能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

島田紳助&松本人志「哲学」 お笑いの頂点を極めた二人の思想は確固たる信念と豊富な体験の上から出てきたものだと思います

2024年05月04日 | 本と雑誌

友人から面白い本をいただきました。

連休の時間を利用して読んでみました。

哲学

島田紳助&松本人志著  幻冬舎刊  1300円+税

 

いろいろな出来事があり、今ではテレビに出ていない島田紳助さんと松本人志さん。

奥付は、2002年。

お二人の絶頂期に書かれた一冊です(口述筆記なのかもしれません)。

二人の笑いの哲学、人生哲学について、往復書簡のような形でまとめられています。

解説(邂逅)を書いた石川拓治さんの文章も秀逸で楽しく読むことが出来ました。

家族思いの紳助さん、孤独を愛する人志さん・・・。

お笑いの頂点を極めたお二人の思想は、確固たる信念の上から出てきたものだと思った次第です。

 

島田紳助さんのパート

そろそろ自分の死に際のことを考え始めている

ダウンタウンのテンポは絵でいったらピカソ

誰かにちょっと負けてるなあと思ったときは、だいぶ負けている

ツッコミは努力で上達するものだが、ボケの才能はそうはいかない

松本さんには、さんまのような華がない

笑いの部分で、大衆にウケるよう、自分から歩み寄るつもりはない

ビートたけしさんはいつも、僕の先を歩いている

僕は3人の子どもたちに、自分がへこんでいることも包み隠さず話す

心の豊かさのためには、お金は必要なものだ

この国ではコケたらあかん。この国でコケた奴が悪い

常に最悪のことを考えて行動している

さあ、大人になった。何になろう!(年賀状のフレーズ)

 

松本人志さんのパート

ダウンタウンは紳助竜介のコピーだった

僕は人の話を聞いていないことが多い

芸人は頂上にいる者同士としてしか喋りあわない

そもそもお笑いというのは、作ったものをつぶすという作業である

浜田はものすごく図太くて、僕はものすごく繊細

自分が理想の女に出会うことは一生無理

もし仮に結婚して、子どもが出来たとしても、たぶん僕は孤独だろう

「もうあいつには勝てんな」と他の芸人に言わせたい

 

お二人とも、お笑いのテッペンを目指して見えない所で物凄い努力をされてきたことが、よく分かりました。

でも、漫才界もテレビ界も芸能界も、代替、かわりの人材はいくらでもいるということ。

祇園精舎の鐘の声・・・平家物語を思い出します。

会社や社会でも同じことですね。

それを考えると、ちょっとむなしさを覚えました(涙)。

生き馬の目を抜く芸能界・・・お二人の言葉にはチカラがありました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うさんくさい「啓発」の言葉 神戸郁人さんの新刊本・・・「意識高い」系の語句に惑わされてはいけない!

2024年05月01日 | 本と雑誌

仕事をしていて、ちょっと違和感あるなあと思いながら、大勢に流されて、ついつい使ってしまう言葉があります。

「自己啓発」「リーダーシップ」「人財」「リスキリング」「心理的安全性」・・・。

組織や会社にはもう余裕がない・・・だからこれからは、あなたの自己責任で能力開発してくださいね。

成果を出せば、ちゃんと処遇しますから・・・という経営の理屈が透けて見えます。

上から目線、労働力を搾取する側の言葉というニュアンスがあるからなのでしょうか?

