ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

〔09 暮らし雑感〕 チビ犬との別れ

2009年07月24日 | 2009 暮らし雑感
19年間、庭の一角にちいさな居を構えていた、飼犬のチビが昇天となった。
19年という犬齢は人間社会では100歳以上の年齢に相当するらしい。
ただ、ここ数年はチビの陰嚢がなぜか大きく膨らみ、タヌキの八畳敷のようなものになってきた。
排せい機能が弱っていることが原因らしいので、手術ということも考えたが、高齢でその後の体力落ちを懸念した。
ただ、大きなものをぶらぶらさせながら一緒に散歩していると人目につく。
女子中学生などはクスクス笑って駆け出す。  
また散歩の洋犬のチビどもがキャンキャンと見下すように吠えるのも癪に障った。
チビは柴犬の雑種。

19年前に近所のあちこちの農家で「コラッ!」と追われていた子犬を目撃した。
我が家ではすでに「ゴロ」という先輩の野良を飼い犬としていたので可哀想には思ったがさりとてそれ以上の関心はなかった。
ところが、ある日、犬小屋に2匹が並んで外を見ている。
ゴロは牡犬だからテリトリーを守って威嚇するのがふつうなのだろうが、ふだんはよく吠えるのに、叫んだのは誰も聞いていない。
どういうわけか、このチビッ子犬が気にいって一宿の宿を貸したらしい。
「コラッ!」と叫ぶと脱兎のようにチビは飛び出してどこかに消えた。
翌朝見ると、やはり2匹が並んで顔を出している。
そういうことが繰り返されたが、やはり2匹を飼うことはできない。当時は野良猫の二代目も我が家の家族になっている。

夜、娘の車にチビを乗せ、二駅離れたところに食べ物つきで置いてきた。
「いい人に拾ってもらえよ」と別れた。
その翌朝、「ワンッ!」と玄関前で鳴く声がする。
ゴロの野太い声とは違う。 出て見ると、玄関前に正座の形でチビがいる。
尻尾も振っている。
「どうです。帰ってきました。飼ってください、お願いしますよ」という得意満面な表情をしている。
呆れて、無言のままゴロを散歩に連れ出すと、チビも当然のようにぴったり私の脚横について歩き出した。  
ちょうど、兄の心臓大手術が数日後に迫っていたときでもあり、いやな思いはこれ以上はしたくない、そうした暗示もあって「よし、飼おう」と決めた。

 2匹は仲がよかった。
散歩から帰るとじゃれ合いのレスリングみたいなことをして運動をする。
時によってゴロが本気で噛み付くこともあったが、キャンと鳴いて必ずチビは降参した。
決して先達には逆らわなかった。
2匹とも、菜園のミニトマトが大好きだった。
収穫時期には、そちらに出向くだけで両方とも吠え、チビは放るとそれを空中でパクリと捉えて食べるのがたいへん上手かった。  犬とは番犬と思っていたから、犬の食事は人間の食事の残りを犬用に食味をつけ、塩分控え目にして与えた。
ゴロが亡くなったあとは犬の缶詰を与えるようにしたが、なんだかドロっとした得体の知れないのがあったりして時にはプイと横を向くことがある。
軽くポカッと頭を叩き、「贅沢は敵だ」などとつぶやきながら猫缶に変えることもあった。
肉よりマグロなどの缶詰に飛びつくこともあった。
今夏、例のぶらぶら歩きの中で、途中でその重みからか路端でへたり込んでしまうことがたびたび起こった。
あまり歩けなくなって1年前の三分の1のコースになってしまう。
獣医に相談して、手術を決めた。

退院して戻ってくると、かの八畳敷は小さく萎縮していた。
手術は成功したが、あまり吠えない。食欲もない。
入退院をしばらくくり返した。
戻ってからは、寝たきりが多くなったが、小用を知らせるので立たせると自分の脚で立ちその用を足す。
ただ人でいえば床づれが多くなり、後脚は目だって痩せてきた。ソーセージやハムなどを煮てやると、喜んで食べる。水も飲む。
だがその後に、大きいほうがなかなか出ない。
尻尾をあげて、唸りながら、りきむのだが小さいのがポトリとするだけ。
腸閉塞も心配になり、獣医が残した水のみ用の注射器があったのでこれを使って浣腸をしてやった。  
子供時分に、おふくろさんがときどきやってくれたことを思い出し、薄い微温塩湯の液を作り挿入してやった。
そのあと、結果がよかったのでホッとした。
ときどき外にだして芝生の上を歩かせたが、後脚も弱っているせいもありぐるぐると同じところを廻ってしまう。
そしてドタリと倒れたり、くずれるように横たわってしまう。
目も悪くなってきているらしい。
巡回の獣医は「よう頑張るな。大変なものだ」と言っていた。
だが、食べ物を受け付けなくなり、再度の入院、点滴治療となったが今回は臨終の知らせを受けた。

 考えてみると猫のマックも100歳を越えていた。
ゴロも長寿犬として表彰された。
そしてチビも100歳で往生した。
同居の母は90歳で逝ったが、高齢家族はそろって元気だった。 この19年とはなんだったのだろう。
この間に、子供たちは結婚して巣立ち、孫は5人に増えたが母は逝った。
我が家は二人だけの生活に戻った。
外から帰って犬小屋を見ると、そこから2匹が顔を出してくるというような感じがする。
そうか、おまえらはもういないのか。
あの世で仲良くやれよ。俺たちも当分達者でやるよ。
庭の池を覗くと、ぼうふらよりも小さいメダカが泳いでいる。
ここでは今夏、新たに生まれてきた命がある。
今日も暑い。
流れ行く夕焼け雲をしばらく眺めた。

■■ ジッタン・メモ ■■

 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チビちゃん (ゆきの母)
2009-07-24 21:58:23
恐らくgooブログにコメント
をするのは初めてかも解りません。
何だか、惹き付けられて読ませて
頂きました。
感動致しました。
動物も飼い主を選べないと思って
居たのですが、チビちゃんは、こちらの
お家を選んで来た様に感じました。
19才。。。大往生でしょうか。
羨ましく感じます。
19年、って長いですね。。。

チビちゃんのご冥福をお祈り申し上げます。

乱文で失礼申し上げました。
返信する
何だかよかったよ (チョコ8才の飼い主)
2009-10-20 23:19:39
犬って家族なんだよ 長生きしてくれたのは 貴方が好きだったし,それだけ愛があったんだと思います 犬が亡くなり,パニックになったり泣いたりするけど,どうせ私達だって死ぬしたいした事ない 貴方の犬を看取る姿勢は素晴らしいです ご冥福をお祈り致します
返信する

コメントを投稿