能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

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働き方改革法 70年ぶりに労働法が大改正 少ない人事部スタッフで、このリーガルリスクを突破できるのか?

2019年11月04日 | マネジメント

いや~大変なことになりました。
政府が進める働き方改革実行計画。


理念や意義はよく理解できますが、これを実務対応するためには本当に大変だと思います。
最高裁判決の長澤運輸事件やハマキョウレックス事件ぐらいのレベル感でいたのですが、よくよく調べてみると全く異なります。


社労士会の勉強会や専門書を読んでいるのですが、働き方改革法の実務対応は、具体的な展開方法がまだまだ未整備で、大丈夫なのかなあ?という危機感を持っています。


すでに、大企業を中心に年休の最低5日間付与、高度プロフェッショナル制度、産業医の権限強化、勤務間インターバルの努力義務、時間外労働法上限(原則1か月45時間、1年360時間)が義務付けられています。
大企業といっても基本的には300名を超える企業ですので、イメージ的には中堅・中小企業が大半。人事労務スタッフの人員も少なく、本当に大丈夫なのでしょうか?


法的には絶対必要な36協定でさえ不備が目立つ中小企業・・・。
「有給を5日間もあたえたら、会社がつぶれちゃうよ」
「年間360時間の残業規制・・・残業ができなくなったら、取引先から切られちゃうよ」
「残業代がなくなったら家のローンが返せないよ」
社長や従業員からの声が聞こえてきます・・・。


もっとたいへんなのは、来年2020年4月からは、中小企業の時間外労働法的上限と、大企業の同一労働同一賃金が施行されます。


くせ者(?)なのが、同一労働同一賃金。
厚労省では、最近になって「同一労働同一賃金」という表現から、「不合理な格差是正」という用語を多く使っています。
正規非正規の格差をスピーディに解決したいという意欲がモリモリです。

雇用対策法を大幅に衣替えし、労働施策推進法へ。

政府の意気込みが伝わってきます。


パートタイマー、有期雇用労働者について、いわゆる正社員との格差是正のための法的整備を進めています。
正規と非正規の待遇差の内容・理由の説明義務・・・正規労働者の待遇を開示する義務があること、しかも書面で!とあります。
パートさんが社長に対して、「なぜ私の賃金は、正社員のAさんと同じ仕事をしているのに、半分しかしかないんですか?ボーナスはもらえず、一時金3万円しかもらえないんですか?」という質問があった場合、就業規則や書面できちんと説明しなければなりません。
そのためには、規程類をしっかり整備し、職務をランクづけしたり、人事考課制度の整備まで踏み込まなければなりません。


中小企業で、そこまで出来るところは、どれだけあるのか?
かなり心配です。


多くの中小企業では、給与規程や賃金規程は、かなりファジーで、人事考課、査定は社長が鉛筆舐め舐めアタマの中で松竹梅をつけているというのが現状です。


そんな中、パートタイマーや有期雇用社員から、質問、問い合わせがあったら・・・。
「ごめんなさい。今から数年かけて書類を整備するから許してね。」
と説明するしかありません(苦笑)。


紛争処理は基本的には企業内で行うべしということですが、それが出来ないから困っているわけです。
ADRといった「あっせん」が今までの主流でしたが、今回の法改正では「調停」というワードで出てきています。
「あっせん」と「調停」では強制力が全く異なっており、使用者、事業主にとっては大きなリーガルリスクを抱えることになります。

これから数年間、少子高齢化により、人手不足倒産や事情承継者・後継者の不在倒産が増えてくると思いますが、それと同時に働き方改革法に対応できず解散・倒産という中小企業が増えてくると思います。


思い起こせば、小泉政権の時、竹中平蔵大臣が雇用の多様化を推進し、派遣社員やパートなどの非正規社員が増加、労働人口の1/3が非正規雇用になりました。


それを今回の働き方改革法の施行で是正しようというのが、今回の政府の動き。
その理念や考え方やコンセプトもよく理解できます。
厚労省からは各種のガイドラインや指針も示されています。


しかしながら、人事労務現場での実務力、マンパワー、人員からすると、かなり厳しい状況だと思います。
そのうち、地裁あたりで若手の判事が見せしめ判決を出して、人事労務担当者をビビらせるということも考えられます。

働き方改革は必要ですし、進めていかなければならない施策。
アメリカやドイツでは、30年前に改革を終わらせています。
今回の働く方改革法に対応、適応できない会社にはヒトが集まってこないでしょうし、退職する社員も続出すると思います。
「ヒトを大切にしない企業は、自然淘汰で潰してもいい」・・・それが働き方改革の狙いだと思います。


生産性が低い元凶と最近責められている中小企業・・・。
たくさんの人が働いている中小企業を守る・・・特定社労士として、ライフワークになるような気がしています。


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