 

書店で見つけた一冊の本。

タイトルがとても気になり購入しました。

うさんくさい「啓発」の言葉  人「財」って誰のことですか

神戸郁人著  朝日選書  870円+税

 

著者は、共同通信社の記者。

同書では、自分自身の学生時代やアルバイト時代の困ったコミュニケーション体験などを交えた事例を織り交ぜながら進んでいきます。

 

「人材」ではなくて「人財」

「頑張る」が「顔晴る」に

「仕事」が「志事」に

「企業」から「輝業」に

「最高」から「最幸」に・・・

新語や造語は、なぜ生まれてくるのか?を著者は解き明かしていきます。

雇用者や資本家により体よく労働力を搾取する言葉ではないのか?という命題の答えを探索していきます。

一見、魅力的な造語も、その背景をよく考えるべし、と指摘します。

そのとおりだと思います。

堤美果さんや三木那由他さんなど7人の専門家、学者へのインタビューが取り上げられています。

新たな気づきを与えてくれる一冊です。

哲学者ヴィトゲンシュタインの言語ゲームの現代版と言った感じでしょうか?

今一度、立ち止まって考える際に、役立つ一冊だと思います。

 

同書の帯、著者の「啓発ことば」についてのメッセージが出ています。

「やってる感の演出」

「言葉遊びの先にある罠」

「意識高めの語句に惑わされてはいけない!」


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ココ・シャネルという生き方 なぜ、彼女はウェディングドレスを拒んだのか?山口路子さんの納得のいく答え

2024年04月30日 | 本と雑誌

ココ・シャネル・・・パリのファッション・リーダーとして普遍的な美を創造したデザイナーであり、ビジネスウーマン。

今でも、伝記や映画としてたくさんの作品を見ることが出来ます。

ココ・シャネルという生き方

山口路子著  新人物文庫刊 667円+税

 

書棚の奥から出てきた一冊・・・改めて読み直してみました。

奥付は2009年。

シャネル研究家である山口路子さんが書かれた一冊です。

著者は世界史講師やアートサロン経営などを経て2001年に軽井沢に移住。

シャネル的な生き方をされている女性だと思います。

同書では、序章「なぜ、彼女はウェディングドレスを拒んだのか?」というテーゼを投げかけ、終章でその答えを示しています。

 

ココ・シャネルは、1883年8月19日、フランスの田舎ソーミュールに誕生。

父親が働かないといった複雑な家庭環境のため、12歳で孤児院にあずけられます。

自由、自立を求めて、シャネルは立ち上がります。

華やかな成功、恋多き女・・・。

そして、1971年1月10日、パリのホテルリッツの一室で亡くなります。

享年87歳・・・仕事と恋愛に生きた恋多き女性でした。

シャネルが求めたのは「エレガンス」。

自分が着たい服がない・・・だから自分が創るというのが基本スタンス。

シャネルスーツ、マリンルック、ツィード、アクセサリー、リップスティック、ショルダーバッグ・・・彼女が初めて世の送り出し、女性たちの支持を集めたものです。

モードではなく、スタイルを創ることがシャネルの信条でした。

彼女は生涯結婚することはありませんでしたが、いつも一流の男たちに取り囲まれていました。

イギリス貴族、詩人、作家、音楽家・・・。

愛する男たちの着ている服を羽織ってみて、そこから新たなファッションスタイルを作り出すことが多々ありました。

同書では、シャネルの遺した言葉が散りばめられています。

強い女、傲慢・・・晩年は批判的な言葉にさらされたシャネルでした。

 

本名はガブリエル。

若き日にカフェでサブの歌手として歌っていた時の持ち歌「トロカデロでココを見たのは誰?」。

この歌は当時バリで流行っており、ココは歌の中に出てくる犬の名前。

カフェに来るオジサンたちの掛け声・・・ここから「ココ」と呼ばれるようになったそうです。

25歳でパリに出てきて、最初に起業したのは帽子店でした。

そこから、ワークライフバランスならぬワークワークアンバランスで世界の頂点に駆け上がっていきます。

 

著者は、分かりやすい短いフレーズでシャネルの遺したコンセプトをまとめています。

今に生きる女性たちへのメッセージになると思います。

 

