ゴールデン・リタイアーズ

S20年生、後期高齢ゾーン、人生最終コーナー「遊行期」の
徒然残日写真録

121126 吉永小百合の「北のカナリアたち」を観る。利尻富士が美しい厳寒の地の人生模様!

2012年11月26日 | アフターセブンティ

ワーナーマイカル筑紫野、9時20分からの「北のカナリアたち」を観に出かける。前回、予告編で「終の信託」とこの映画が記憶に残っていたが疑似サユリストゆえ、北を観ることにする。湊かなえの「往復書簡(幻冬舎)」が原作らしいが私と同じ1945年生まれの吉永小百合が40代、60代の清新な女性を演じている。まったく違和感が感じない若さですね。学生時代、リュックを担いでいわゆる蟹族として2週間ばかり北海道を旅行、最北端の礼文、利尻島にもわたったことがある。東映創立60周年記念の映画らしいがスタート時の岩に波しずくが当たる画面は懐かしいね。中村錦之介、大友竜太郎、片岡知恵蔵など時代劇をよく見たもんだ。

 さてこの映画、バイオリンの響きとともに重々しく始まる。吉永小百合演じるところの離島分校の女性教師(川島はる)として余命半年の大学教授の夫(柴田恭平)と赴任、そこに男女3人づつの子供たちがいる。それぞれに家庭事情を抱えている。親の世界が子供の世界にも影響を及ぼす。おじさんと二人暮らしのノブという最年少の男の子、吃音で年上のイサムにいつもいじめられては大声で泣きわめく。ハルはオルガンでノブの泣き声にあわせメロディにのせてゆく。それにあとの5人も追随してゆく。子供たちのカナリアコーラスグループが誕生する。ノブの長所を発見してやり、グループの結束につなげてゆく。一貫したはるの関係する人に対する優しさの表出。コーラス発表会で島民の大喝采をうける。はるはしばし楽しい教師生活をおくるが病気に苦しむ夫に何もしてやれないことに心の痛みをかかえる。同じような心の痛みをかかえる警察官阿部(ナカムラトオル)が島に赴任してくる、この男にハルはいつしか心をひかれてゆく。こんな時に事故がおこる。合唱大会のソロをすることになった島のスナックをやってる母親の娘ユカ(宮崎葵)、その母親にたぶらかされている父親の息子直樹がユカをなじり全員が大ゲンカ、その後ユカの声が出なくなる。ハルの夫が気分転換にバーベキューでもしたらとすすめる。そこでナオキがユカに謝ろうとするとユカが駆け出し崖から足を滑らし海に転落、ハルの夫が助けに飛び込み波にさらわれ死んでしまう。ユカは助かったがこの事故の直前、ハルが姿を消し、阿部と会っていたことが発覚。この1件でハルは島を追われる。カナリアたちは歌を忘れる。

 ハルは東京で図書館士として働き定年を迎える。ここに刑事がやってきてノブという男が殺人の容疑者になっていることを聞かされ驚く。ユカは自殺しようとしたのか、ハルはなぜ阿部とあっていたのか、いうならばサスペンスドラマであるのだが20年後、島を訪れ5人と再会、それらの謎がひとつひとつ解かれてゆき、子供たちがそれぞれに心の闇をかかえていたことを知りハルもなぜあの時阿部とあっていたのかいきさつを説明する。警察に追われていたノブは島にもどり、隠れているところを警察官になったイサムに追い詰められ鉄塔の梯子の上から転落、病院に運ばれ生死の境をさまようが奇跡的に助かり人を殺したいきさつを吃音しながら刑事に話す。生まれながらにして不条理を背負ってきた真面目な吃音のノブという男の人生に刑事も憐れみを覚える。ハルのたっての願いを聞き入れ、分校のあれはてた教室で6人が最後のコーラスを合唱する。実は逃亡中のノブから電話をうけたハルが20年後の宿題発表に島に帰りなさいとすすめ、教室での再会となった。船でつれてゆかれるノブに先生も友達も皆あなたを愛しているわよ、必ず帰ってきてよと告げる。

 まさに一途な誠実な女を演じてきた吉永小百合にしかできない映画だと思う。はじめて吉永小百合がのキスシーンをみたが男と女の色恋を感じさせない切ないシーンではあった。亡くなった夫は海に飲み込まれてゆくとき手を振っていたと生徒の一人が告白、自ら死ぬつもりであったのだ。阿部に会いに行くように勧めたのは実は夫であり、阿部に死ぬなよ、生き抜けよと伝えてくれと言われ、ハルは阿部に会いに行ったということも明かされる。とにかく生きること、生きておれば必ずいいことはあるものよというメッセージをこの映画は送っているようだ。ネットではハンカチなしには見れませんよとあったが最後のコーラスシーンでは思わずうるっとくる。こんな映画をみると現在の世相や己自身の生き方が世俗の垢にひたりきっているかのように思えてくる。心が洗われる映画ではあった。

 

 

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