サッカーのPK戦をめぐるこんな話がある。
20年前のW杯でのこと。
当時、オシム監督率いるユーゴ代表の、対アルゼンチン戦で、PKを蹴る5人を選ぶとき、
7人が監督に申し出たという。
「私を外して」。。。
蹴る5人を決めると、オシム監督はプレーを見ずにロッカールームに消えた。
「(PK戦は)クジ引きみたいなものだから」。。。
百戦錬磨の選手や監督でも、PK戦の緊張は、できれば避けたい重圧なのだろう。
このたびの女子W杯ドイツ大会の決勝戦。
1986年から24試合、一度も勝ったことのない実力ナンバーワンのアメリカに、2度も先制
されながら、追いつき、延長にもつれこんだ末のPK戦。
どんなに緊張するかと思いきや、円陣を組んだ、なでしこ達の顔には笑みがあった。
沢主将の「PKは苦手なので、蹴る順番を一番最後にして」という申し出に、「沢さんずるい」
と周囲が言い出し、笑いが起きたと言う。
悲願の世界一を目の前に、この落ち着きと底なしの明るさ。。。
米国選手が、PK戦が始まるまでの数分間、芝の上で体を休めていたのと対照的に、立った
まま過ごした彼女達の気迫と、決して無関係ではないだろう。
最後まであきらめない、折れない不屈の精神は、まだ傷の癒えない被災地を抱える日本を
励まし、世界を驚嘆させた。
今回のMVPに選ばれた沢選手の座右の銘
「夢は見るものでなく、叶えるもの」。。。
叶った夢を、おそらくは実感する間もなく、次の目標は、ロンドン五輪の金メダル。
世界一になってもなお走り続ける彼女たちに、賛辞やエールは続くだろう。
しかし、思えば、必死で叶えた夢も通過点。
そんなキリのない道を、かつての自分も、夢中になって駆けていた。
今は、仏法に明示された決勝点に向かってまっしぐらの確かな日々。。。
この無上の幸せを、熱狂する大衆にどう伝えたらいいのだろう☆