映画とライフデザイン

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映画「北のカナリアたち」 吉永小百合

2013-06-22 05:30:37 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「北のカナリアたち」は吉永小百合の主演作品。湊かなえの小説『往復書簡』の一編『二十年後の宿題』を原案に、「大鹿村騒動記」の阪本順治監督が映画化した。
北海道の北端、東京、札幌を舞台に、ある事件を機に離れ離れになった女教師と6人の生徒たちそれぞれが抱える後悔や心の傷を描く。

東京の図書館司書はる(吉永小百合)は今年定年を迎える。その彼女の元に突然刑事が訪問する。昔北海道北端の島にある分校で教師をしていたときの生徒の一人鈴木信人(森山未來)が殺人を起こしたという。信人の自宅にはるの連絡先が書いてあり、訪問してきたようだ。何で自分の連絡先を知っていたのであろうか?昔の生徒に信人のその後の行方を確認するためまず年賀状のやり取りをしている真奈美(満島ひかり)に会う。その後札幌の貿易会社に勤める直樹(勝地涼)、保母になったゆか(宮崎あおい)、稚内の造船所にいる七重(小池栄子)と会っていく。

ある事件を境に仲が良かった分校の仲間に亀裂が走ったのであった。久しぶりに再会した彼らの口からつらい思い出も語られる。札幌に2人ともいる直樹とゆかは出会っても言葉を交わさない。わだかまりがとれない。

20年前、はるは離島の小学校教師として、夫である川島行夫(柴田恭兵)と共に北海道北端の離島にやってきた。はるの父親(里見浩太朗)がその島の助役をやっていたのだ。はるは6人の生徒を受け持つことになっていた。合唱を通して交流が深まり、「先生が来るまで学校がつまらなかった」とこぼしていた子供たちの顔にも笑顔が溢れるようになった。道内のコンクールに出場するために練習を重ねていた。

夏のある日、はるは旦那とともに生徒たちと海辺のバーベキューに行った。そこで悲しい事故が起きたのだ。ゆかが海に転落してしまう。それを助けようとした夫の行夫は子供を助けた後、自らがおぼれ死んでしまうのだ。死んでしまった夫を見てはるは呆然とする。しかし、その時妻のはるに不倫疑惑がたつ。夫が溺れるそのときにはるはその場にいなかった。そして、そのときに男と会っていたというのだ。男は警察官・阿部(仲村トオル)だった。狭い島ではうわさはあっという間に広がる。教師としてはるは立場がなくなった。心配する父を一人置いて、追われるように島を出ることになるのだ。

それから20年たち、はると信人を除く5人の生徒がそのときの状況を回想する。
楽しかった日々だけでなく、別れのきっかけになった事件をとりまく状況について久々に会った生徒たちが語っていく。

永遠のアイドル吉永小百合が主演というだけで人が集まる。若手俳優はいずれも現在の日本映画界を代表するメンバーだ。演技のレベルは高い。大女優吉永小百合とのやり取りを楽しんでいる印象だ。
吉永小百合は現在68歳、その美貌はある意味「平成の妖怪」だ。普通であれば40前後の女優が回想シーンを普通に演じて、老けメイクで20年後のシーンを撮るというパターンだろう。今回は20年前を演じていても、今のままで演じられる。現在の設定である60歳の姿というのを今の吉永そのままで映すが、20年前の姿から老けているようには見えない。不思議な世界だ。

そしてその吉永小百合を取り巻く映像は美しい。

何せ撮影は映画「剣岳」では監督を勤め、日本映画の各賞を独占した木村大作である。
北海の荒波を力強く、利尻富士を美しく映像に取り込む能力は風景を撮らせたら日本映画界トップの腕前だろう。しかも、川井郁子のバイオリンも風景に合った情感のこもった美しさだ。


それだけど、今ひとつのれない。
何でなのか?やはりこの不倫物語の設定に何か不自然さを感じるからだと思う。
自暴自爆となった警察官を主人公が助けるという設定がそもそも妙な感じがする。しかも、仮にそうだったとしてもその警察官と主人公が付き合ってしまうというところも変だ。
主人公の夫は癌だ。もう直しようのないところまできていて、それで離島に来ているのだ。
そういう夫がいるだけでストレスは高まるであろうが、いくらなんでも不倫はしないだろう。

その不自然さが前提にあり、感情同化できなかった。

森山未來が殺人を犯す経緯は今までいくつもの物語が作られてきたパターンだ。不自然ではないが小池栄子の不倫相手の話はあまりにも話が出来すぎている。
それでも、二十四の瞳を思わせる最終場面は胸にジーンと来るものはあったのは確かだ。

何かもったいない気もする。

ロケがあった稚内や礼文島は高校一年のときに行った。蛇足だがつい思い出す。
高校同級の仲間2人と二週間かけて、北海道を一周回った。ユースホステルを渡り歩く「かに族」だ。
仲間の1人が北大獣医学部を希望していた。北大前で撮ったそのときの写真が今でもある。
札幌ビール園では、高校一年の分際でビールジョッキーを1人6杯程度飲んだ。酔っ払って稚内行きの夜行急行に乗った。
座席はなく、トイレの隣あたりの通路に雑魚寝だ。猛烈な二日酔いで稚内で目覚めた。礼文島に向った。船では戻しそうで戻せないもどかしさが印象に残る。
いいときだったものだ。大学生だと偽っていた。旅なれている奴がそうじゃないと女の子に相手されないというのである。なぜかW大理工と言っていた。しかし、不思議なものだ。自分以外残り2人は本当にそこへいった。1人は医学部を受けなおして最終的に転学したけど、先日も一人の仲間と不思議なもんだねと語り合ったものだ。
いずれにせよ、二泊した礼文島からみる光景はいまだに忘れられない美しさだった。

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