ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

〔09 暮らし雑感〕 孫たちとの夏

2009年09月03日 | 2009 暮らし雑感
孫たちとの夏

早朝の散歩コースに大島新田調整池がある。
ここは、広大な沼に似た大きな遊水地で、県外からも釣り人がおとづれてくる大きな池である。
昔、享保時代に江戸柳橋の商人、大島清兵衛が米将軍・徳川吉宗の呼びかけに応じて、新田開発に名乗りをあげた。
埼玉の一角、杉戸の安土沼を開墾して広大な新田を開発した。 もともと沼地だったからそこを掘りあげて新田を作った。 伏越しという排水路を巡らせた特殊な技法は、実にみごとなもので郷土史講座で学んだことがある。
 
この新田開発をそっくり真似て、10年くらい前に広い田をほりあげて遊水地を作った。これが調整池だ。
水門口を皆で覗いていると、小さな亀がゆっくりと泳いでいる。
小亀は人に見られていることを感じたのか、あわてて水中に潜ってしまった。
 ここではヘラ師が2人が竿を出していたので、息子の運転でぐるっと反対側の 水門口に廻った。
横隣で茶髪のカップルが先刻からルアー竿を出していた。
何気なく見ていると、竿がしなっている。
「オ、オッ!」と思って見ていると 30センチほどの黒く扁平な魚のようなものが釣れた。
茶髪君は丁寧に手繰っている。
 「獲物はなんですか?」と聞くと「ナマズです」との答え。
ナマズなら、天ぷらが美味いのだがと思っているうちに、彼は手元に寄せ鮮やかにリリースして池に返した。
残念。

予め、家で作った子供用の短い竿仕掛け針を結んでいると 「あっ これは何だ」手網で石段下の池を掬っていた小2坊主の孫が言う。
皆で寄って見ると30匹ほどの藻エビが網の中で踊っていた。
川ハゼのようなものも混じっている。
もう一度、掬って見るとまた同じようにエビがたくさん捕れる。
このエビは白くて華奢だから、赤いザリガニのような獰猛さはない。 田園の大池で、小さな彼らがこんなにも多く棲息していることは想定外だった。

息子はルアー竿を使って投げ釣りのような形で池に放り込む。
子供らの、狙いはクチボソやモロコなどの類だから短竿の仕掛けに市販の鯉のねり餌を水で溶かしてねり玉にして針先につけてやる。
小2はすぐに慣れ、少3の長男のほうは「ジッタン やって」と始終やってくる。
流石に娘のほうの小6生の方は、そういうことは言わない。
結構、年少の孫たちをあれこれ指図して竿を振って面倒も見ている
私のほうはヘラ竿11尺で遠目を狙ってみた。
魚信はあるのだが、これが、なかなか乗らない。
かって冬場の社内ヘラ釣り大会で準優勝を獲ったこともあるこの腕も寄る年波か。
子供のほうもヘラウキがぴくぴくするが、リズムがでない。
難しそうなので、小学生2人のほうの仕掛けを玉浮きに変えてみた。

 息子の置き竿が突然しなりだした。
丹念に寄せると20センチほどのヘラ鮒だ。
 「父さん、ヘラってエビを食べるのかね」と聞かれた。
さきほどの藻エビを付けて放り込んでいたらしい。
雑食性だからなんでも食べるのだけど、まさかエビでヘラを釣ることになったことには、私のほうも驚いた。
子供たちのほうにも異変がおきた。
玉浮き仕掛けにかなりのアタリが出始める。
では見本を見せようとジッタンの私が、やってみるとハリスごと取られた。
その時、白い魚腹がヒラを返したの見えた。
明らかに鯉かフナだ。
息子もやってみたが、やはりプツンと切れる。
仕掛けを太目のテグスに変えてやってみる。
警戒心が強い鯉たちがこんなコンクリート 座岸近くまでやってくるのは想定外のことでもあった。

