「24時間、戦えますか?」・・・バブル経済を戦ってきた一戦士としては、社員や下請企業、家族を犠牲にしなければビジネス戦争には勝てない・・・そう信じて仕事をしてきた小職・・・。
多少ブラック企業でも、単身赴任でも、長時間労働でも、休日勤務だって、何の疑問も持たず、ただただ働き続けた日々・・・。
そんな中、坂本光司が示したコンセプトが「日本でいちばん大切にしたい会社」。
当初は、そんなの無理だと思っていました。
働き方改革やワークライフバランス・・・時代の進化とともに、最低でも一定の条件を満たさなければ、誰も人が来ない会社、人がどんどん辞める会社、成果を出せない会社になってしまいます。
日本でいちばん大切にしたい会社がわかる100の指標
坂本光司&坂本光司研究室 朝日新書 780円+税
「日本でいちばん大切にしたい会社」がベストセラーになった当時法政大学教授だった坂本さん。
この一冊は、日本の企業7000社以上の調査から導き出された結果を、指標化したものを解説したもの。
自己チェックによる100点満点での採点がすることが出来ます。
巻頭に3社の事例が出ていますが、80点、89点、85点。
優良企業と言われている大企業でも、50点をとるのはなかなか難しいと思います。
坂本さんが、「日本でいちばん大切にしたい会社」の中で特に強調するのが、人間本位主義経営。
前著からも、組織に関わる全ての人々の中で、5人の幸せを追及、実現しなければならないと説きます。
- 社員とその家族
- 仕入れ先や協力企業等で働く社外社員とその家族
- 現在顧客と未来顧客
- 地域住民、とりわけ障がい者や高齢者等の社会的弱者
- 出資者や関係機関
「その家族」が入っていること、「未来顧客」が入っていること・・・出資者や関係機関等のステークホルダーは最後の5番目になっているということ。まさに、人間本位主義経営が柱になっています。
BS、PL、CS等の経営分析指標ではなく、極めて定性的分析のアプローチをとる坂本さんの研究。大半が中小企業・・・。
限られた経営資源の中で、会社という公器を活用し、ゴーイングコンサーンとして社会に貢献していかなければ、存続は難しい中小企業。
そのサバイバルのためのヒント、方向性が、この100の指標の中に組み込まれています。
◆目次
序章 業績も良く、100の指標の点数もいい会社の実例
1章 社員に関する指標
2章 社外社員に関する指標
3章 現在顧客と未来顧客に関する指標
4章 高齢者・女性・障がい者に関する指標
5章 経営者に関する指標
6章 社員の確保・育成・評価に関する指標
7章 福利厚生等に関する指標
8章 社会貢献活動に関する指標
9章 中長期経営計画に関する指標
10章 経営全般に関する指標
10の指標は、10の問いで構成されており、計100個。
例えば、「経営者に関する指標」では、次の10の問いがあります。
- 経営者は常に経営理念の体現者としての言動をしている
- 経営者は社内のだれよりも勉強家、努力家である
- 不況時には経営者が社内の誰よりも率先して大幅に役員報酬を削減する
- 経営者は自らの引退時期を決めている
- 経営者は意思疎通をはかるため、全社員とのノミュニケーションに積極的に参加している。
- 事業承継のため、おおむね10年計画で準備をする
- 経営者は常に耳の痛い話や情報を聞いたり、入手する場や仕組みを持っている
- 後継者の選定に関し、社内外に的確な意見を行ってくれる相談者がいる
- 経営者または部門の責任者は、全社員の名前はもとより、その家族や生活状況をおおむね知っている
- 公認会計士、税理士、経営コンサルタント、社会保険労務士、弁護士等の経営専門家との固有名詞レベルでの人的ネットワークがある
ステークホルダーが、みんな幸せになる会社・・・今や、そんな会社しか生き残れない時代です。
経営者、人事労務担当者、必読の一冊だと思います。