「江戸しぐさ」の思いやり

「言うまいと思えど今日の暑さかな」

蒸し暑い日が続けば、不眠にもなり、ただでさえイライラ感が増す時期である。

「日本人の国民性」調査で、仕事や生活が原因でイライラする20代30代の人が増加し、6割を超えたことがわかった。

「江戸しぐさ」という言葉がある。

雨の日に、すれ違うとき、互いの傘を外に傾ける「傘かしげ」。

渡し舟で後から人が来たら、こぶし一つ分、腰を浮かせてつめようではないかという「腰うかせ」など・・・。

今なら、電車内で、後から乗車する人が来たら、ちょっとした隙間を少しずつ腰を浮かせ、席を空けようとする
しぐさのことだろう。

自分さえ座れたら、他人のことはお構いなし、という無関心、自己中心的な態度に比べ、なんて奥ゆかしい、
思いやりのある「しぐさ」だろう。

こんな「しぐさ」に接すると、「暑い、暑い」とイライラしていても、涼風が吹きぬけるような「涼しい」気持ちに
なるのでなかろうか。

しぐさの一つに「七三の道」もある。

道を歩くときは、真ん中を歩くのではなく、自分は3割、残りの7割は他の人のためにあけておくという。

江戸は諸国から、言葉や習慣、しきたりが異なる人たちが集まる都会だったので、みんなが気持ちよく
暮らしていく為に、具体的な行動の手本が育ったらしい。

日本の中心だったのだから、地方に影響があったのは想像に難くない。

日本は、もともと相手の立場を重んじ、自分は二の次という奥ゆかしさが、あったのだと思う。

「自分が、私が」と主張はするが、他人のことはどうでもいい、という風潮なら、イライラ感は増し、
殺伐とした世の中になっていくだろう。

自分のことは後回し、他人にゆずる精神をみんなが持てば、衝突することも激減し、怒りの炎で
身を焼くことも少なくなるのでなかろうか。

「江戸しぐさ」の思いやりの精神・・・。
イラッときたら、この涼しげな粋な振る舞いを思い出し、心がけを見習うことにしよう☆