中に上げる。刑事は花のものと思しきメガネを差し出す。淳伍は殴る。そして作りかけの味噌汁を刑事に浴びせる。包丁をもって刑事を切りつけ、血が吹き出し刑事が死ぬ。この格闘は緊迫感がある。
夕方になり、学校から帰った花が見つけ2人は唖然とたたずむ。

でも1つ突っ込みたい。
この死体どうしたんだろう。この処置については最後まで語られないままに映画が終わっている。
あえてそうしたのであろうか?
普通であれば、刑事が遠方まで出張するときは、警察に出張届を出してくるはずだ。しかも、当然どこへ行くかを知らせるだろう。刑事が戻ってこなければ、当然警察はそのことを調べるはずである。そのあと、時間が少し飛ぶが、2人は何もなかったかのように暮らしている。ちょっとこれ自体は不自然に感じる。


4.浅野忠信
二階堂のことばかり話しているが、浅野忠信も寡黙にもかかわらず、非常にいい演技をしている。「ヴィヨンの妻」のだらしない作家役がうまかったが、それと同じように堕落した男の役をやらされると天下一品なのかもしれない。

今回は浅野忠信がかなりねっとりしたラブシーンを河井青葉と演じている。このシーンってこんなに長くやる必要あるのかな?という素朴な疑問があるけど、美人が脱ぐのを見るのは悪くない。でも不思議だなあ。河井青葉は正統派美形だけど、二階堂ふみがいると彼女の方がよく見えてしまうんだよね。「ほとりの朔子でも鶴田真由と杉野希妃の共演した2人の美人よりよく見えた。不思議だ。

5.二階堂ふみ
週刊文春のインタビュー記事によると
流氷の中に入る撮影をなんと4回もやったそうだ。服の下にセミドライスーツを着ていたけれど、水が入ってしまうので、人は寒さで死ぬんだなってことがわかったという。手先に今までない痛みが走ったようだ。
これは大変だ。でも二階堂ふみのプロ意識には本当に感心する。

次の作品が楽しみである。
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映画「四十九日のレシピ」永作博美&二階堂ふみ

2014-05-31 05:59:08 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「四十九日のレシピ」は昨年2013年公開のドラマ
ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督がメガホンを取り、永作博美、石橋蓮司の芸達者が主役を演じる。二人ともうまい。あとのキャスティングも絶妙で、二階堂ふみ、淡路恵子、原田はイメージぴったり。日系ブラジル人役の岡田将生君はご愛嬌

こういうテイスト大好きだなあ。タナダユキ監督は間合いの取り方がうまい。
それなので映画全体に流れるテンポは急ぎすぎない。落ち着いて映画を見ていられる。
途中むかつく発言にむっとするときもあったが、川沿いに建つ家のそばでのどかに流れるムードがいいので十分カバー。
ロケハンティングにも成功しているし、撮影の巧みさも随所に光っている。
いい映画だ。

妻・乙美が突然亡くなり熱田良平(石橋蓮司)は独り残される。家の中で抜け殻のようになり部屋に横たわっていた。そこへ派手な服装に身を包んだ女の子井本通称イモ(二階堂ふみ)が訪ねてくる。彼女は依存症の少女たちの更生施設「リボンハウス」でボランティアをしていた乙美の元生徒だった。ズカズカと上がり込むと、乙美が生前に作っていた「暮らしのレシピ」カードを取り出す。“これ、やろう!”と良平に告げる。開いたそのページには、“四十九日のレシピ”の文字が。乙美から、自分が死んだら父娘を手伝って、みんなが楽しく飲み食いする“四十九日の大宴会”をしてほしいと頼まれていた。


一方、東京へ嫁いだ娘の百合子(永作博美)は不妊治療を受けていて、義母の面倒を献身的に見ていた。それなのに夫浩之(原田泰造)の浮気相手に子供ができたことがわかる。印鑑を押した離婚届と結婚指輪を残して、東京の自宅を出て実家に戻る。
恐る恐る家に入ろうとすると、父・良平とイモがお風呂で一緒にいる様子を見て面くらう。


百合子は、離婚を考えていると父に打ち明ける。叔母(淡路恵子)も家にもどれと諭すが、彼女はそのまま居残る。
イモとともに訪れた朝市で、良平は浩之の好物イワナを見つける。それを届けようとするが、勤め先の前で愛人とその子と一緒にいる浩之の姿を目の当たりにして、声をかけずに戻っていった。百合子は義母とヘルパーとの関係がうまくいっていないことを聞き、いったん東京に帰ろうとするが、父にそれは向こうの家に任せろという話になった。
「やるぞ、四十九日の大宴会!」
百合子と自分自身を励ますように宣言する良平。


イモは、助っ人に日系ブラジル人のハル(岡田将生)を連れてくる。乙美がパートをしていた自動車工場で働いていた青年だ。こうして、乙美のレシピ通りに家を整理して準備を始めた。百合子は乙美の“人生の年表”を作って貼り出すことを提案する。年表は空白だらけで「子供のいない母親」は寂しいものだと百合子は感じるのであるが。。。。

小説の映画化である。すでにテレビ化もされているが、この映画は題名からして縁のないものと思っていた。
ところが、見始めると独特のムードが妙に心地よい。


1.家庭内の諸問題
不妊の妻の心理とうるさい外野(小姑)、浮気相手の懐妊と別れられない男、後妻と子供の関係などここで取り上げられている
家族内の問題は多い。それを表現するのに絶妙な脚本が用意してある。


2.二階堂ふみ
ここでも一番の存在感を見せる。最初おかしな格好の女の子が出てきたなあと思ったら声で二階堂ふみとわかる。それからの縦横無尽の活躍はいつもどおりだ。大学進学おめでとう!進学先知り今まで以上に応援する気になった。学校ちゃんと行ってよ


3.永作博美
子供のいない母親の悩みを表情でうまくみせる。実生活では高齢出産で2人の子持ちになったようだ。でも今まで第三者から子供のことでプレッシャーになる発言を受けたことはあるんじゃないかな?実感がこもっている印象を受ける。
離婚のつもりで家を出ているのに、義母のことが気になっている。裏切られた夫の母親にもう一度会おうとするだろうか?そこはどうかなという感じ


4.四十九日の大宴会
この設定いいよね。準備をする時点から、家族と手伝う2人に連帯感が生まれる。
何かが欠けていた家族なのに、共同作業をしようとするパワーが生まれる。バルコニーのペンキ塗りのシーンは見ていていい感じだ。途中紆余屈折を経て当日になり年表が埋まっていくシーンは胸にジーンとくる。

5.淡路恵子
残念ながら遺作となった。この意地悪ばあさん役は淡路恵子にしかできないなあ。
石橋蓮司の姉という設定である。いつまでたっても姉に頭が上がらないオヤジっているよね。
その微妙な関係を絶妙な2人の間合いでこなす。
不妊のめいに対して、気を使っているとは言うけど普通ではいわないような言葉をどんどん使う。
顔も嫌味たっぷりだ。テレビその他で見る彼女のプロフィルからしてこの役はまさに適役である。
最後のダンスには少々びっくり、唖然とした石橋蓮司の顔つきを思い出すと吹き出してしまう。

最後に味のある演技を見せてくれて、本当に良かったと思う。

ラストについては異論もあると思う。自分も少々疑問
それでもこの映画ゆったりとしたムードが自分にはあっている。
タナダユキ監督の次作に期待する。

(参考作品)

四十九日のレシピ
やるぞ、四十九日の大宴会!


