東日本巨大地震 福島原発半径20km以内の住民に避難指示
原子力の専門家だった大前研一の解説だ。
さすが原子力研究の最先端にいた人だけあって説得力がある。
日曜日の段階の話でここからいろいろな進展があるが極めて正確と言っていい。
この人は被曝の健康被害に対しては割合楽観的なようだ。
彼が正しい事を祈るばかりだ。
ただ乳幼児や妊婦が楽観に惑わされるのは危険な気がする。
まだ見ていない人は是非。
特別サービスで要約します(長いから)。
金曜日に既に、これからの問題は原子力の方が大変だと思い、民主党にも電話をして
これは制御不能の状態になるという事をいったがその時はまだ認識が非常に甘かった。
JALの123便と似てる。
JALの123便では、テールコーンが飛んだときに、油圧系統の独立した2系統が両方ともが飛び散ったテールコーンでもって切れた。
それによってバックアップも一遍に失われた。
「ハイドロオールアウト」。
つまり、翼が全く動かず操縦不能になった。
今回の制御不能とは全ての電源が津波で切れてしまったということ。
蓄電池は7時間しかもたない。
いうことで夜には切れてしまって、メーターが読めなくなった。
中の温度がいくらなのか、どのくらいの状況になってるのか、中央制御室で把握できない。
最近の原子炉のオペレータはマニュアルで育っているが、これは、完全にマニュアルの外側。
非常用電源として用意されてる2系統のディーゼルジェネレータが両方とも立ち上がらない。
7mの想定で設計されているが14mの津波が来て(携帯の水没のように)電気系統の色々なものが機能しなくなった。
したがって海水の取り入れ(冷却その他)が出来ない状況になっている。
さらに外部の変電所が倒れてたと思われ、外部電源が取り込めない。
後知恵になるが原子炉は地震で緊急停止しなかった方が良かった。
緊急停止してなければ、発電を続けられたからだ。
自動停止という設計思想に問題があったかもしれない。
また、海側に電源関係のモノを持ってくるのも問題だった。
後知恵から言うと、全てが悪い方に悪いほうに行った。
今度の場合も緊急炉心冷却装置(ECCS)もポンプが無いと水が入ってこない(電源が無いので)。
緊急の場合に炉心の上にあるボロンというホウ素が中性子の核反応を止める。
そのフランジャーポンプも電気がないので動かない。
考えられる全ての事が「電気」というものを前提にしている。
我々が考えた、原子炉の安全に関するバックアップは最初から全ての電気が切れてる状態を想定してない。
スリーマイルと非常に似ている。
スリーマイルの場合はオペレーターが発狂した。
自分が運転してる間におかしなメーターのwarningが鳴り、それを手動に変えて発狂して、
またおかしくなって自分が責任を持ってやらないといけないとパニックになった。
手放してくれれば良かったのに、全部手動に替えては間違った選択を3回もして、
半分炉心溶融で今回と同じ様に水蒸気、水素の発生も起ってスリーマイルの大事故につながった。
オペレーターが1度や2度はミスするけど、3回もそれをやるってのは想定外だった。
今回の、最大の反省事項は、どんな事があっても非常用の電源は動くようにすること。
2系統ディーゼルじゃなくて、例えば1系統を太陽電気、電池にするとか。
思想、その他を違うものにすることが危機管理上大事だ。
原子炉の場合は3 out of 2と言って、三つの違う系統の内2つを使えるようにするという。
しかし同じ思想のバックアップを置いてたの全て使えなくなった。
今回の場合は早い時間に全部が想定外になった。
それで発電機を持った車(ジェンセット)が50台も来たけど、1台しか動かなかった。
考えられないシナリオをマニュアルで育った人達が、一生懸命考えながらやらざるを得なかった。
1号炉は46万kwの原子炉で、46年くらいたってて、寿命を超え10年くらい延命して使っていた。
