日本国の古代ものを読むのは久しぶりです。丁度倭国から日本国という名に変わった頃の話ですが、そのようなことはこの話では出てきません。この本の上巻は古代ものを読んでいた頃ですから、4年ぐらい前に買ってあったのですが、なかなか読もうという気が起こらず、放りっぱなしになっていました。丁度、藤白王子を訪ねた際に有間皇子のことが再浮上したので、読んでみようと思ったのです。
古代の系図というのは素人の私にとっては結構ややこしいものでしたが、この本を読んでみると以前読んだことのある名前が次々と登場して、案外頭の中は整理できているものだなぁと思ったのでした。舒明天皇の后であった皇極天皇の子、中大兄皇子(天智天皇)と大海子皇子(天武天皇)、皇極天皇の弟が孝徳天皇であり、天智の異母妹である間人王女が孝徳天皇の后になるのですが、歳が離れていて間人は孝徳になじめず、中大兄と関係を持ってしまう。こういう点では中大兄は異常な好色家であったのだと思うのです。中大兄は妃として蘇我倉山田石川麻呂の娘・越智郎女を宮廷に入れており、二人の間に鵜野讃良皇女(持統天皇)を生み、大海子皇子の妃であった額田王を得るために大海子皇子に鵜野讃良王女を妃とさせるのでした。
こうなってくると中大兄皇子の振る舞いは尋常ではありません。私などから見ると現の大阪市長も尋常ではありませんが、お子さんはたくさんいらっしゃるようですが、ここまで好色家ではないでしょう。
中大兄皇子は藤原鎌足や大海子皇子と組んで、百済を滅ぼした唐と新羅の連合軍と戦いますが惨敗します。当初中大兄が信頼していた大海子は次期の天皇にと考えていたようですが、中大兄の妃であった伊賀采女との間に生まれた長男・大友皇子を溺愛、大海子は大友皇子に対して、額田王との間に生まれた十市王女を差し出します。そして大友皇子を次期天皇として定めた天智は亡くなり、大海子は難を逃れて吉野に隠遁すると見せかけますが、そこから壬申の乱が起こり、天武朝となるわけです。
ですから天皇は34代舒明の後は皇極ー孝徳ー斉明(皇極の践祚)-天智ー弘文ー天武ー持統と繋がっていきます。
ここまでの感想を書くと主人公は中大兄なのか大海子なのかと思われるようですが、主人公はあくまで額田王。タイトルの『茜に燃ゆ』は彼女の万葉集にある詩“あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る”から取ったものなのでしょう。皇極帝に仕えながら、その二人の息子の間で闊歩する額田王の姿を生き生きと描いています。
ところでこの両冊、どちらも290ページ程度のものなのですが、定価が100円ほど違います。下巻の方が解説も付いているのに100円ほど安いのは、どういう訳なのでしょう。
この本も随分前に買ったもので、読んだのに感想も書かずに放ってありました。作者の坂東真砂子氏はかなり以前に読んだものに一度感想を書きました。坂東真砂子氏は私の購読している新聞に書評を載せたりしているので、少し注目をしていました。
この二つの連作と見えるものが、別の出版社から出されているのが不思議で買ったのですが、これまたどのような意図があったのかはっきりしません。
実際に読んでみると、帯に書かれているようなエロティシズムなどはあまり感じません。こちらは現代版ですが、生きていく上での設定の方が無理があるように思えたりもします。
古代からの男女の営みがどうであったのかを考えた一冊、前述の中大兄皇子のような好色さはありません。やはり天皇家っておかしいんじゃないかと思ってしまいます。
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