東京都に対して、避難所における食事の無償提供(東京セントラルユースホステル)、洗濯代の負担、炊飯器の支給についての要望書を、5月6日に執行しました。
東日本大震災の被災者の救助に関する要望書
東京都知事 石原慎太郎 殿
東京都都市整備局 御中
東京都総務局総合防災部 御中
とすねっと要望書第10号
平成23年5月6日
東京災害支援ネット(とすねっと)
代表 森 川 清
(事務局)
〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-14
SK90ビル302森川清法律事務所内
電話:080-4322-2018
第1 要望の趣旨
1. 貴庁が設置する避難所である東京セントラルユースホステルに避難する東日本大震災の被災者に対し、食費の自己負担を求める取扱いをせず、無償で1日3食の食事を提供すること,
2. 貴庁が設置する避難所である東京セントラルユースホステル及び旧グランドプリンスホテル赤坂に避難する東日本大震災の被災者が,洗濯代を負担しなくていい施策を講じること
3. 東日本大震災の応急仮設住宅として活用されている都営住宅等に入居した被災者のために、生活必需品として,「炊飯器」を給与・貸与すること
を要望します。
第2 要望の理由
1 わたしたちは、主に都内で東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです(代表・森川清弁護士)。インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」を通じて被災者に必要な情報を提供したり、避難所や電話での相談活動を行っております。
2 貴庁は、本年4月3日から東京セントラルユースホステル(以下「東京ユース」)に東日本大震災の被災者を受け入れていますが,東京ユースに避難する被災者に限り、食事の提供を行わないとして、食費の自己負担を求めております。同様に同月9日から被災者を受け入れる旧グランドプリンスホテル赤坂(以下「赤プリ」)では,無償提供されているのであるから,公平性の視点でも問題があります。
そもそも東京ユースは,避難施設として民間から提供されたもので、社援総発0319第1号平成23年3月19日付厚生労働省社会・援護局総務課長通知「平成23年東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法の弾力運用について」(以下、「0319通知」という。)第2項(1)にいう「民間の旅館・ホテル等」として、災害救助法令上の「避難所」に当たることは明らかであり,災害救助法23条には、都道府県知事が被災者に対して行うべき「救助」として、「収容施設」(避難所)の提供に加えて、「食品の給与」が挙げられており、その具体的な実施基準である東京都災害救助法施行細則第2条別表第1(福島県災害救助法施行細則など、被災県の規則も同じ内容です。)によれば、「食品の給与は、避難所に収容された者(中略)に対して行うものとする。」とされております。
しかも、厚生労働省は、各都道府県に対し、食費について災害救助法の弾力的な運用を求めており、0319通知第2項(1)では、民間の旅館・ホテルを避難所として借り上げる場合、食費込みで一人1日5000円の特別基準が示されています。この通知に従い、東京都以外の他の県では、実際に民間の旅館・ホテルを借り上げて避難所として提供し、1日3食を被災者に無償で提供しています。
さらに、同通知第2項(2)では、災害救助法に基づいて被災者に避難所の提供や食品の給与等を行う期間について、2ヶ月までとする特別基準が設定されたことも明らかにされています。その費用負担については、社援総発0404第1号平成23年4月4日厚生労働省通知「東日本大震災に掛かる災害救助法の弾力運用について(その5)」第1項でも念を押されているように、少なくとも2ヶ月間は、東京都が被災者に食事を提供しても、被災県に全額求償し、最終的には国庫負担とすることが可能です。
都道府県知事が被災者の救助に万全を期すべきこと(災害救助法22条)とされていることから,避難施設の被災者の食費を自己負担とする貴庁の対応は、災害救助法の弾力的運用によって被災者を支援しようとする上記の一連の厚生労働省通知を無視するものであって、厚生労働大臣が被災地以外の都道府県に対し災害救助の応援をなすべきことを指示できるという災害救助法31条の趣旨にも反します。
以上のとおり、避難施設の被災者の食費を自己負担とする貴庁の対応は、東日本大震災における災害救助法の運用として誤っています。
よって、東京ユースにおいても、被災者に対し1日3食の食事を提供するよう強く要請いたします。
3.借上げ方式による避難所における洗濯費用について,災害救助法基本通知によれば,避難所においては,仮設洗濯場(洗濯機,乾燥機等を含む。)が支出できることになっています(災害救助の運用と実務58頁)。赤プリ,東京ユース等借上げ方式の避難所において構造上の理由から洗濯場が準備できないことを勘案すれば,洗濯費用をまかなう方法により,災害救助法同等の救助が可能となるので,貴庁において,洗濯費用を負担するなどの措置を講じることを要請します。
4.借上げ方式による応急仮設住宅における炊飯器について,災害救助法の実務によれば,応急仮設住宅には,電気設備及びガス設備(ガス台含む。)が明記され設置が義務づけられています(一部公社住宅においては,電灯が設置されていないなどの情報がありますが,付帯設備として,仮に付帯設備として処理しないとしても生活必需品として設置されることを当然としています(災害救助の運用と実務279頁)ので,設置してください。)。併せて,生活必需品について,給与又は貸与することになっています。ここでいう生活必需品のうち炊事用具及び食器には,「炊飯器,鍋,包丁,ガス器具,皿,箸等」が含まれており(災害救助の運用と実務309頁),災害救助法により給付・貸与することが可能です。そこで,炊飯器の給付又は貸与を要請します。
以上