だが暑い。
飲み物を飲んでも更に暑い。
これにはまいった。
見上げれば、紺碧の空とその一角の入道雲だ。

ほどなく嫁のミキちゃんが、あーちゃんと娘同伴で車でやってきた。
弁当と簡易テントとつめたい飲み物を持参してくれた。
少し風が吹いた水面にはトンボがスイスイと行き来しているが、ときどき鬼ヤンマ、銀ヤンマもやってきた。
今日の孫と同じ年頃に、このトンボ釣りをした少年の遠い夏の日の記憶が蘇った。
ヘラ鮒は逃がして、短竿玉浮き仕掛けで釣った2匹の鯉とビンダルという捕魚道具で取った小魚とともに持ち帰ることにした。

我が家には池がある。
勿論、ポン、ポンと下駄履きで手をたたき鯉に餌をやるメジロ御殿のような池ではない。
1・5×7メートルの細長い池で、定年の時、嫁のミキちゃんのお父さんが「オレに作らせてくれ」と言われて作ってもらったポンプ循環式の池だ。
彼は造園師で、ともに孫からみればジイサマなので、二人して孫のために作ったビオトープみたいなものだ。
ここにさきほどの鯉っ子と小魚を放流する。
ここで何年も住んでいるメダカが今年は随分産卵した。
注水口の下には、ぼうふら以下の稚魚がずいぶん泳いでいる。
お祭り金魚(金魚掬い)も五年も立てば体長も15センチになり貫禄と風格さえ出てくる。
彼らは10匹ほどいる。
ほかに子供たちがヌシと名付けた30センチほどの鯉や大小の小魚たちもいる。

 待望のファミリーバーベキューがはじまった。
火起こしは娘婿のヒロオさんとあとからやってきた中2の孫が担当。 焼き物の準備はジッタンの担当。
イカは斜めに切り目を入れて一枚は身を二センチ幅に切り、もう一枚のほうは丸ごと焼く。
イカ味噌は塩と酒を少し入れ、ゲソを細かく切ってかき回す。
即席の塩辛は酒の肴には乙な味だ。
収穫したジャガイモは茹でてから焼き、味噌マヨで食す。
ホタテは一個100円の殻付きのものを片っ端から焼き、口が開くと汁をこばさないように裏を返して、酒と醤油をポトリ。
子供らに人気のフランクフルトは斜めに切りこみを入れたほうを下にして焼く。ケチャップとマスタードのソースが人気。
車エビの姿焼きは女子衆に大好評。
焼肉は男衆に人気でビールが美味い。
タマネギ、ナス、ピーマンなどは畑の自作のものを使った。
菜園のスイカはタライにぶっかき氷と水をいれ冷やして食べた。

黄昏が迫り、遠くの花火が始まるまで、ワイワイするなかで今年幼稚園年少組みの花菜ちゃんが膝にやってきた。
5人の孫の中、ただ一人の女の子だ。
 「ジッタン だいじなおはなしをしてあげようか」
「うん」
 「どうろにごみをすてるのはだめなのよ。きたなくなるでしょ」
「はい」
 「おやまにね。ごみをすてるときれいなおやまがだめになるでしょ。だから捨ててはダメなの」
「だれが言ったの」
「まつもとせんせいがいったの」
4歳女児には、いつもおままごとの相手にさせられているが、今日の環境訓話は意外だった。

 子供たちの手花火がはじまるなか東武動物公園の遠花火もはじまった。
景気が悪いから、土浦の花火も今年は短縮すると聞いてさびしい思いをしていたので、この花火はうれしかった。

リタイア五年。
あと5年無事に生きたとして、今日の孫たちはいくつになるか。
いちばん上は、もう高校を卒業している勘定になる。
年年歳歳。
変らないようで、人も花も変わっていく。
それもまた人生。
遠い花火と手花火とを見ながら、まずこのひと夏の小さな幸せにホロッと酔いがまわってきた。



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