ふがいない僕は空を見た
コスプレ主婦と少年の恋
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映画「白ゆき姫殺人事件」 井上真央

2014-04-02 14:51:02 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「白ゆき姫殺人事件」を映画館で見てきました。
湊かなえの原作ということで関心を持ち、ツイッターでニセ情報が蔓延するという現在でありがちな状況が描かれているということで映画館に向かいました。全般的にまとまっている印象を受けた。主人公を演じる井上真央は着々と大女優への道を歩んでいる気がする。

国定公園・しぐれ谷で誰もが認める美人OLが惨殺された。全身をめった刺しにされ、その後火をつけられた不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。彼女の名前は城野美姫(井上真央)。同期入社した被害者の三木典子(菜々緒)とは対照的に地味で特徴のないOLだ。

テレビ局でワイドショーを制作する赤星雄治(綾野剛)は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追いかける。取材を通じてさまざまな噂を語り始める、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々。「城野さんは典子さんに付き合っていた人を取られた……押さえていたものが爆発したんだと思う、あの事件の夜」「小学生の頃、よく呪いの儀式をやってたって。被害者の殺され方が呪いの儀式と同じでしょう?」「犯人です、間違いありません!」。テレビ報道は過熱し、ネットは炎上。噂が噂を呼び、口コミの恐怖は広がっていく。果たして城野美姫は残忍な魔女なのか? それとも──。(作品情報より引用)

黒澤明監督作品「羅生門」は1つの事実に対して当事者3人が証言するという形をとる。しかし、立場の違う3人はまったく違う話をする。どれが本当かわからない。全部違うかもしれない。少し違うがあの映画のことを思い出した。

テレビ製作会社の契約社員である赤星がネタを探していたところに旧知の被害者の同僚である一人の女性から連絡が入る。殺害されたあと、城野という女性が行方不明になっている。きっと彼女が犯人ではないかと同僚がテレビディレクターに告白するところからスタートする。テレビディレクターは絶好のネタとばかりに次から次へと取材を重ねる。しかも彼はツイッター好きで常に事件に関する情報をつぶやいている。冤罪をつくるのは、犯人確保で点数をあげたい警察だけかと思っていたけど、マスコミとネットのガセネタがきっかけということもあるかもしれない。
最初はそれぞれのインタビューを映し出す。同僚が5人でてくる。
美人OLが主人公が好きだった上司を奪ってしまった事実、最近被害者の高級ペンが盗難に遭っていることや事件の日主人公美姫が最寄駅に向かって走っている姿が目撃される話が出てくる。そのあとで学生時代の同級生がそんなことするわけないよというが、小中学校時代イジメを受けていた彼女は放火事件にも絡んでいるし、恨みを持って犯行に及ぶ可能性があると示唆する。その間、再現フィルムには登場するが、主人公は出てこない。1時間以上この状態が続いた後で初めて井上真央の登場である。それまで行方不明なのでいったいどうなったんだろうかと思っていた。
こういうじれったさがいい。

他の誰かが犯人である可能性は一切言わず、彼女が犯人である可能性が強いことをこれでもかと言い続ける。
そして彼女の独白が進む。。。

原作未読了の自分からすると、どういう展開になるの?という感じだったが、ちょっとあっさりかな?という印象だ。でも現代を象徴する話で楽しめた。

この映画を見ていくつかのことを連想した。
まずは袴田事件である。なんと50年近く服役していた死刑囚である被疑者が先日釈放された。地裁の発表を聞くと、いかにも警察による捏造という気がする。驚いたのはその後である。なんと一家殺人で一人だけ別の場所に住んでいて難を逃れた長女が被疑者釈放直後に亡くなっているのである。事件後彼女が現場で証言をしていると聞く。警察は事件性はないと言っているが、本当?警察は病院に搬送していないという。これってなんか変だよね。この映画の展開に似ていると思ったのは自分だけではないだろう。今回の裁判長は自分の地元中学、高校の先輩でこれまでも東京地裁で有名事件を裁いてきた。地検は不満を表明したというが、裁判長の決定を応援したい。

もう一つはS細胞の問題だ。最初細胞の存在が発表がされた時は、これでもかというくらいK嬢はもてはやされた。ところが、あっという間の転落である。ネット上、マスコミの彼女に対する仕打ちは痛々しいくらいだ。しかも、以前提出した論文その他も徹底的に調べられたたかれている。本当に怖い。弁護士をたてて反論しようとしているというが、やっぱり目立つのってよくないことなのね。つくづく思う。
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映画「地獄でなぜ悪い」 二階堂ふみ

2014-03-24 20:30:32 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「地獄でなぜ悪い」は2013年公開の園子温監督の作品
タイミング合わず、公開時点では見に行けなかったのでDVD化を楽しみに待っていた作品。
常に衝撃的な新作を生みだしてきた監督だけにハズレはないとは思っていたが、この作品はちょっと好き嫌いが分かれそう。自分は普通かな
何と言っても二階堂ふみちゃんがきれいだ。

ヤクザの組長・武藤(國村隼)は獄中にいる妻・しずえ(友近)の夢を叶えるために、本業そっちのけで娘・ミツコ(二階堂ふみ)を主演にした映画の製作を画策している。面会の度にしずえに対して、撮影は順調に進んでいると場を取り繕う武藤。しかし、肝心のミツコは男と逃亡中、そして、しずえの出所まではあと9日しかない。

金に糸目をつけず、片っ端から撮影機材のレンタルをしながら、なんとか娘の身柄を確保した武藤は、ミツコから(実はすべて嘘なのだが)映画監督と紹介された駆け落ち男・公次(星野源)を監督に抜擢し、本格的に撮影準備を始める。映画監督として騙しながら映画を撮影しないと殺される公次は、右も左もわからぬまま、オールヤクザのスタッフの質問攻めに対応していくが、限界に達しその場を逃げ出してしまう。簡単に追っ手の組員に捕まってしまう公次であったが、そこに奇跡のような助っ人が現れる。

それは「いつか一世一代の映画を撮りたい」と、少年期から映画監督を夢見る平田(長谷川博己)であった。映画の神様は自分を見捨てていなかったと、満を持して撮影内容の段取りを始める平田は、武藤と敵対するヤクザ組織の組長であり、過去の衝撃的な出会いからミツコに異様な愛情を抱く池上(堤真一)に協力を要請する。かくして、ホンモノのヤクザ抗争を舞台にした、スタッフ・キャストすべて命懸けの映画が、電光石火のごとくクランクインしようとしていた・・・。(作品情報より引用)

園子温監督作品にしてはわいせつ度は低い。
「恋の罪」あたりで見せた神楽坂恵のスーパーボディが見れないのが少しさびしい。その分暴力シーンに当てられる。固有名詞にこだわり、最初に出てくる交番の名前が「広能」で、警察署が「深作署」となっていかにも「仁義なき戦い」へのオマージュと思わせる。
でもどちらかといえば、「キルビル」などのタランティーノの匂いだ。腕や首がボンボン飛ぶのもそのテイストだ。国村はキルビルと全く同じ展開となる。
いきなり映画好きの高校生たちが映し出される。その仲間たちが不良少年のケンカを映し出すところからスタートだ。なんか訳がわからないやつらだ。その後でCM出演の少女が血だらけの床をすべってヤクザの堤真一と渡りあうシーンとヤクザの妻友近が刀を振りまわすシーンが続く。「何?このシーン」と思いながら訳のわからない題材を少しづつ接近させていこうとする。
洗練されてはいないが、役者の動きはいずれも悪くない。


「映画の中の映画」の手法が使われる。デイヴィッド・リンチ作品だと現実と虚実が交錯するパターンだが、この映画ではそうは見せない。そして最後に逆転する。このオチのつくり方は上手かもしれない。
コメデイと思ってみた方がよさそうだ。「家政婦のミタ」の主人役だった長谷川博己の振る舞いがおかしくてたまらない。