真似される女になる

恋愛のあとは友情を残す

自分の実力は自分で確かめる

「あたしは違う」と信じ続ける

仕事には、お金よりずっと強い味わいがある

欠点を強調して個性とする

あたしは人を判断するのに、お金の使い方で見分けることにしている

お金は効果的に、かつ上品に使う

人との距離を保つ

好きな人だけと遊ぶ

コピーされることは賞賛と愛を受け取ること

結婚に依存する女に未来はない

甘えられる男には思いっきり甘える

生きている実感を手に入れる

あたしはシャネルスーツを2着持っている。この2着であたしはいつもちゃんとした格好をしていられる。これがシャネルというものだ

あたしは、何より、嫌いなものを作らない

つねに除去すること。つけたしは絶対にいけない

自分自身のスタイルを持つ

愛されなさい。本来女は男に愛されてこそ幸せなのだ。男に愛されない女など何の価値もない。老若にかかわらず、女の幸せは愛されることであり、愛さなければ終わり。

化粧は、他の人のためにするのではなく、自分のため

仕事のためには、すべてを犠牲にした。恋でさえ犠牲にした

かけがえのない人間であるためには、人と違っていなければならない

規格品の人生を歩んではいけない

ココ・シャネル70歳。

パリではシャネルの名前が消え去りそうになっていました。

ディオールをはじめとする新興勢力がモードの先端に躍り出ていました。

シャネルは、再び挑戦します。

パリでの新作発表はマスコミから酷評されたものの、海の向こう米国で高い評価を得て、シャネルは復活します。

そして、シャネルは87歳まで働き続けます。

「なぜ、彼女はウェディングドレスを拒んだのか?」という問い。

生涯、一流の男たちに取り囲まれながら一度も結婚しなかったココ・シャネル。

シャネルコレクションにウェディングドレスはなかったそうです。

著者は、言います。

シャネルは「仕事」と「結婚」した。

そのシンボルが、シャネルスーツだと。

なるほど、疑問が氷解しました。

仕事に生きる!というシャネルの生き様は、とても刺激的で素敵だと思います。

シャネルの仕事グッズがあれば、お守りがわりに持ちたいなあと思った一冊でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伊集院静さん「大人の男の遊び方」・・・遊び人は「粋(いき)」でなければならない・・・人生は自分が思うようにいくものではない

2024年04月27日 | 本と雑誌

世の中には、どう頑張っても足元にも及ばない人がたくさんいます。

若き日、裏千家のお師匠さんから言われたフレーズがあります。

「(お点前しながら)あれなら私でも出来るというのは、その相手が自分よりはるかに先に行っているということ。あの人は凄いというのは、死ぬほど頑張っても決して追いつけないということです」

そんなスゴい人の一人が昨年末に亡くなられた伊集院静さん・・・享年73歳。

仕事はデキる、ダンディ、超一流の遊び人、女性にモテモテ、スポーツ万能・・・。

映画に出てきそうな人生です。

死ぬほど頑張っても絶対追いつけない人です。

書斎の本棚の奥から、伊集院さんの図書が出てきました。

大人の男の遊び方

伊集院静著  双葉文庫  611円+税

 

馬車馬のように働いていた若き日に、何となく憧れて買った一冊だと思います。

著者によると「遊び人」とは、「バカなことを(本気で)する人」とのこと。

そして、「粋(いき)」でなければならないと指摘します。

九鬼周造博士の「いきの構造」を思い出します。

 

目次

序章 遊び人のヤセガマン

第1章 良き酒の飲み方 酒は人生の友である

第2章 人との出逢いは宝

第3章 ゴルフは品格である

第4章 ギャンブルで得るもの、失くすもの

第5章 カジノの遊び方

第6章 麻雀の美しさ

 

伊集院さんは、同書の中で、若い人たちに向けて「遊び」の助言をしています。

「一流の遊びをしてこそ、一流の生き方が出来る」「遊びには流儀があり、流儀やマナーを守ることがダンディズム」と喝破します。

実にカッコいいです。

 

