映画とライフデザイン

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映画「キャロル」ケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラ

2016-02-14 19:30:41 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「キャロル」を映画館で見てきました。


最後の場面、カメラはルーニー・マーラに見つめられたケイト・ブランシェットをじっと映す。
無表情であるが、ケイト・ブランシェットは軽く微笑んでいるようにも見える。
たぶんこういう終わり方をするんだろうなあと思っていたら、その通りエンディングとなり、背筋がぞくっとする。血液が逆流して全身がしびれてしまった。日本映画でいえば成瀬巳喜男監督「乱れる」高峰秀子が見せたラストシーンの時に感じたのと同じ衝撃だった。

今日の東京はかなりの強風が吹いていたが、アカデミー賞の有力候補とあってか、座席は最前列まで超満員だ。「ブルージャスミン」の身勝手な女ぶりでアカデミー賞主演を受賞したケイト・ブランシェット「ドラゴンタトゥの女」でヌードになり狂気に満ちあふれた女を好演したルーニー・マーラとのレズビアン映画らしい。レズビアン映画というと我々世代はにっかつポルノのような展開を予想してしまうけど、その当時よりも同性愛は社会的に承認されつつある。

何気なく知り合った女性2人の恋の進展話は、バックに映るゴールデンエイジと言われた50年代の美しいアメリカの描写とあわせて非常にきれいに見えてくる。ポストプロダクションの技が抜群で、美術、撮影、音楽いずれもすばらしく2時間映像を堪能できた。これは実にすばらしい映画だ。

1952年ニューヨーク、クリスマスを間近に控えて街は活気づいている。マンハッタンにある高級百貨店のおもちゃ売り場で働く若きテレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)。フォトグラファーに憧れてカメラを持ち歩き、恋人のリチャード(ジェイク・レイシー)から結婚を迫られてはいるが、何となく毎日を過ごしていた。

そんなある日、おもちゃ売り場にキャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)が娘リンディへのクリスマスプレゼントを探しに訪れた。テレーズは美しく魅力的なキャロルの存在に気づき、キャロルもその視線に気づいた。テレーズはプレゼントを一緒に選んだ。その際キャロルが手袋を忘れていってしまう。テレーズはすぐに手袋を自宅へと郵送した。するとキャロルから百貨店に電話がかかってくる。


御礼にとランチに誘われたテレーズは、翌日、キャロルに指定されたレストランで初めて話をして向きあう。キャロルは愛のない打算的な結婚生活を送っていた。その週末、キャロルの屋敷に招待され楽しい時間を過ごしていると、突然別居中の夫ハージ(カイル・チャンドラー)がクリスマスイブにリンディを迎えに来る日程を早めて帰宅して、リンディを連れ去ってしまう。


翌日、弁護士に呼び出されたキャロル。離婚を拒むハージは、リンディの共同親権から単独親権へと変更し申し立てをしてきた。キャロルと親友のアビー(サラ・ポールソン)との親友以上の親密さを理由にして、ハージの元に戻らなければ二度とリンディには会わせないと脅してきているのだ。審問までは娘とは会うことを禁止されてしまうキャロル。その夜、クリスマスプレゼントの高価なカメラを手にテレーズのアパートを訪れた失意のキャロルはテレーズを誘い、西に向かって車であてのない旅に出る。


1.ケイト・ブランシェット
実に優雅である。小さい子供がいて、結婚10年という映画内の設定では年齢は30代中盤といったところか、現在の年齢の10歳年下の役を演じる。赤い口紅とマニキュアが似合う大人の女性で常にタバコをすっている。「ブルージャスミン」では落ちぶれたむかしの栄光に生きる女を演じたが、ここではいかにも現役富裕層というゴージャスさをにじませる。自分としてはアカデミー賞を受賞した前作よりもよく見える。


エリザベス1世を演じた「エリザベス」、キャサリーン・ヘップバーンを演じた「アビエイター」ももちろん悪くはないが、個人的には「あるスキャンダルの覚書」と「ハンナ」でのケイトが好きだ。「あるスキャンダルの覚書」では若き学生と関係を持ってしまう女教師なんて日活ポルノまがいの役だが、実は年上のジュディ・デンチ演じる女教師にほれられている役で、ある意味今回と同じような展開だ。「ハンナ」で演じた主人公と敵対するCIAエージジェント役も自分には最高にカッコよく感じた。

2.ルーニー・マーラ
タータンチェックの帽子とマフラーが実にかわいい


「ドラゴンタトゥの女」
では狂気に迫る主人公を演じ、007のダニエルクレイグを手玉にとり、大胆にヌードになった。いったいどうしちゃったんだろうと思ってしまう。その前作「ソーシャルネットワーク」での女学生役と全くイメージが違ったからだ。「her 世界でひとつの彼女」「サイドエフェクト」もそれなりの存在感を見せたが、今回はよりいっそう素敵に映る。


今回も「ソーシャルネットワーク」と同じ透明感のある透き通ったかわいい顔で映るし、「ドラゴンタトゥの女」ほど大胆ではないが、ヌードになって映画の中での最重要場面でなくてはならない美しい姿をさらけ出す。さすがのプロ意識に脱帽である。

3.パトリシア・ハイスミス
ヒッチコックの「見知らぬ乗客」、アランドロンの「太陽がいっぱい」という映画史上では名作といわれる2つの作品の原作者である。謎解きというより犯罪を起こした男が逃げ切れるかという映画だ。最近ではキルスティンダンストが出演した「ギリシャに消えた嘘」なんて作品もパトリシア・ハイスミス作品だ。でも、「キャロル(The Price of Salt) 」は別のペンネームで発行されたらしい。しかも、ベストセラーだそうだ。この当時の感覚でいうと、女性同士の禁断の恋というのが世に承認されてなかったのであろう。それにしてもトッド・ヘインズ監督もゲイだそうだ。そういう関係はそうなっている人の方がよくわかるというわけか。

4.おもちゃ売り場
ルーニーマーラ演じるテレーズが勤めるおもちゃ売り場で、キャロルは「4歳のときどんな人形で遊んでいたの?」と店員のテレーズに話しかける。


時刻表少年だった自分には鉄道模型もいい感じけど、テレーズのまわりに映るバービー人形のような着せ替え人形が懐かしい。恥ずかしながら、小学校低学年の時、勉強もせずに悶々としていた少年だった自分はあまりの出来の悪さに同級生の少女たちに同情され、よく一緒に遊んでくれた。お医者様ごっこといってもむしろ自分が診察されるだけで、相手側には何もしていない。そして妹のためにといいながら親に買ってもらった人形を女の子の家に持っていって一緒になって着せ替えを楽しんでいた過去がある。
自分の誕生日には予告もせずに次から次へと女の子が誕生日プレゼントを買って持ってきてくれて、あわてた母が不二家のケーキを買いに行って体裁を整えてくれた。着せ替え人形遊びをしたのは言うまでもない。キャロルのセリフをきいてむかしの自分をつい思い出した。

(参考作品)
ブルージャスミン
シャネルを着飾った身勝手な女(参考記事


ドラゴン・タトゥーの女
狂気に満ちあふれた女(参考記事

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