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映画「小さいおうち」 山田洋次

2014-02-12 21:39:46 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「小さいおうち」を映画館で見た。
後味がよかった映画を見た。山田洋次監督作品は欠かさず見ている。
(ちなみに自分の高校の大先輩:最近母校が甲子園に出ることになって周辺は大騒ぎ)

中島京子の直木賞小説を原作にした家族を描くのがうまい山田洋次監督らしい作品だ。(原作は未読)前作「東京家族」が小津安二郎のオマージュを意識しすぎて不自然に自分は感じた。それに比較するとずっと良くなっている。クレジットの主役は格で松たか子であるが、今回は黒木華が純朴な家政婦を好演した。これはうまい。

物語は現代ではじまる。大学生の健史(妻夫木聡)の大伯母タキ(倍賞千恵子)が亡くなった。健史はときどきタキの家に遊びに行き話し相手になっていた。タキは生涯独身だったが、その身の上をノートに綴っておくように健史が勧めていた。

昭和10年、純真な18の娘布宮タキ(黒木華)が雪深い山形から上京してきた。最初は文京区の作家(橋爪)の家で女中奉公したが、すぐに東京雪が谷の住宅地に建つモダンな赤い三角屋根の家に移り、女中として住み込み奉公を始める。家の主人で玩具会社の常務である平井雅樹(片岡孝太郎)、その妻・時子(松たか子)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を過ごしていた。息子の杏一が高熱を出して小児麻痺になる恐れがあった。名医がいる日本橋までタキが連れていって病状が好転したことで家族の信頼も得られていた。

ある日、雅樹は部下の板倉正治(吉岡秀隆)という青年を連れてきた。弘前出身の美大出で他の若い社員とは若干違っていた。時子とは気が合い、下宿も近いので何度も家に遊びに来るようになった。時子も心が板倉へと傾いていく。そんな時、板倉にお見合い話が出てくる。若者が次から次へと出征する中、丙種合格の板倉は適齢期の娘を抱えた親からは貴重な存在と思われていたのだ。夫からこういうのは女性がやった方がいいとお見合いをまとめるように指示を受けるが、時子の気持ちは複雑だった。それでも彼女は板倉の下宿に出向いて、説得にあたろうとするのであるが。。。



松たか子はどちらかというと現代的なお嬢さん顔をしている。一方で「ヴィヨンの妻」でも好演したように戦前の若奥さんを演じても不自然さを感じない。梨園の家庭に育ったせいか、着物もよく似合う。今回は不倫の香りをちらつかせるが、露骨でない。彼女にしては普通の演技といった印象だ。



今回は黒木華がまさに適役である。現代的女性を演じた「舟を編む」とは正反対だ。ウブな家政婦という設定がピッタリの演技で、決して出しゃばらない。その彼女も同じ東北出身という同郷のよしみで、はっきりと言葉にはしないが、板倉に好感を密かに持っている。そこが後半ポイントになってくる。山田監督もぐさっと脚本のセリフでだすわけではない。でも観客にそれとなく感じさせる。この柔らかさがいい。

最初吉岡秀隆が出てきたときに、松たか子が夫の部下にしては「素敵な人」という表現をする。さすがにこれには違和感を感じるが、津軽生まれの美大出身の男という設定からは決して外していない気が徐々にしてくる。「三丁目の夕日」の売れない小説家に通じるキャラクターで演じる。これはこれでいいのではないか。どちらかというと、最初の松たか子のセリフを外せば何も問題なかったのかもしれない。山田洋次作品なので、身近に接触しても露骨に2人が交わるシーンはない。あくまでも想像に任せる。この感覚は昭和30年代の映画のスタイルだ。おそらく別の監督がつくったら違うつくり方をしたかもしれないが、自分はこの映画のスタイルが好きだ。

今回の出演者は前作「東京家族」とかなりダブる。橋爪功、吉行和子夫妻役に加えて小林稔持や三平のせがれ、中島朋子、妻夫木聡と新しい山田組が勢ぞろい。それに加えて約50年の付き合いと言える倍賞千恵子とその息子役だった吉岡秀隆を起用する。使いやすい俳優をベースにした方が監督からするとやりやすいだろう。倍賞千恵子は年とったなあ。意外にもいい味を出していたのはラサール石井だ。もともと松竹では喜劇中心だった山田洋次監督はこういう役者の使い方はうまい。

大きな問題なく心地良く映画が見れたが、ちょっと違うなあ?と思ったのが昭和10年代前半の厨房だ。これって完全な現代のシステムキッチンだ。昭和30年代を映したとしてもここまでは進化していない。あとは概ね大丈夫だけど、ちょっと時代考証おかしいかなあ?あとは妻夫木のトンチンカンな時代考証のセリフはわざとやっている印象を持ったが、それでも最後にかけての手紙のやり取りはちょっと違うかなといった印象を持つ。
時子が手紙を出す住所を見ると、雪が谷の自宅から上池台の下宿に出している。電車は池上線だ。以前「おとうと」でも石川台付近を舞台にしていた。今回最寄駅は石川台と長原と考えるべきだろう。原作を読んでいないのでピントはずれかもしれないが、このエリアって山田洋次監督に何か縁があるのであろうか?

快適な2時間半だった。
この映画をみると、とんかつが食べたくなる。見終わってから大盛りのキャベツと厚切りのロースを食べた。
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映画「ほとりの朔子」 二階堂ふみ

2014-01-21 22:31:16 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「ほとりの朔子」を映画館で見た。
単館での公開なので渋谷に向かった。映画評論家筋の評判もよく入りはいい。意外にもおじさんたちが目立つ。

二階堂ふみの主演映画が公開になるのはうれしい。「ヒミズ」「脳男」はいずれも自分に鮮烈なインパクトを残し、好きになった。主演となった彼女の演技力を期待して鑑賞した。

大学受験に失敗した朔子(二階堂ふみ)は現在一浪中だ。
8月下旬、朔子は叔母・海希江(鶴田真由)に誘われ海辺の家で、夏の終わりの2週間を過ごすことになった。ヨーロッパ旅行で留守にするもう1人の伯母・水帆(渡辺真起子)の家に向った。叔母海希江は以前この地に住んでいて、旧友が何人もいた。叔母と朔子は血のつながりがない関係である。

朔子は叔母の古い知り合いである亀田兎吉(古舘寛治)や大学生の娘辰子(杉野希妃)、そして甥の孝史(太賀)と知り合う。亀田はラブホテルまがいのビジネスホテルの支配人をしており、高校不登校の甥はそこでバイトしていた。大学生の娘辰子は海の家でバイトしていたが、父親とは仲がよくなかった。亀田を介して知り合った朔子と孝史は同世代で意気投合して親しくなった。久々にこの町に来た海希江、亀田、辰子、後から海希江を追いかけてきた西田(大竹直)たちは、微妙にもつれた人間模様を繰り広げる。朔子は孝史をランチに誘う。しかし食事をしようとした矢先に、彼に急接近する同級生・知佳(小篠恵奈)から連絡が入るが。。。

主題のポスターになっている二階堂ふみが川のほとりに足を差し込む映像は確かに美しい。ただ、芸術的ともいえる映像はそれだけで、ごく自然に田舎の海辺の町にとけこむ二階堂ふみの姿を映し出していく。一生懸命勉強してきたのに本命の大学にも滑り止めの大学にも全部落ちてしまった理系の浪人生である。一度だけ叔母に勉強しなさいよと言われるが、勉強内容に関する会話はほとんどない。本当は勉強しなければならないのに、初めての町で、関係が複雑な大人たちと触れ合い、大人の恋の匂いに微妙に揺らぐ心の動きを表情で示している。役者歴を重ねてうまくなっているのがよくわかる。
今回の二階堂ふみは今までに増してナチュラルな演技である。年齢も設定の役とは差がないこともあって、高校生役の大賀との会話も極めて自然に流れる。日常に通じる匂いを醸し出しているのでいい感じだ。

ウディアレンが得意な「2人が歩くのをカメラを引きながら映し出すドリーショット」がいい。「ヒミズ」では主人公を熱狂的に崇拝する高校生、「脳男」は狂気的な犯罪を犯す少女を演じた。いずれもいいが、ここで見せた二階堂ふみの演技は本来の彼女を感じさせるようで好感が持てる。しかも、この映画の避暑地ファッションはなかなかいいセンスをしている。
共演する鶴田真由と杉野希妃の2人は、いずれも典型的美人である。でも、普通の男性であれば二階堂ふみにより魅力を感じるのではないだろうか?