酒は最初の店の隅で飲め

自分の財布に合った店(酒場)を探す

一流ホテルのバーで酒を飲んでいる男は皆一流の男

人との出逢いは宝である

ゴルフを続ければ10年長生きする(城山三郎さん)

ギャンブルには快楽がある・・・海外カジノ、ルーレット、バカラ、ポーカー

ギャンブルは記憶の遊び

人生は自分が思うようにいくものではない

 

伊集院さんは人生を賭けて、作家・作詞家として仕事をし、恋をし大女優の夏目雅子さんや篠ひろ子さんと結婚し、大酒を飲み、いくつものギャンブルをし、そして73歳の時、旅立たれました。

すごい人生です。

「遊び人」という称号も、ご本人は嫌がっていない様子です。

 

伊集院静さん、五木寛之さん、吉行淳之介さん・・・銀座のバーで伝説を遺した作家は、かっこいいです。

銀座のバーで飲んでいる吉行淳之介さんを見て、東郷青児画伯がフランス語でつぶやいたそうです。

「いつ見ても、いい男だね」

これに対して吉行さんは、切り返しました。

「あなたには、かないませんよ」

フランス語で返答したそうです。

 

大先輩を見習い、まずはホテルのバーのカウンターの隅っこでスコッチのオンザロックを飲むことから始めたいと思います(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シン・日本の経営 悲観バイアスを排す・・・ウリケ・シェーデ博士の日本企業へのエール!「舞の海戦略」=「技のデパート」で勝負!

2024年04月23日 | 本と雑誌

円安の関係もあり、日本のGDPランキングは世界第4位に転落・・・。

中国のGDPでは既にダブルスコア・・・。

自信を失いつつある島国ニッポン・・・。

人口減少や国際競争力低下、円安進展や年金財源など前途多難です。

そんな中、米国の経営学者が日本企業、日本経済へのエールを贈る一冊を刊行しました。

シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

ウリケ・シェーデ著 渡部典子訳 日経プレミアシリーズ 1100円+税

 

著者のウリケ・シェーデ博士は、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院教授。

日本の企業戦略、組織戦略などの研究が専門。

一橋大学、日銀で9年以上の在住経験を持たれています。

 

帯には、冨山和彦さんが、「これは21世紀版ジャパン・アズ・ナンバーワンだ」と推奨されています。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とは、米国の社会学者ヴォーゲル博士の書作「Japan as Number One(1979年)」。

バブル経済に浮かれていた日本の経済界に油断のスキを与えた一冊です。

 

目次

第1章 再浮上する日本

第2章 2020年代は変革の絶好の機会である

第3章 舞の海戦略へのヒボット

第4章 優れたシン・日本企業に共通する7P・・・利益、戦略、危機意識、効率性、透明性、リーダーシップ、幸福感

第5章 舞の海戦略の設計

第6章 日本のタイトなカルチャー

第7章 日本の企業カルチャー タイトな国でいかに変革を進めるか

第8章 日本の未来はどうなるか 日本型イノベーションシステムへ

第9章 結論「シン・日本の経営」の出現

 

著者は、長年の日本研究の中からファクトベースで「日本は世間で言われているよりはるかに強い」と指摘します。

 

