はだしのゲン作者が描いたオキナワ 著作集を刊行:朝日新聞デジタル
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中沢啓治さんが生前、太平洋戦争末期の沖縄戦や戦後の米軍基地問題を描いた著作集「オキナワ」が刊行された。「週刊少年ジャンプ」で1970年に連載された作品など5作品収録。
漫画「はだしのゲン」を手がけた故・中沢啓治さんが生前、太平洋戦争末期の沖縄戦や戦後の米軍基地問題を描いた著作集「オキナワ」が刊行された。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1970年に連載された作品など5作品が収録されている。
少年ジャンプの連載「オキナワ」では、ベトナムへ空爆に向かう米軍爆撃機B52や米軍機の墜落事故といった72年の本土復帰前の沖縄が描かれている。「いつまでも平和がきやしない。大好きな沖縄に」「わしは基地や戦争でもうけているやつは大嫌いなんじゃ」。登場人物のセリフには中沢さんの沖縄や平和への思いが込められていた――。妻のミサヨさん(73)は取材にこう語る。
ミサヨさんは最近、中沢さんが5作品を描くために米軍占領下の沖縄で撮影した数百枚の白黒写真を書斎の棚から見つけた。空を飛ぶ米軍機、金網に囲まれた米軍基地、英語の看板が並ぶ商店街……。作品の参考にしたとみられるカットが数多くあったという。
ベトナム戦争に関心を寄せ、米軍が枯れ葉剤をまいたと知って「ほんとに残酷だよな」と憤ったという中沢さん。ミサヨさんに「戦争で庶民が得るもんは何にもないんじゃ。戦争がなければ、原爆も沖縄の被害もなかったんじゃ」とも言っていたという。
刊行された著作集は「黒い雨にうたれて」などに続くシリーズ3冊目で、東京の「垣内出版」の峯達朗さん(51)が提案した。峯さんは「作品を読み直し、沖縄の状況は変わっていないと感じた。今に通じる視点で描かれている」と話す。著作集「オキナワ」は1600円(税抜き)。問い合わせは垣内出版(03・3428・7623)へ。(中野晃)