亀田の甥で、彼のホテルでバイトをしている孝史(太賀)が割といい味出している。昔から青春映画のヒロインには相手役が付き物で染谷将太といいコンビと思っていたが、大賀とのコンビも悪くない。「桐島。。」「さんかく」など自分が見てきた映画にも出てきたようだが、あまり記憶はない。割と出演作も多いせいか、ナチュラルな二階堂の演技にすんなり合わせられる技量もあるようだ。俳優中野英雄の息子だが、オヤジには似ていない。これから伸びていく俳優だと感じる。

ここでの彼の役柄は福島原発事故のため、この海辺の町に避難している設定だ。高校を転校したが、セシウムで身体が汚染されているとバカにされ不登校になっている。いじめの場面あるけど、こんなこと言う高校生がいるかどうかは少々疑問?朔子と2人で浜を歩いているときに出会った同級生の知佳(小篠恵奈)から、一緒に話したいと言われる。この後の展開がおもしろい。
朔子と一緒に食事している時に、知佳から彼の元に電話が入る。困ったなあ!と一瞬うろたえる表情を見せる孝史だが、朔子は「ここに呼んだら」と言う。すぐさま折り返し電話をして知佳を呼び出す。
「すぐ来るよ」と孝史が言うと、朔子は「じゃ2人で楽しんでね」と食事が来る前に帰る。

一連のシーンに「うーん」と自分はうなった。
浜を歩いている朔子と孝史の姿を見て、同級生の知佳が孝史の携帯を聞いてくる。その直前には孝史をバカにする高校生の男の子と一緒に歩いていたのだ。人のものが欲しくなる人間心理かな?という気がした。別の女性と歩いてみるのを見るとその男が欲しくなるような女の子っているかもしれない。急にその男がよく見えてくるのである。
デート中に電話がかかってきても無視するのが当然だろう。でも、孝史は携帯を机の上においている。電話に出て、しかも一緒にいる朔子の気持ちなんて全く考えない。その行為自体いくらなんでもないよという感じもするが、高校生の男ではそこまで考えないのかもしれない。朔子は気を利かせたお姉さんのような顔をして店を去る。この展開もめずらしい。だいたいこのパターンは高校生の恋愛映画だったら、泣きが入るパターンがほとんどだ。朔子はがっかりするが、失意泰然といった顔をする。脚本のリズムがいい。このあたりで見せる二階堂の表情がなかなかリアルだ。

いきなりプロデューサー杉野希妃という名が冒頭のクレジットに出てくる。その後で出演者としてもクレジットが。。なるほどこの美人女子大生なのね。(調べると後輩のようだ。ずいぶん年下の役やるねえ。こういうタイプのすげえ美人って学部には昔からいたなあ。)学校でて随分と変わった履歴の方だ。キムギドクの作品に彼女が出ていたのはよく覚えている。ロッテルダム国際映画祭の審査員になるというのはすごいなあ。

西田(大竹直)は人気の大学教授で、女子大生辰子が通っている大学に出張講座に来た。妻もいるのに叔母の海希江と逢引きしようという下心で来たみたいだ。でも接近してきた辰子と帰り道に西田の車で同乗する。その後は。。。。こういうさばけた子もいるとは思うけど?!

映画を通じて見せ場は数多くあるが、「脳男」のようにエキセントリックな刺激はまったくない。ずば抜けて強い印象を与えるシーンもない。でもおもしろい要素はたくさんある。
兎吉のホテルに時折売春で訪れるオヤジの振る舞いと彼が来たときにする音楽セッティングの話、原発集会に予期せぬ形で呼ばれてしまったときの、主催者側の期待とは違う話をする孝史の振る舞い、ヤル気満々で来た大学教授が肩透かしをくって、2人での逢引きができず、みんなで会うことになってしまい教授がすねるシーン(このときの大学教授の気持ちって男としてよくわかるなあ:こんな場面何回か自分も経験している、同じようにむかついたなあ)などなど。。
刺激的な台詞があるわけではないが、日常の延長のようでいい感じだ。飲み会のシーンでは本当に飲んでいるんじゃないか?と思わせる雰囲気を感じる。そういうナチュラルな感じがいい。
1つだけ難点を言うと、英語の字幕だ。役者が話すセリフとイメージがどうしても違って読める。これって付けておく必要あるのかしら?

(参考作品)
ほとりの朔子
浪人生のひと夏


私の男
二階堂ふみの真骨頂
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映画「かぐや姫の物語」

2013-11-27 10:16:42 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「かぐや姫の物語」を劇場で見た。

ネット上の玄人筋の評判は悪くない。日経新聞も★5つ、「うーん何か違うのかなあ?」と思い劇場に出かけた。日本人として生まれた子どもなら誰でも、かぐや姫の物語の概要は知っているはずだ。自分もアニメなのか?絵本なのか?はたまた幼稚園でやったのか?どこで習ったかは記憶に定かにないが、概要はわかる。ただ、本物の「竹取物語」は現代語訳も含めて読んだことはない。こうやって映画を見てみると、幼少時に聞いた話が思ったよりもしっくり来る。
アニメ画像はスケッチのようなタッチだ。ラインと輪郭がきっちりされているわけでない。特に生まれた田園地帯の画像によく出ている。予告で見たときにちょっと違うアニメだなあと思った。

むかしむかしのこと。竹取の翁は、竹林の中で光るタケノコを見つける。その中には小さな人形のような女の子がいた。竹取の翁はおばあさんと2人で暮らしていた。2人には子供がいなかったので、持ち帰るとおばあさんはものすごく喜んだ。手に取ると生まれたばかりの赤ちゃんになっていた。ふと気がつくと、ハイハイするようになり、あっという間に立って歩くようになる。一瞬にして成長してしまうのである。

「タケノコ」の愛称で捨丸という少年をリーダーにした近所の子供たちにかわいがられて、一緒に遊ぶようになっていた。最初はあっという間に成長するので、奇異に見られていたが、田園地帯のエリアで虫や動物たちと楽しく遊んでいた。一方翁は竹林で同じように光る竹を見つける。そこには大量の金が含まれていた。これは天からの授かりものと確信して、都で屋敷を購入して、3人で移り住むことにした。少女はいやがったが、いやいや付いていった。

都では立派なお屋敷に住むことになった。そこでは宮中の元女官を教育係にして、上流の習い事を学んだ。瞬く間に琴を習得し、教育係を驚かせる。美しい姫君となっていく彼女は「かぐや姫」と名づけられる。琴の美しい調べは屋敷の外の人たちをも魅了して、絶世の美女ということで都の評判となる。そのうわさは公家の高官にも広がっていった。我先に自分のものにしようとする中納言や右大臣たち5人が駆けつけてきた。かぐや姫はその高官たちの申し出に対して、条件をつけてきたのであったが。。。