日本企業はよみがえりつつある

1990年代から2010年代は「失われた時代」ではない。産業構造、企業経営、戦略が大きく変わるシステム転換期である。

遅いのは停滞ではない。遅いのは、「安定」と引き換えに払っている代償である。

グローバルな最先端技術の領域で機敏で賢い企業が新たに出てきた

技術の最前線で競争し飛躍的イノベーション、行動変革へと進む道筋を「舞の海戦略=技のデパート」と呼ぶことにした

「タイトな文化」を持つ日本と、「ルーズな文化」を持つ米国とは異なる

シリコンバレーやユニコーンなどは、日本のイノベーションのお手本にはならない

一番、「お見事!」と思ったのは、「舞の海戦略」=「技のデパート」というネーミングの妙。

巨大な力士・曙や小錦ではなく、舞の海。

そういえば、バブル経済の時、ニッポンのメガバンや総合電器企業が世界の時価総額ランキングに会社名を連ねていました。

今では、トヨタでさえ、トップ10圏外です。

でも、著者は言います。

グローバルな最先端技術の領域で機敏で賢い企業が新たに出てきた。

キーエンス、ファナック、ヒロセ電機、ローム、テルモ、日本トリム、島精機、ユーシン精機、ウシオ電機、ディスコ・・・。

中堅企業ですが、高度技術の専門分野で世界トップシェアを占める企業群です。

これらの企業抜きでグローバルなサプライチェーンを構築することは出来ません。

米国や中国、韓国でもこれらの日本企業に頼らずにバリューチェーンを築くことは不可能です。

これらの企業は、まさに「技のデパート」・・・小さな身体で巨大な相手を倒した舞の海関というわけです。

素敵な提言をしていただいて感謝です・・・日本の未来に勇気と希望を与えていただいたと思います。

「両利きの経営」「再興 ザ・カイシャ」なども担当した訳者の渡部典子さんも、こなれた経営用語、経済用語を使った読みやすい日本語で著者の主張をうまく引き出しています。

 

最終章で著者は、こう締めくくります。

バランス(安定)をとって繁栄するシン・日本・・・日本には希望がある


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造・・・精神科医が書いた人間の「自己家畜化」同一化、同質化が進むホモサピエンス

2024年04月22日 | 本と雑誌

「社畜」という言葉があります。

「会社員」と「家畜」からつくられた造語。

会社にすべてを捧げ、足蹴にされても唾を吐きかけられても会社にすがりつくサラリーパースンを揶揄する言葉です。

何とも切ない自虐的なコトバです。

書店で見つけた新刊本・・・とても面白い一冊に出会いました。

人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造

熊代亨著  ハヤカワ新書刊  1078円(税込)

 

著者は精神科医。

社会適応や若者カルチャーに詳しい現役のお医者さんです。

同書では、「自己家畜化」というワードが出てきます。

自己家畜化とは、イヌやネコのように、人間が生み出した環境の中で先祖より穏やかに、群れやすく進化していく現象とのこと。

社会的動物であるホモサピエンスは、自分自身の意思を曲げてでも集団の中で生きていかなければならない存在です。

同調圧力や空気を読まなければならない難しい社会と言えます。

そこからはみ出ると、面倒な奴として社会からスポイルされることになります。

 

目次

序章 動物としての人間

第1章 自己家畜化とは何か 進化生物学の最前線

第2章 私たちはいつまで野蛮で、いつから文明的なのか

第3章 内面化される家畜精神 人生はコスパか?

第4章 家畜になれない者たち

第5章 これからの生、これからの家畜人

 

著者は、動物園の檻の中にいる動物たちを見て、人間の社会を見るようだと指摘します。

また、東京のような大都市も、まるで大きな動物園・・・その檻の中で人間が入れられているようだと記述します。

確かに、そのとおりだと思います。

さらには、街中にある監視カメラやマイナンバーや顔認証システムで、個別に管理、監視されている現代は、一見自由で、実はそうではない社会と言えます。

安全、安心だけれども、実に住みにくい世の中になったものです。

 

同書では、「進化」という重要用語が出てきます。

急激に変化していく社会、文化、環境に哺乳類である人間はついていけるのか?という投げかけ。

自己家畜化のスピードはスローなため、そこにいろいろな弊害が出てくると指摘します。

今までは無視されていた精神の病やLGBTQが急に提起されたり、ハラスメントの概念が出てきたり・・・本当に大変な世の中になったものです。

 

