今年(2016年)3月に可決された東京・千代田区議会 「東日本大震災自主避難者への支援拡充を求める意見書」をご紹介します。この意見書は、区内の区域外避難者の皆さんの要望をもとに、定数25のうち自民党議員が14人を占める保守的な議会で可決されました。このため、細かい表現では妥協を余儀なくされた部分もありますが、「入居にあたっては経済的にも子どもの教育環境からも、なんとか現在の住居に住み続けたいとする声が寄せられています。(中略)国や県に対しても住宅の供与の延長も含め、今後も負担無く居住継続できる支援策を求めるものです。」として、現在のみなし仮設住宅の延長と経済的負担のない居住支援の要求がしっかり明記されています。これは、実質的に「長期・無償」の住宅提供を求める内容になっており、避難者の皆さんの要望の基本を尊重したものになっています。この問題で意見書の雛型を配って機械的に可決させるのは難しいかもしれませんが、そういう運動を行うのであれば、この千代田区議会意見書のように「長期・無償」の住宅提供の継続という基本線を踏み外さないことを最低防衛ラインとすることが必要不可欠の条件だと思います。そのために、避難者の皆さんは、千代田区議会の自民党系会派と厳しいやり取りをして、彼らを説得し、主張を受け入れてもらったと聞いています。しかし、千代田区議会の意見書とは反対に、避難住宅の有償化を前提にして、収入要件、期間、補助率等についての協議を求める条件闘争の意見書であれば、それ以下のものしか得られず、長期・無償の避難住宅提供を求める避難者運動の足を引っ張る結果にもなりかねない、と考えます。
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千代田区議会 「東日本大震災自主避難者への支援拡充を求める意見書」
https://kugikai.city.chiyoda.tokyo.jp/shingi/iken/2016pdf/2803giiken2.pdf
3月11日、東日本大震災の発生から5年目を迎えました。
まだまだ十分な復興には時間がかかると思われますが、現地の一日も早い復興と避難をされている全ての皆さんの生活再建が叶うよう心から祈りたいと思います。5年がたった今、私たちはこの大震災を風化させることなく当時の悲惨な現実をしっかりと受け止め、その復興に取り組まなければなりません。
さて、その中で自主的に避難をされている方も多く、全国で178,000人、東京都にも6,000人を超える方が今もなお都の公営住宅、国の公務員住宅などに住まれています。
自主避難として住まわれている方々もそれぞれ事情が異なり、小学校、幼稚園、保育園などに通うお子さんをお持ちのご家庭、福島に家があり現地でローンを支払いながら東京にお住まいの方、ご年配の両親と共に介護をしながら生活をしている方、など避難をされている方々からは経済的にも今の住居を出ることは極めて難しいと言っています。特に小さなお子さんにとって5年という歳月は長く、それぞれのご家庭の中で地域に根差したものになっています。
そのような中、平成29年3月末日をもって自主避難者の方が住まれている住宅の無償提供の終了が明らかになりました。今まで、国や県は被災者の様々な生活実態を考慮して期間の延長などを行ってきました。又、本年2月3日、福島県より民間賃貸住宅の家賃支援や住宅確保等への取り組み等の更なる支援策が明らかになったところです。しかし、入居にあたっては経済的にも子どもの教育環境からも、なんとか現在の住居に住み続けたいとする声が寄せられています。もちろん、地域の自治体が一番身近な相談窓口の拠点として役割を果たす事は当然ですが国や県に対しても住宅の供与の延長も含め、今後も負担無く居住継続できる支援策を求めるものです。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
平成28年3月16日
千代田区議会議長名
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
復興大臣
各被災県知事 あて