ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

〔09 七五の読後〕 【川柳 江戸女の一生】渡辺 信一郎 太平書屋

2009年10月26日 | 〔09 七五の読後〕
【川柳 江戸女の一生】渡辺 信一郎 太平書屋

この本は、昭和60年の川柳雑誌に連載したものをまとめたられたもので 江戸の女の「産湯から湯灌までの50年が如実に把握できると思う」と著者のあとがきにある。
ひとつひとつ川柳句の出典が細かく明記されているのもこの本の特徴となっている。
紹介された句から艶句や破礼句らしきものは自身のメモとし、 早歩きでその半生の句を抜書きにした。

★ 叩かれず 赤子の顔の蚊のにくさ
親ならばこその体験。よくわかる。
まして女の赤ちゃんだ。

★ 小便を申し送りに子を渡し
 「まだ、出てませんからね よろしく」若き日のカミサンが、同居のおふくろに言っていた場面を思い出した。

★ 転んだ子 起こされるまで待っている  
我が家でもそういうことがあった。

★ 屁一つで 無勝負になるにらめっこ
どちらかが、ぷーをして大笑い。
まして、年頃になれば女児は木の葉が落ちても笑うという。
でも、このニラメッコ遊びはもうなくなってしまったか。

■■ 寺小屋

● 寺入りは 毎年二月の初午に
天保時代の東都歳時記によると
 「此日、小児手習読書の師匠へ入門せしむる者多し」
とある。
 寛保延 江戸風俗誌によれば
 「大安売の師、諸々に多くなりし故、何様の軽き者の子供も、寺入なりやすくなりし故、今は無筆は稀也」
つまり、江戸の中期前は無筆の者も多かった。
宝暦以後は寺小屋もたくさんできた。
お師匠様に酒肴もいらず、謝礼は軽く済んだ。
これといった礼式作法もないから心安く済んで、寺小屋は一挙に広まったようだ。

★ 師匠様 かしくと以上別におき
手紙の結語に使われる「かしく」は女。
「以上」は男。
この句、男女七歳にして席を同じうせず を地でいっている。
かって子供たちへの叱言で、ジッタンはなぜ最後に「以上」と言ったのかと娘に言われたことがある。
先週17日のBS歌番組を見ていたら冬景色を歌った菅原洋一さんが歌の説明をして最後に 「以上、オワリッ!」とやっていた。
この人も連綿としたこの言葉で育ったわけだ。
当時の生き生きとした寺小屋の様子は油井宏子の「「古文書はこんなに面白い」に活写されている。
これによれば、最盛期の寺小屋は全国で1万5000を数えたという。
小さな国のあちこちであったこれらの寺小屋が、明治以後の教育立国を作ったわけだ。
やはり基本は読み、書き、算盤か。

★ 初めてのお客に赤の飯を焚き
幼稚園の頃だったと思うが、裏の長屋で遊んでいたら突然お赤飯をご馳走になったことがあった。
「何のお祝い」と聞いたら「いいの、いいの、男の子は黙って食べればいいの」とおばあさんに言われた。
その家には15くらいのお姉さんがいた。
今、思い起こすとあの赤飯、はじめての「お客」さまだったのかも知れない。

★ 泥水へおぼこ沈めるむごい親
ボラの幼名をおぼこという。
成魚トドにならない内に芸界へ身売りをさせた親もいた。
貧すればの事情もあったろう。
身を売って五十両を工面した娘の金を使い、左官屋が、身投げ男を救う「文七元結」の人情噺がふと浮かんだ。

★ 箱入りを隣の息子封を切り
大切な箱入り娘に虫がついてはいけないのだ。
ましてや封を切るなどは、あってはならないことなのだ。

★ 寄るなると是でつくよとむすめいい
針仕事中のいやな男の口説きに対抗。

★ お袋のたしになる頃口が降り
家事ができるころになると貰われ口がかかる。
結婚話も近くなる。

★ 姑は来年死ぬと仲人いひ
★ 嫁の年すてがねほどは嘘をつき
こういう時分になると町内の婆さんが仲人で登場。
舌先三寸、嘘八百で両者をつなぐ。
 「すてがね」は大晦日でつく鐘の直前に3つほどつくのを言ったそうで、まあ3つくらいのさば読みは猶予の範囲だったかも。

★ そらっ茶を飲み飲み見たり見られたり
仲人演出の見合い風景。

★ 大丸で値段を聞くのはづかしさ
ウエディングドレスの値踏みだ。
大丸は当時有名な新参呉服店。(注)

★ 蝶々の酒を露ほど嫁は呑み
いよいよ結婚。三々九度の盃事。今の嫁ならグイッ。

★ 真っ黒なぷくぷくをするはずかしさ
今の時代からみればこの句はわかりずらい。
江戸にあっては白い歯の女は花柳界の芸者であって、堅気の新妻は眉を剃り落として歯はお歯黒だった。
著者は「映画のTV時代にはお歯黒の女性は登場しない。時代のリアリズムに全く欠ける」と嘆いた。 同感だ。
最近のNHKの大河時代劇なども女の視点で書かれるドラマがやたらに多く、絵空事と思わせるものも取上げられ時代の再現に忠実であるとは思えない。
ことばつかいも嘘っぽいから私は嫌だ。
おはぐろを漢字変換すると「鉄漿」の字が出てくる。「かね」ともいうそうだが、歯を黒く染める液を表すそうだ。
これで「ぷくぷく」して一人前扱いとなるから女の元服か。

 ★ 気に入れば気にいったとて気にいらず
新世帯もばら色というわけにもいかない。
お舅さんも姑も同居している。
お舅のほうはやさしいが姑のほうは、倅が嫁にぞっこんなのが「気にいらず」
シロモノ家電もなくたいへんだったろうが、やがてこの嫁も母になり姑となる。

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