動物の進化の事例も興味を引きました。

英国の産業革命で工場のばい煙に対応して羽根を白から黒にした蛾。

旧ソ連のギンギツネ研究・・・人間になつくキツネだけをピックアップして交尾を繰り返すと人間好きなペットのようなキツネの集団になる・・・。

家畜化症候群というそうです。

その特徴は次の4点。

1 小型化する

2 野生種より顔が平面的になり平たい顔になる

3 性差が小さくなる

4 脳が小さくなる(体重に対する脳の容量が小さくなる)

 

さらに身体にも変化が出てくる研究結果があります。

1 尾の先端や足先が白くなる。白いぶち模様ができる

2 感情的、情緒的反応が穏やかになる

3 顎のサイズが小さくなる

4 歯が小さくなる

5 耳が折れ曲がりやすくなる

6 脳の成長を遅らせサイズを小さくする

動物の変化、家畜化とはいえ、どこか哺乳類としてのホモサピエンスにも当てはまるような気がします。

小さい頃から、「いい子でいなさい」「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」と育てられる人類の子どもたちは、家畜としての訓練を死ぬまでやらなければなりません。

 

第5章「これからの生、これからの家畜人」ではフーコーの説も取り入れながら、これからの人間社会について提言していきます。

こらからの世の中がユートピアになるのか、ディストピアになるのか?

著者は、悲観シナリオと楽観シナリオの2つで2060年の世界を映し出します。

遺伝子組み換えや人工受精などのテクノロジーが進み、従来の常識ではありえなかった未来が訪れるのは確実です。

進歩に依存しつつ、進歩に警戒の目を向けること、人間にやさしい社会を創り上げていくことの重要性について解説してエンディングとなります。

 

でも、人間は、鉄柵や格子がないだけで、日々の生活は「家畜」と変わらないということなんでしょう。

明治維新の礎を築いた吉田松陰先生は言われています。

「人の禽獣に異なる所以(ゆえん)」は五倫。

父子の親、君臣の義、夫婦りーの別、長幼の序、朋友の信。

単なる家畜にならないようにしたいものです。

 

同書では、医学、自然科学、人文社会科学の観点から、「家畜」としての人間社会をあぶり出していきます。

私的には、今年一番のベスト本になりました。

おすすめの一冊です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脱・中国の虚実 習近平1強が招く混乱・・・日経ビジネス誌の特集 無視できない隣人にどう対応していくべきなのか?

2024年04月09日 | 本と雑誌

コロナ前に、観光で上海に行ったことがあります。

中国経済、絶好調の時期です。

驚きの連続でした。

飛行機が高度を落とし始めると東シナ海には入港を待つ何百隻もの貨物船、羽田空港の10倍はあるであろう巨大な上海国際空港、空港と上海市街地を結ぶ6車線の高速道路、中国には軽自動車はなく全て3ナンバー、その横には20階建ての高層マンションが何百棟も連なっていました・・・。

SFの未来都市を見ているようでした・・・。

人口14億人のこの国には勝てないなあ???

しかしなかせら、現在、「中国の日本化」と言う言葉が現実のものになっています。

1990年代、バブル経済が崩壊した日本の苦悩を繰り返すのではないかという危惧です。

不動産バブルの崩壊により、中国の経済成長に大きくブレーキがかかっています。

デカップリングといわれる米中対立、一帯一路からの離脱、台湾問題、そして何よりも国内での経済悪化が、これまでの勢いを消し去りました。

都市部だけが潤い、いまだに大多数を占める農村部は経済的に豊かでないと言われています。

日経ビジネス誌2024.4.8号の特集は「脱・中国の虚実 習近平1強が招く混乱」。

スローダウンした中国経済の状況をレポートしています。

 

Contents

Part1 外資の直接投資8割減 止まらぬ中国離れ 4つの逆風が原因に

Part2 したたかな中国企業 成長にかける執念

Part3 中国資本に染まる世界のインフラ 狙われた港湾・電力 実行部隊は国有企業

Part4 岐路の中国 戦略転換に動く企業

 