東電の判断として、もうこれはボロンを含んだ海水を注入して強制的に冷した。
この瞬間にスリーマイルと同じ状態で、後はコンクリ漬けにして50年か100年経ってどうするか、
後の人に決めてもらう事になった。
ただ、まだ崩壊熱が出続けるので、予断は許さないがチェルノブイリ型の暴走は止められたと思う。
爆発の原因:
燃料棒(ペレットという燃料そのものが入っている)がカラ炊きの状態になった。
最終的には上から、全部で4mの燃料棒の1m70cmくらいまで上が水がない状態でカラ炊きになった。
あのままもうちょっと待ってたら完全にカラ炊きになってメルトダウンした。
カラ炊きでジルコニウムの被覆管(今はステンレスが多い)から水素が出て化学反応を起こし脆くなった。
そこに中側から核分裂生成物が押してきてて破裂してバラバラになって出る。
れが圧力容器の穴から外に出て建屋に溜まった。
水素ガスが建屋に溜まったがそれを逃がすブロワーがここでも電気がなくて、機能しなかった。
今も3号機はそういうクリティカルな状況になってると思う。
そこを破って水素を表に出さないといけない。
しかし放射線のレベルがものすごく高い中、バルブ操作を(本当は電気で開けるバルブだが)手動やらざるを得ない。
あの人達は決死隊だ。
恐らく10分とか、それ以上は働けないような環境になってたと思う。
それで、かろうじて空いたと言って喜んでいた所、上に水素ガスが溜った。
しかし上のウインドウを開けるという事が危険で出来ないという事で、これも躊躇したのだろう。
ここも決死隊が出て行って、水素を出せればよかったが。
結果水素の爆発でもってリアルな核分裂生成物が広範囲に飛び散り近所の介護ホームとか
救助のバスを待っている人が浴びた。
リアルな核分裂生成物が散ったという事なのでスリーマイルよりはるかに悪い状態。
かなり広範囲に飛んだが付着したものなら洗えばいい。
自分自身はMITで実験中に飲み込んだ事だある。
半減期50年だが大丈夫だ。
経済損害が大変。
これからテレビや朝日新聞がガイガーを持ってあちこち測って歩く。
必要以上の風評被害が出る。
東電にとっては補償額が拡大する。
格納の容器が爆発しなかったのが幸いだが、核分裂生成物が出てしまったのは痛手。
事故のレベルとしてはチェルノブイリが7、スリーマイルが5。
今のところレベル6だが炉心がメルトすると7になる。
反省はたくさんある。
沸騰式原子炉は下から制御棒を突っ込めるので地震の時はいい。
運転を止めない方が良かったのではないか。
柏崎刈羽と同じで同一ロケーションに6基まとめて作るのは問題。
住民対策が比較的簡単なのでこうなりがちだが安全上は大反省すべき。
これで世界に日本の原子炉はもう売れない。
スリーマイル以降アメリカでは一つもできていない。
日本が原発で優位に立てたのは米国ブランドがスリーマイルでこけた漁夫の利。
同じ事が日本のメーカーにも起きる。
日本での新しい建設はもう無理だし、今後民間企業が高リスクの原子炉を持てるのか、
という大問題になる。
一企業が取るリスクとしては大きすぎる。
国そのものが公営会社で運営するしかなくなる。
更に痛手なのは国家戦略のプルサーマルがもうできないと言う事だ。
プルサーマルの3号炉が海水を入れて多分廃炉するからだ。
国内最大地震でよく耐えたというが設計思想が甘かったと言われても仕方ない。
日本の優秀さはなかった。
日本の原子力は今回の問題点をしっかり検証し、よく考えて何十年後に
再起を期するしかない。
日立や東芝が既に受注している原発もどうんるか予断を許さない。
原子力産業にとっては大きな痛手だ。
国民経済、生活からみれば切り抜けられる。
原子力で失う35%のエネルギーの節約を考えることだ。
幸い経済は成長していないので全ての電気機器の省エネ性能を35%上げることになる。