自分として印象に残る映像を2つあげる。まずはかぐや姫の子供の頃の画像だ。赤ちゃんとして生を得て、おばあさんから乳をもらう。そして畳の上で縁側に向ってすっ飛んでハイハイして転落する。その部分がかわいい。気がつくと立っているのだ。この映画では赤ちゃんや幼児の画像がむちゃくちゃかわいい。現在と違って着物も着ないで裸同然で、「金太郎」のようである。小さい子がお守りにおんぶする映像も目立つ。子供が多かった昭和20年代から30年代の日本、特に田舎ではよく見る光景だった。今はほとんど見なくなった。

次は都に出た後、かぐや姫の成人を祝って三日三晩通して、かぐや姫の屋敷で宴が営まれる。盛大な宴だ。ところが、かぐや姫は姿を見せない。酔った男たちがかぐや姫を見たいと駄々をこねる。危険を感じた翁は制止しようとするが、うまくいかない。その後である。突如としてかぐや姫がかやの中から飛び出して、猛スピードで町の中を駆け抜けていく。凄い血相だ。そして住んでいた田園地帯に戻ろうとするのだ。この画像には少々驚かされる。画像のタッチが変わる。若干怖い世界に入り込むようだ。

その他も天からのお迎えのシーンなど気になる画像はいくつもあった。声優のできはよかったのではないかな?特に朝倉あきのかぐや姫の声がいい。古臭くなく、妙に現代ぽくなく好感が持てた。宮本信子もベテランらしく絶妙なテンポで演じていた。故地井武男はテレビの「ちい散歩」が好きだったので懐かしくなった。10年以上前だけど銀座「やす幸」のカウンターで地井さんが奥田瑛二と永島瑛子の3人で飲んでいるのに出くわしたのを急に思い出した。

あえて言えば一つだけ気になったのが、最終場面で捨丸のそばに突然現れて、一緒にどこかに行ってしまおうというシーンだ。その寸前に捨丸は自分の妻と妻に抱っこされているまだ幼児と思しき子供といる。それなのに2人で。。。というのが妙に不自然に感じさせられた。妻と子供と仲良くしているのに一瞬にして我を失って、かぐや姫と一緒になろうとする場面がどうもしっくりこない。浮気映画を見るのに常に嫌悪感を感じるわけではないが、この映画では、赤ちゃんや幼児の画像が妙にかわいいので、むしろこのときばかりはしっくりこなかったのかもしれない。

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映画「ルームメイト」 北川景子&深田恭子

2013-11-13 18:09:49 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「ルームメイト」を劇場で見た。
これはなかなか面白い。退屈せずに最後まで見れた。
原作は未読、これは読まない方が楽しめるかも?

いきなり殺人事件の現場が映る。事件後その現場を通りすがる女性がいる。途中で二重人格の女性による凶悪な事件という印象を与える。「私という他人」のような展開かな?ところが、そうは簡単には謎解きさせないところがミソ。読みが浅かった。いくつかの伏線を映像に残しながら、ラストに向かう。おっとこう来るか!観客を騙そうとする努力を買う。ミステリとしては上質

派遣社員として働いている23歳の萩尾春海(北川景子)は、ある日交通事故に遭ってしまう。命に別状はなかったものの頭を強く打ち、片足を骨折、しばらく入院することになった。そんな春海を気遣い優しく支えてくれたのは、看護師の西村麗子(深田恭子)だった。
患者と看護師として病院で初めて会った2人だったが、なぜか互いに親近感を覚え意気投合する。春海の退院をきっかけに麗子はルームシェアを提案し、一緒に暮らしはじめる。また、面倒見のいい麗子は春海に代わって事故を起こした加害者の工藤謙介(高良健吾)と彼の友人で保険会社の長谷川伸一(尾上寛之)との交渉も引き受ける。

そんな優しい麗子に春海はすっかり心を許すのだった。2人の共同生活は順調にみえた。麗子の奇妙な言動を目にしてしまうまでは。一人きりなのに誰かと会話をしている麗子、会話の途中でいきなり口調が変わってしまう麗子。

そんな麗子の変化に対する春海の戸惑いは、次第に恐怖へと変わる。ひとつ、またひとつ、春海の周囲で不可解な事件が起きはじめるが。。。(作品情報より)

二人の美人女優の共演でなんか面白そうなミステリーのようだ。
見てみたらなかなかいけている。ヒッチコックの映画を連想するホラーといってもいい。何度も劇場でハッとさせられた。彼の映画では「北北西に進路をとれ」のマイクロフィルムなど「マクガフィン」と言うべき、小道具が使われていた。ここでも「黄色いノート」がある。それだけでなく、赤のドレスがキーになる。それによって観客を煙に巻く。自分もだまされた。

まずは深田恭子の悪女ぶりがいい。二重人格の女性を見事に演じる。怪演というべきであろう。いつもの可憐な姿だけではないのに魅かれる。こういう役を演じることで彼女が演じる役柄に幅が広がる。

北川景子もいい。こういう若手美人女優がミステリーで共演するのは珍しい。他に有名俳優が出ているわけではないから、割と低予算だったのではなかろうか?それでも映像処理の巧みさとプロットの展開のアヤでハラハラドキドキ感を十分堪能できた。
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映画「夏の終り」 満島ひかり

2013-09-13 21:56:34 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「夏の終り」を劇場で見た。

自分が少年のころ、実家に日本文学全集があった。分厚い全集本の一部に瀬戸内晴美さんの小説があり、この作品が含まれていた。最初は女流作家の本には目もくれなかったのであるが、高校生になり一度読んでみた。激しい恋の物語で理解するには若すぎた。
その後大人になりもう一度読んでみた。そのころにはもう彼女は得度していた。
2度目に読むきっかけは、日本経済新聞連載の「私の履歴書」に彼女が自分の過去を描いた文を読み、恋愛描写の激しさに圧倒されたからである。正直驚いた。激しい恋を重ねた結果に生まれた結果にできた私小説が「夏の終り」かと思うとドッキリした。
その後も彼女自身のことでなくモデルがいる作品である「いよよ華やぐ」が描く性の世界に呆然とさせられた。

ものすごくいい映画とは思わない。瀬戸内晴美作品がもつ強い性の匂いが薄く感じるからだ。でも、満島ひかりは好演、小林薫も彼にしか出せない味のある演技を見せている。時代考証には少し難ありと思えるがそれなりに楽しめた。

昭和30年代?が舞台だ。
染色家の相澤知子(満島ひかり)は、作家の小杉慎吾(小林薫)と暮している。慎吾には妻がいて、週の半分ずつ、知子の家と自宅を行ったり来たりしていた。その年の暮れ、知子が出先から帰ると、慎吾が「木下君が訪ねてきたよ」と言う。

木下涼太(綾野剛)は、知子が結婚していた12年前に出会って、駆け落ちした相手だった。その恋はうまく行かずに別れたのだが。大晦日、風邪をひいて寝込んでいる知子を置いて、6日に来ると言い、慎吾は自宅に帰る。寂しさに引かれて、涼太から電話がかかってきたとき、知子は「会いに来て」と言う。こうして、知子は、慎吾と暮らしながら、涼太とも関係を続けるのであるが。。。

2つの時代を交差している。
駅の映画看板で時代を示唆している。高峰秀子主演「カルメン故郷に帰る」は昭和26年3月公開だ。ジョンフォード監督の名作「わが谷は緑なりき」は本来太平洋戦争が始まる1941年の映画であるが、日本公開は昭和25年12月である。そう考えると昭和26年春が描かれていると想像できる。これは回想場面だ。8年ほどつきあっているというセリフからすると、この映画の主ストーリーは昭和34年前後と考えていい。
この映画のロケハンティングはうまい。セットもあるとは思うけど、まさにその時代の家を探しだして撮ったシーンがあり、よく見つけたと感心した。でも、昭和26年に描かれるオート三輪はちょっと時代が違うような気がするし、涼太のアパートの窓がサッシになっているのはありえない設定だ。昭和34年にバニーのお姉さんがナイトクラブにいたのかな?という疑問もある。和装の女性も多すぎるのではないか?若い監督がメガホン取るとよくある誤りだ。
まあ、そこまでムキになることもないだろうが。