外資企業の中国投資離れが進み、工場や現地法人の撤退が進んでいるようです。

これには、反スパイ法やデータ3法といった当局の規制や検挙も大きく影響しています。

怖くて経済活動できませんものね。

 

習近平国家主席も「高質量発展(質の高い発展、量より質へ)」を打ち出しました。

ただ、習さんは経済、財政などの専門家ではないため、バブル崩壊後の対応は難しいと思います。

また、「もしトラ」「ほぼトラ」から「ほんトラ」、トランプ大統領になれば、高関税、軍事などの対中政策で、中国は更に厳しい状況におかれることになります。

日本としても、親分米国の顔を伺いながら、おそるおそる対中国対応をしていかなければなりません。

地政学的なポジションを冷静に見つめ、経済、外交、文化、軍事など、いやらしいぐらいの手練手札で立ち回らなければなりません。

今の日本には、この難易度の高い外交、経済を回せるヒーロー、ヒロインが待望されています。

 

岸田総理は渡米しバイデン大統領と会談を行いいます。

どんな成果を出していくのか?

注目したいと思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

QRコードは日本の発明品なんですね・・・日経ビジネス誌「有訓無訓」にデンソーウェーブの原昌宏さんが登場

2024年04月06日 | 本と雑誌

毎日のように使っているQRコード。

1994年、デンソー社によって発明されました。

それまでは情報量が限られたバーコードでした。

きっとカンバン方式や自働化といったトヨタ生産システム(TPS)を高度化、効率化するために研究されたんでしょうね。

同社は、QRコードの特許を無料で公開、その普及拡大を目指します。

果実は、QRコード読み取り装置の販売で刈り取っています。

すごい経営戦略です。

毎週、日経ビジネス誌の冒頭を飾る「有訓無訓」。

今週号には、QRコードを開発したデンソーウェーブの原昌宏さんが登場。

現在の肩書は、デンソーウェーブ・エッジプロダクト事業部主席技師。

おそらく定年、再雇用で働いておられるんでしょうね。

QRコード開発は、一度社内で却下されたというエピソードを語られています。

生涯現役、技術者魂・・・素敵なサラリーパースン人生だと思います。

 

そういえば、今日からNHKで「プロジェクトX」が新たにスタートします。

前回の同番組(2000年~2005年オンエア)は戦後復興を遂げてGDP世界第二位になるまでの日本の産業界、目に見えないところで地道な努力を積み重ねる名もなき産業人を取り上げ、高い視聴率を獲得しました。

今回の「プロジェクトX」は、「失われた30年」と言われる平成の時代に努力を重ねてカタチにした、やはり名もなき産業人を取り上げるとのことです。

第1回放送は、東京スカイツリー。

楽しみな番組です。

がんばろう!ニッポン


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ChatGPT完全攻略ガイド・・・生成AIを仕事や趣味や生活に役立てしょう!プラグインという機能とコードインタープリターで能力倍増!

2024年03月27日 | 本と雑誌

2023年は生成AI元年と言われています。

インターネット、スマートフォンに次ぐ人々の生活を変える大発明。

ChatGPT、Bardなどの生成AIを利用しない手はないと思います。

ChatGPT完全攻略ガイド  

プレジデント社刊  980円

 

プレジデント社から刊行されたMOOK本。

サブタイトルは「一冊で生成AIのすべてがわかる」。

タイトルどおり、全ページカラーで読みやすい一冊です。

ChatGPT活用のキモは、プロンプト。

問いかけるための質問文です。

たとえば、法律問題について聞く場合は、「あなた(AI)は会社法に強い優秀な弁護士兼公認会計士です。次の事業部門のM&Aについて妥当性を教えてください。」と入れ、回答に対して質問を追加していくと、どんどん絞り込まれていきます。

