能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

歯科医院のマーケティング 歯科医さんも競争の時代に入ってきました

2015年05月24日 | マーケティング

商店街を歩いていると、店舗の前でお揃いのオレンジ色のTシャツを着た女性が、チラシを配布中。

「中を、ご覧になりませんか?」

チラシをいただくと、「内覧会(見学会)のお知らせ」というメッセージ。

シュガーレスのデンタルグミが一つ付いています。

マンションのショールームかな、と思ったところ、実は、歯科医院の新規開業。

スゴイ時代になったものです。

ここの院長さんは、なかなかのマーケティングセンスの持ち主です。

歯科業界のコンサルタントの指導が入っているのかもしれません。

歯科医院を専門とした経営コンサルティングが成り立つ時代。

歯科業界も、たいへんな時代・・・競争の時代になっています。

 

高校時代の友人が歯科医院を経営しているのですが、彼に聞いたところ、「開業には2億円かかる。競争も厳しいよ。」とのこと。

昔は、歯科医と言えば、お金持ち・・・というイメージだったのですが、今は、事情が相当違うようです。

大学の歯学部を出て国家試験に合格・・・新規で開業した場合、私立大学歯学部だと学費もろもろで5000万円、開業費用で2億円・・・すごい投資額。

これを回収しようと思えば、20年かかるのでは???


以前であれば、その歯科医の評判や地域住民の紹介などで、なんとか経営も成り立ったのですが、今では歯科医院の林立、競合激化により、医院を存続、成長させることが難しくなっているようです。

歯科医院も、まさに、マーケティングの時代に入ったようです。

 

歯科医院のマーケティングという観点から、3つの道具を使っての観点を整理してみました。

 

1.  3C分析

マーケティングの基本の「キ」である3C分析。

「自社(カンパニー)」「顧客(カスタマー)」「競合(コンペティター)」の頭文字をとったものです。

「自社(カンパニー)」

自院の強み、専門性、診療技術、スタッフなどを多面的に整理していくことが出発点です。

「顧客(カスタマー)」

地域特性の分析です。

そのエリアには、子どもが多いのか、サラリーマンが多いのか、高齢者が多いのか等の分析です。区役所などの統計データを集めて分析します。所得なども重要な要素です。

お金持ちやセレブだけを顧客とすることも考えられます。

「競合(コンペティター)」

そのエリアに、どのくらいの歯科医院があるかを調査します。

大型歯科医院なのか、個人経営なのか、駐車場のありなし等も調べます。

SWOT分析という手法もあるのですが、初めてだと分類を誤る可能性が高いため、まずは3C分析がお勧めです。

 

2.  4P分析

「製品・サービス(product)」、「価格(place」、「流通・立地(place)」、「プロモーション(promotion)」の頭文字をとった分析です。

「製品・サービス(product)」

自医院が提供できるサービスを洗い出していきます。

小児歯科や矯正歯科、口内外科なども含めた専門サービスと、そのレベルを確認していきます。

「価格(place」

診療報酬が決められているので、価格での差異化は難しいと思います。

しかしながら、保険外の特別診療などで客単価の向上も考えられます。

「流通・立地(place)」

小売業同様、立地は重要な要素です。

医院前の通行量や地域の人口、駅や幹線道路からのアクセス、駐車場や駐輪場の有無など。

「プロモーション(promotion)」

マス媒体での広告宣伝は費用対効果の点、広告規制の点から難しいと思います。

インターネットやソーシャルネットワークの活用、自医院まわりのCI(コーポレート・アイデンティティ)の確立、チラシやミニ新聞の発行などが考えられます。

今では、ネットやスマホで調べてからの来院というパターンが多いため、アクセスのしやすさ、見やすさ等が大切になります。

場合によっては、SEO対策も必要です。

また、院長によるブログ開設、地場のケーブルテレビへの出演等が出来ればベストです。

そのほか、お伺い葉書の定期発送、メールによる相談受付なども、よく行われています。

 

3.  STP分析

マーケティングプランニングの最終段階であるSTP分析。

顧客の分析です。

「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の頭文字をとったものです。

「セグメンテーション」

そのエリアの人口動態や年齢別、男女別、職業別、ライフスタイル別等の分析から得られた情報から、顧客の分析をしていきます。

「ターゲティング」

セグメンテーションで得られた分類の中から、自医院の強み・専門性を加味しながら、標的とする顧客を絞り込んでいきます。

「子ども(0歳~6歳)を持つ30歳の主婦」といった顧客定義を行います。

「ポジショニング」

ターゲティングした顧客に対して訴求するために、自医院のコンセプト・・・一言で言えるキャッチフレーズにまとめ上げます。

「子ども(0歳~6歳)を持つ30歳の主婦」というターゲットであれば、「キッズとともに診療できる明るいデンタルクリニック」という感じです。

この場合、医院内でのキッズコーナーの設置、クマやウサギといったキャラクターやぬいぐるみの導入、広めの駐車場や駐輪場の準備、バリアフリー設計、ベビーカーや車いす対応などが求められます。

 

ただし、マーケティングで成功しても、最終的には、リピーター、紹介客をいかに確保するかということ。

当然ですが、技術、腕、サービス力が土台となります。

厳しい歯科医院業界・・・サバイバルに向けた良質なサービス競争をしていただきたいものです。


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