夫や子供までも捨ててまで、一人の男に走る心理やどっちつかずに彷徨う女性心理はどうも個人的には苦手だ。そういう彷徨う女性を満島ひかりは頑張って演じていると思う。でももっと乱れさせても良かったのではないだろうか?
「さよなら渓谷」では真木よう子が一皮むけた演技をしていい出来だった。彼女の演じた愛欲あふれる女性と通じるものをこの映画の主人公は持っている気がする。他の俳優でなく満島を起用するなら若さにまかせてもっとむちゃくちゃにした方がいい。そうしたら彼女は一皮むけたのではないだろうか。



それでも、主人公が「愛より習慣の方が強い」と言っていた言葉が胸に残る。恋のはじめに思いっきり接触してそれが習慣のようになってしまえば、その恋はドロドロに離れられないものになっていく。言葉の表現がよくないかもしれないが、ヤクザが「いやがる素人の女性」を毎日のように狂ったように性の餌食にし、それを習慣のようにして、離れられなくさせてしまうようなものだ。キムギドクの「悪い男」のように。。
満島ひかりの言葉が頭から離れない。
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映画「初恋」 宮崎あおい

2013-08-28 06:51:19 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「初恋」は2006年の三億円事件犯人がテーマになる映画作品だ。
犯人をなんと宮崎あおいが演じる。

1968年の三億円強奪事件は未解決事件として、長らくマスコミの話題になった。いろんな推理がされたが、結局は時効を迎える。真犯人に関する説は数多くあったが、この映画化はそれらとは全く違う犯人像である。60年代後半の学園紛争時代の世相を巧みに描きながら事件と結び付ける。
宮崎あおいの好演に魅かれる。

1966年の東京を映す。
高校生のみすず(宮崎あおい)は、親と別れ親族に預けられていた。学校の同級生とはなじめない。家に帰っても引き取られた叔母家族ともなじんでいない。みすずの母親は幼い頃、兄を連れていなくなったきりだった。
ある日、みすずは新宿の繁華街にあるジャズ喫茶Bに足を踏み入れた。数日前、母が家を出てから会うことのなかった兄が突然現われ、手渡したマッチがこの店のものだったのだ。暗闇にジャズが店中に響き渡り、音楽に酔いしれる客がいる。フロアの奥に常連の兄の仲間がいた。そこには、女にもてて人望も厚い兄の亮(宮崎将)、亮を慕うアングラ劇団の看板女優ユカ、作家志望で積極的にデモに参加している浪人生のタケシ、ケンカっぱやい肉体派のテツ、お調子者でムードメイカーのヤス。そして、他とは違う雰囲気でひとりランボーの詩集を読む東大生の岸(小出恵介)がいた。みすずは彼らの仲間に加わり、少しずつ生活が変化してゆく。Bで過ごす時間が多くなり、いつの間にかみすずにとって、Bはかけがえのない場所になりつつあった。
ある日、岸はみすずに驚くべき計画を持ちかける。現金輸送車の強奪計画だった。みすずは驚いたが、岸の役に立ちたい一心で、この壮大な計画にのめりこむが。。。


当時の新宿のジャズ喫茶の風景が懐かしい。今ではずいぶんと減った。
自分が中学に上がったのは70年代前半だ。最初ビートルズから入って、当時ニューロックと呼ばれた世界にはまった。ヒットチャートマニアでもあった。ニューロックの中にはシカゴやブラッドスウェット&ティアーズがあり、その延長でジャズを聴くようになった。最初は何が何だかわからなかったが、次第にはまっていった。中学3年になり、高校受験の講習会で渋谷に行くようになったころ、おそるおそる1人で新宿のジャズ喫茶を覗くようになっていた。この映画では描かれているような若者たちが大勢いた。
自分は学園紛争時代の少し後の世代である。他大学に行くと、プラカードの前で演説する闘士たちを見たものだが、母校にはそういう奴らをバカにするムードがあった。実際にまわりにもいなかった。ああいう人間のクズたちと別の世界にいれてよかったと思う。ここではそういう60年代後半の若者をクローズアップする。この映画でジャズ喫茶でたむろった仲間たちが、新宿の騒乱で機動隊にボコボコに殴られる場面を見てバカな奴らだなあと笑ってしまった。
そういう場に高校生ながら「自分の居場所」を見つけた一人の少女の物語だ。

三億円事件が起きたのは年末だった。子供心ながら当時は大騒ぎだったと記憶している。自分が通う小学校でも話題が集中していた。でもこの時、自分の家では家長である祖父のがんが発覚したところであった。それどころではなかった。結局祖父は翌年4月に亡くなる。そのため、この事件に関心を強くもつようになるのは、高校生になって事件の時効がマスコミの話題になってからかもしれない。


沢田研二が三億円事件の犯人を演じたテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」は名曲「時の過ぎゆくままに」が劇中で流れていたので有名だ。ジュリーが一番妖艶なころだ。荒井(松任谷)由美の歌でのちに石川ひとみが歌って大ヒットした「まちぶせ」を最初に歌ったのはこの番組で主役に絡む少女を演じた三木聖子だ。瀟洒な彼女の印象が強い。そんな訳でこの番組をやる日は勉強がまったく手につかなかった。
そして三億円犯人に関する情報を収集した。今のようにネットがあるわけでない。本屋や図書館で情報を得た。一人の少年が直後に自殺していて、それが一番有力そうに見えるが、この事件一人で完結するには難しいものがある。この映画のようにコンビで組んでやらないと出来そうもない気がする。

宮崎あおいがいい。新宿のタバコの煙がムンムンとするジャズ喫茶に一人おそるおそる入っていく姿や、初めてバイクを運転する場面の初々しさが実にかわいい。白バイに乗って黒のセドリックに向かう場面はドキドキしてしまう。年上の男性に憧れる少女の恋心を身体全体でうまく表現していた。

予想よりはおもしろく見れた。
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映画「フィギュアなあなた」 佐々木心音

2013-06-28 05:57:31 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「フィギュアなあなた」を劇場で見た。

最近劇場に足を運ぶのは、単館ものばかりだ。
嘆きのピエタ」「さよなら渓谷」いずれも観客が多い。映画の質も上級だ。
この映画は「ヌードの夜」の石井隆の新作というだけで喰いついた。東京周辺は池袋だけ。やはり面白い。まったく受け付けない人もいるだろうけど、エロティックな世界を十分楽しめた。

何より佐々木心音のダイナマイトバディには圧倒された。

主人公健太郎(柄本佑)は、雑誌社に勤める孤独なオタク青年だ。しかし、企画したものはいつも不発。そこで上司(竹中直人)から強い叱責を受け、総務に異動させられてしまう。リストラを宣告されたヤケ酒の果てにガラスバーでダンサー(檀蜜)を見ていた。

泥酔のあげくそこで最初のケンカだ。無理やり退場させられたあと、すれ違いざまに奇妙なカップルに出くわす。男装と思しき女(風間ルミ)はチンピラのようだ。思わず手を出してしまい逃げる。

チンピラに追われ、迷い込んだ廃墟ビルは昔飲み屋だった店が並んでいる。
懸命に中を徘徊すると、マネキン人形が死体の山のように積み上げられている中でセーラー服を着た少女のフィギュアを発見する。健太郎は生きているようなフィギュアに触り始めるのだ。
そうしているうちにさっきのカップルがやってくる。隠れていたが、見つかり男から半殺しの目に会う。そうしているうちに現れたのが、この廃墟ビルを棲家にしているヤクザだ。この中で麻薬取引しているらしい。三者入り乱れているうちにその美少女フィギュアが目を開けて動き出すのだ。。。。