自分自身のプロンプト集を作り込んでいくとともに、その筋のプロやネットから情報収集していけばChatGPTのポテンシャルを引き出すことが出来ます。

最近ではGoogle検索をあまり使わなくなってきました。

このムック本では、効果的なプロンプトの文例が出ているので参考になります。

あと数年もすれば、士業の世界も厳しくなっていくと思います。

IT、DXの普及が進んだエストニアでは、税理士や会計士がいなくなったと言われています。

野村総研の予測でも、社会保険労務士、税理士、公認会計士の仕事の約8割がAIで出来るようになるとしています。

ちなみに、AIの弱点である人間的な要素「創造性」「マネジメント」「ホスピタリティ」が絡む仕事は、まだまだ人間にアドバンテージがあります。

中小企業診断士や弁護士の仕事は、数パーセントしかAIが代替できないと予測されています。

同誌の冒頭で田中道明立教大教授の指摘には、勇気と希望をもらえました。

「人が生き残るのに必要なのはクリティカル・シンキングだ」

「最後に差がつくのは教養力」

「AIが得意なこと・・・過去、正解があるもの、前例があるもの、見えるもの、論理」

「人間が得意なこと・・・未来、正解がないもの、前例がないもの、見えないもの、直観や感性」

当然ですが、最後にジャッジするのは人間なんですね。

 

このMOOK本で学んだのが、プラグインという機能とコードインタープリター。

この2つだけ加えるだけでChatGPTの能力は倍増すると思います。

 

既に、定型業務、ルーティンの事務仕事は、生成AIにおまかせする時代になっています。

面倒な仕事は、工夫してAIにふっちゃいましょう。

今は、まだ生成AIブームと言えますが、あと数年もたてば、当たり前の世界になっているのではないでしょうか?

時代のスピードに置いて行かれないように、日々、努力、勉強ですね(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブルータス1000号記念バス・・・広島PARCO前でBRUTASの懐かしいバックナンバー雑誌に再開しました

2024年03月15日 | 本と雑誌

ランチに出かけた際、面白いマイクロバスに遭遇。

広島PARCO前、BRUTAS1000号記念バスです。

長野ナンバーのこのバス、全国をキャラバンで回っています。

ブルータスらしい素敵な企画です。

珈琲のスタンドも設置されていました。

今年の1月、雑誌「BRUTUS(ブルータス)」の1000号記念号が発刊されました。

ポパイ、オリーブという兄弟誌、姉妹誌もありました。

ポパイの兄貴分として創刊されたBRUTUS・・・まさか、ここまで続くとは思いませんでした(失礼!)。

その分、自分も年をとりました(笑)。

 

都市部の尖がった人たちをターゲットに様々な情報発信をしてきたBRUTUS。

マガジンハウスが誇るクオリティの高い雑誌です。

1000号記念号の特集は「人生最高のお買い物。」。

時代の先端を走り続けるタレント、アーティスト、音楽家、イラストレーター、事業家など数十人の人生を変えた買い物を全頁カラーで紹介していきます。

この号は、なんと164ページもあり重たい一冊です。

読みごたえもあり、マガジンハウスのチカラの入れようが伝わってきます。

車やバイク、絵画から雑貨まで、様々な品物が登場します。

さすが、尖がった人たちは、目の付け所が違います。

人生を楽しむためには、こんな視点が必要なんだなあということを知ることができます。

面白かったのが、「地球最後の日に食べたい一品」。

秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんが、今一番の食べ物を3品ずつ紹介していきます。

ここに出ている食べ物・・・今年1年かけて食べ歩きしたいなあと思った次第です。

「あしたのベストバイ」も必見です。

モノそのものだけでは、あまり幸せにはなれないと思います。

その裏にあるストーリー、こだわり、自分の想い、コダワリこそが、至福のひと時を味わうことが出来るのだと思います。

お気に入りのモノに出会えるといいですね。

今年は、世の中の景色が変わるような自分ならではの逸品を手に入れたいものですね。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする