白杖のトライリンガル

難聴だけじゃない?網膜色素変性症を併せ持つアッシャー症候群の息子達の日常を母の目からつづります。

Deaf Japan

2008-02-04 06:00:06 | その他
サンフランシスコ市立図書館で、聾者向けのイベントがあるという。
そのイベント名は"Deaf Japan"
いったいどんな話なのか、どういう人たちがやるのか全然わからないけど、Japanとつくからには行かなきゃ!っとみんなで行ってみた。

場所は図書館にある小さなホール。
30人くらいの人がきていただろうか。
どうやらプレゼンターはサンノゼの高校の先生2人。
一人は健聴で一人は聾のようだ。
全部手話で通訳者が英語に訳して喋る。
でも、聴衆(?)のほとんどはどうやらDeafの方たちのようだった。

昨年の夏、お二人の高校の生徒6人と日本の聾学校(東京とその周辺にある学校5校)を訪問した時の話。
NHKで放送されたため、成田到着から帰るまでずっと、NHKの取材の人がついて回ったらしい。

プレゼンターの高校の先生がとっても話がうまいものだから、色んなエピソードがそれはそれは面白い話で笑えた。
それに手話という視覚的で表現豊かな言葉を使っていたのも手伝って、ちょっとした演劇を見ているようだった。
もちろん、通訳者の言葉がなければ半分も分からなかっただろうけどね。

飛行機に乗り遅れそうになった話。
混んだ電車にお財布を忘れたのに、お金が入ったまま出てきたという、アメリカでは信じられない話。
日本手話で「お兄さん」はどうやるのかという話。

訪問先の学校では、日本の文化を知ってもらおうと、着物や折り紙といった伝統的なものばかり紹介されたようだけど、実際はそういうことより日常生活の文化の違いの方がずっと興味深くて驚きの連続だったようだ。

例えば、家ではもちろん学校でも靴のままでは上がっちゃいけないということ。
学校によくある昇降口の説明やどの家にもある玄関の説明は面白かった。
学校では生徒がクラスごとに移動するのではなく、先生が教室に来るということ。
生徒は制服を着ていてお化粧もしなければピアスやネックレスといった宝飾品もつけてないこと。
毎日生徒による掃除の時間があること。
授業の最初と最後に必ず号令がかかってお辞儀をすること。
行くところ行くところで記念撮影があること。
小さい子供が一人でてくてく歩いて学校に行くこと。
どうかしたら子供が一人で電車に乗っているということ。(アメリカでは違法です)

私達日本人にとっては当然のことが、彼らにとってはすごいカルチャーショックの連続だったようで、その話の一つ一つが笑えた。

そして最後にNHKで放送された番組をそのまま流してくれた。
もちろん全部日本語。
聾者が見るからか、ナレーションの言葉は全部字幕になってでていた。
たぶんあの会場で耳が聞こえる日本人は私だけだっただろう。
日系人が数人いたようだけど、日本語が読める人もほとんどいなかったと思う。
私の手話がもう少しうまかったら、訳してあげることが出来たのに、ちょっとはがゆかった。

生徒たちにとってこの日本体験は忘れられない貴重な経験になったようだ。
日本に呼ばれたものの最大の難関はお金。
お金を準備するためにみんなで寄付を呼びかけたり洗車をやったりキャンディーを売ったりと、数ヶ月に渡って必死でお金を集めたようだ。

なんだかすごくじーんとくる、素敵なお話だった。