石井隆というと夜のイメージが強い。しかもドツボにはまったネオンの狭間という感じだ。
前作「ヌードの夜」では気持ちよく、佐藤寛子を脱がせた。これがまたよかった。

今回は佐々木心音だ。普通に健康な男性であれば、彼女に魅力を感じない男はいないだろう。
今は23歳で一番きれいな時だ。肌の張りがはちきれそうだ。
そんな彼女にアクションをやらせたり、空中に浮かしたりして石井隆がいじりまくる。

この衝撃は映像で感じるほかないだろう。

それを目の前にしてダメ男の主人公が狂い始める。このダメ男ぶりは笑える。
新宿と思しきネオンの谷間で、泥酔して現実かどうかわけのわからない世界に入っていく。
廃墟のビルの中でのハチャメチャな映像がいかにも石井隆ワールドだ。


現実か真実かを彷徨うその映像はずっと目を楽しませる。
レベルの高い日活ロマンポルノというところか。
最後はフェリーニの映画のようなドンチャン騒ぎまで映しだしていく。

一つだけ面白かったのが、風間ルミの存在だ。
クレジットを見て、この名前見たことあるな。と思いながら見ていたら、チンピラ女(いや男)として登場。そうか女子プロレスの風間ルミだ。
主人公や廃墟ビルに張り付くヤクザを蹴りまくるキックは往年のプロレス技同様、激しい。腹が出ているのによくもまあ軽快なキックが出ること!これはこれで見ていて楽しい。一緒にいる女に愛撫したりするシーンは見ていて笑う。

予告編を見ていたら、石井隆は今度は檀蜜とコンビを組んで新作「甘い鞭」を出すらしい。
楽しみだ。

フィギュアなあなた
佐々木心音のバディに圧倒される


フィギュアなあなた


マリアの乳房
佐々木心音のナイスバディ
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映画「北のカナリアたち」 吉永小百合

2013-06-22 05:30:37 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「北のカナリアたち」は吉永小百合の主演作品。湊かなえの小説『往復書簡』の一編『二十年後の宿題』を原案に、「大鹿村騒動記」の阪本順治監督が映画化した。
北海道の北端、東京、札幌を舞台に、ある事件を機に離れ離れになった女教師と6人の生徒たちそれぞれが抱える後悔や心の傷を描く。

東京の図書館司書はる(吉永小百合)は今年定年を迎える。その彼女の元に突然刑事が訪問する。昔北海道北端の島にある分校で教師をしていたときの生徒の一人鈴木信人(森山未來)が殺人を起こしたという。信人の自宅にはるの連絡先が書いてあり、訪問してきたようだ。何で自分の連絡先を知っていたのであろうか?昔の生徒に信人のその後の行方を確認するためまず年賀状のやり取りをしている真奈美(満島ひかり)に会う。その後札幌の貿易会社に勤める直樹(勝地涼)、保母になったゆか(宮崎あおい)、稚内の造船所にいる七重(小池栄子)と会っていく。

ある事件を境に仲が良かった分校の仲間に亀裂が走ったのであった。久しぶりに再会した彼らの口からつらい思い出も語られる。札幌に2人ともいる直樹とゆかは出会っても言葉を交わさない。わだかまりがとれない。

20年前、はるは離島の小学校教師として、夫である川島行夫(柴田恭兵)と共に北海道北端の離島にやってきた。はるの父親(里見浩太朗)がその島の助役をやっていたのだ。はるは6人の生徒を受け持つことになっていた。合唱を通して交流が深まり、「先生が来るまで学校がつまらなかった」とこぼしていた子供たちの顔にも笑顔が溢れるようになった。道内のコンクールに出場するために練習を重ねていた。

夏のある日、はるは旦那とともに生徒たちと海辺のバーベキューに行った。そこで悲しい事故が起きたのだ。ゆかが海に転落してしまう。それを助けようとした夫の行夫は子供を助けた後、自らがおぼれ死んでしまうのだ。死んでしまった夫を見てはるは呆然とする。しかし、その時妻のはるに不倫疑惑がたつ。夫が溺れるそのときにはるはその場にいなかった。そして、そのときに男と会っていたというのだ。男は警察官・阿部(仲村トオル)だった。狭い島ではうわさはあっという間に広がる。教師としてはるは立場がなくなった。心配する父を一人置いて、追われるように島を出ることになるのだ。

それから20年たち、はると信人を除く5人の生徒がそのときの状況を回想する。
楽しかった日々だけでなく、別れのきっかけになった事件をとりまく状況について久々に会った生徒たちが語っていく。

永遠のアイドル吉永小百合が主演というだけで人が集まる。若手俳優はいずれも現在の日本映画界を代表するメンバーだ。演技のレベルは高い。大女優吉永小百合とのやり取りを楽しんでいる印象だ。
吉永小百合は現在68歳、その美貌はある意味「平成の妖怪」だ。普通であれば40前後の女優が回想シーンを普通に演じて、老けメイクで20年後のシーンを撮るというパターンだろう。今回は20年前を演じていても、今のままで演じられる。現在の設定である60歳の姿というのを今の吉永そのままで映すが、20年前の姿から老けているようには見えない。不思議な世界だ。

そしてその吉永小百合を取り巻く映像は美しい。

何せ撮影は映画「剣岳」では監督を勤め、日本映画の各賞を独占した木村大作である。
北海の荒波を力強く、利尻富士を美しく映像に取り込む能力は風景を撮らせたら日本映画界トップの腕前だろう。しかも、川井郁子のバイオリンも風景に合った情感のこもった美しさだ。


それだけど、今ひとつのれない。
何でなのか?やはりこの不倫物語の設定に何か不自然さを感じるからだと思う。
自暴自爆となった警察官を主人公が助けるという設定がそもそも妙な感じがする。しかも、仮にそうだったとしてもその警察官と主人公が付き合ってしまうというところも変だ。
主人公の夫は癌だ。もう直しようのないところまできていて、それで離島に来ているのだ。
そういう夫がいるだけでストレスは高まるであろうが、いくらなんでも不倫はしないだろう。

その不自然さが前提にあり、感情同化できなかった。

森山未來が殺人を犯す経緯は今までいくつもの物語が作られてきたパターンだ。不自然ではないが小池栄子の不倫相手の話はあまりにも話が出来すぎている。
それでも、二十四の瞳を思わせる最終場面は胸にジーンと来るものはあったのは確かだ。

何かもったいない気もする。

ロケがあった稚内や礼文島は高校一年のときに行った。蛇足だがつい思い出す。
高校同級の仲間2人と二週間かけて、北海道を一周回った。ユースホステルを渡り歩く「かに族」だ。
仲間の1人が北大獣医学部を希望していた。北大前で撮ったそのときの写真が今でもある。
札幌ビール園では、高校一年の分際でビールジョッキーを1人6杯程度飲んだ。酔っ払って稚内行きの夜行急行に乗った。
座席はなく、トイレの隣あたりの通路に雑魚寝だ。猛烈な二日酔いで稚内で目覚めた。礼文島に向った。船では戻しそうで戻せないもどかしさが印象に残る。
いいときだったものだ。大学生だと偽っていた。旅なれている奴がそうじゃないと女の子に相手されないというのである。なぜかW大理工と言っていた。しかし、不思議なものだ。自分以外残り2人は本当にそこへいった。1人は医学部を受けなおして最終的に転学したけど、先日も一人の仲間と不思議なもんだねと語り合ったものだ。
いずれにせよ、二泊した礼文島からみる光景はいまだに忘れられない美しさだった。
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「千年の愉楽」 若松孝二

2013-03-27 22:04:57 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「千年の愉楽」を劇場で見た。
交通事故死した若松孝二監督の図らずも遺作になってしまった。


なぜか末期に多作となった監督が、中上健次の小説をベースにつくった。自分も平成3年から和歌山にいたことがあり、その時に南紀から東紀州へ何回か仕事でいった。非常に特異な集落であった。
その特異性を小説にまとめているのが中上健次だ。和歌山から南紀に向かう電車で彼の作品をむさぼり読んだ。問題もあるが、ちょっと普通と違う性の意識を強く感じた。そのテイストが前面に映画の中にあふれている。

若松が、中上作品を映像化するのにふさわしい場所として選んだのが、眼下に美しい尾鷲湾を見下ろし、背後には紀州の深い緑が連なる時間が止まったような須賀利という集落である。いかにも南紀らしい海辺の集落で撮影して抜群の作品を生んだ。


紀州のとある路地。ここで産婆をしてきたオリュウノオバ(寺島しのぶ)は最期の時を迎えている。オバの脳裏には、オバが誕生から死まで見つめ続けた男たちの姿が浮かんでいた。美貌を持ちながらもその美貌を呪うかのように女たちに身を沈めていった半蔵(高良健吾)。刹那に生き、自らの命を焼き尽くした三好(高岡蒼佑)。路地を離れ北の大地で一旗揚げようとするも夢破れた達男(染谷将太)。オバは自らの手で取り上げた彼らを見つめながら、あるがままに生きよと切に祈り続けた。オバの祈りは時空を超え、路地を流れていく……。

最初に若松映画常連の井浦新が血まみれで倒れているシーンが出てくる。何これ?という感じだ。
最初映画が始まってから意味がわからないまま映像を追っていく。佐野史郎と寺島しのぶが夫婦で寺島がお産婆さんであることがわかってくる。時代背景は昭和のようだが、あえてどの時期というのはわからない。海岸に面する漁村の風景は昭和20~30年代からタイムスリップしていないので、いかようにも解釈ができる。

そうしていくうちに美少年半蔵が身重の妻がいるにもかかわらず、後家さんなど女に狂っていく姿を映していく。若松ワールドだ。そういえば高良健吾中上健次作の「軽蔑」で紀州新宮をロケした作品に出ていた。あの映画も強烈な印象を残したが、ここでも周りの女をやりまくる役を演じている。
中途半端に人生を生きるモテ男を演じさせると天下一品だ。

そのあとが高岡蒼佑だ。彼が主演した映画「さんかく」はよくできた映画だった。その他時代劇などでも存在感を示していたが、宮崎あおいとの離婚問題やネット事件などで騒がれ、最近は鳴りをひそめていた印象だった。この映画では元不良少年とも言われる彼らしさが光る。この映画の男性役はやはり高良健吾、高岡蒼佑にしかできない役だ。

逆に「ヒミズ」の染谷は前2人の出るシーンが多いせいか、存在感がここでは薄い。正直彼でなくてもよかった気がする。

寺島しのぶは彼女にしては普通かな?でも彼女にとっても若松監督がいなくなったのは大変な損失だと思う。出演作品を増やすたびごとにそれを肥やしとして実力を伸ばしている。今回ある表情が昔から自分がお世話になっている彼女のオジサンにそっくりだということに唖然とさせられた。そういえば寺島しのぶのお母さんも生まれは御坊だったよなあ、そんなことを思い出した。

横溝正史の映画「悪魔の手毬唄」でベースとなる男は、古い村落で好き放題に村の若い女性を手篭めにして子供をそれぞれにつくっていた。横溝正史の映画では男はその顔を示さない。この映画では同じような遊び人の男が何人もいる。そして女に狂う。それが血筋であるかのように語られる。逆に女も狂いまくる。現代と比較して、昔の村落の方が性的開放感があったのであろうか?ふとそう思う。
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映画「赤目四十八瀧心中未遂」 寺島しのぶ

2013-01-16 23:12:23 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「赤目四十八瀧心中未遂」を久々にみた。
車谷長吉の直木賞作品の映画化である。

年末、関西にいった時尼崎や天王寺に久々に寄った。そういえばこの映画で両方の町が映っていたなあと思い。ふと見てみたくなった。
寺島しのぶ はこの映画と「ヴァイブレータ」の両方で大胆なヌードを披露して映画界の主演女優賞を独占した。彼女が女優として一皮むけるきっかけになった映画である。見直してみると確かに30少し過ぎの寺島が美しい。


兵庫県の尼崎が舞台だ。一人の男生島(大西滝次郎)が尼崎の商店街の一角にやってきた。彼はそれまでは別の労務者街にいた。主人公は焼き鳥屋の店主勢子ねえさん(大楠道代)と会う。元々は育ちも悪くなく、大学も出た主人公だったが、挫折した。さっそくに勢子ねえさんに住処へ連れていかれる。古臭い風呂なしの共同住宅であった。その一室で焼き鳥屋で使うモツ肉や鳥肉の串刺しをする仕事を始める。その共同住宅には社会の底辺を泳ぐいろんな人たちが住んでいた。娼婦やヤクザ、そして刺青の仕事師彫眉(内田裕也)がいた。
無口な主人公はただひたすらに串を刺してゆく。

住んでいるとその共同住宅では異常な出来事が次々起きていた。
勢子ねえさんの知り合いに綾(寺島しのぶ)がいた。姉さんによれば彼女は朝鮮人。自ら「ドブ川の泥の粥すすって育った女」と言う。兄貴はヤクザだ。刺青師と暮らし、女の背中には一面に刺青が翼を広げていた。無口な主人公もいくつかの事件がきっかけで綾と話をするようになる。綾は生島に自分を連れて逃げるよう懇願するが。。。。

長まわし気味の映像だ。2時間半以上の長丁場になるが、だれない。最初見たときに、尼崎の共同住宅のドツボにはまったような連中に驚いたものである。実際に阪神尼崎駅に降りてみると、その雰囲気がつかめてくる。ストーリーの大枠は上記のとおりだが、一緒に住む社会の底辺にいる連中が絡む小さい話を積み重ねている。その中でも強いオーラを出しているのは内田裕也であろう。長髪の刺青師は演じているというより地でいっているような迫力がある。その内田裕也演じる刺青師が我々に一つの謎を与える。紙で包まれた1つの箱を主人公に「数日間という約束」で預ける。ところが、そのままになっている。どうしたら良いのか?戸惑う主人公だ。

大楠道代はここでも貫禄がある。この2人から出てくる何かは違う。

天王寺駅を映し出した後、動物園や四天王寺、新世界あたりを映す。ついこの間四天王寺は見たばかりだ。ホテル街へも2人でいく。「ヴァイブレータ」の時も感じたが寺島しのぶは場末のラブホがよく似合う。梨園の名門で育った割にそう思わせるのは、東映ヤクザ映画の血筋も流れているからかもしれない。母親からはヌードはダメと大反対されたようだけど、ここで決断しなかったら今の彼女はなかったろう。

主題になる赤目四十八瀧は実に美しい。主人公たちは近鉄電車に乗って三重の赤目口に向かう。それまでにドツボな町を映し続けた後にでてくるので、コントラストが強い。栃木に赴任しているころ、滝をよく見て歩いたものだ。日光の代表的な滝ばかりでなく、那須や隣接県の方もよく出かけた。さすがに冬は寒々しいが、夏は滝が発散するイオンの流れがいい。それにしても赤目四十八瀧には多種多様な滝があるものだ。三重の名張は大阪にいた時は仕事で何度か行ったが、この滝は見ていない。生きている間には一度は寄りたい。

傑作というものは何度見てもいいものだ。

(参考作品)

赤目四十八瀧心中未遂
下流社会で泳ぐ人たち


ヴァイブレータ
ゆきずりの関越路
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