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『体験的本多勝一論』 殿岡昭郎

2007年09月05日 | ノンフィクション


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つい先日、大学時代の友人と話していた際に話題になったのが本多勝一氏でした。相変わらず、根強いファンがいるものですね。氏の著作では、これまで 『新アメリカ合州国』 を取り上げました。おもしろい一冊でした。


本多氏の名前は、大学生以下の世代には、もうちょっとなじみではないかもしれませんが、いわずと知れた元朝日新聞のスター記者で、ベトナム戦争時に関する著作で国際的にも名を知られているジャーナリストです。

南京大虐殺の告発のレポートを送ったことで、日本中のエリート層から大変な注目を浴びました。いわゆる市民派とか左翼と呼ばれる人々からは崇められ、反対の側からはののしられることが多い人物です。

攻撃がものすごいのか、カツラをかぶりサングラス。顔も出さなければ、誕生日も明かさない、今となっては伝説上と言ったら言いすぎでしょうが、本当に正体不明です。ニュース23の筑紫哲也氏などと、“週刊金曜日” を運営していました。


筆者はまだ、本多氏が名声の頂点にいたころから、その著作のいかがわしさを指摘しました。

殿岡氏がある雑誌に掲載した本多批判が、本多氏の逆鱗に触れ、とうとう提訴、裁判で名誉毀損や謝罪広告などを請求されました。

訴えられたのは昭和59年で、最高裁判所の判決が平成10年だそうです。人生の何分の1か、かなりの長期間に渡って本多氏と戦いました。

しかし結果は3戦3勝、すべての裁判所で完全勝利をつかんだのですが、本書はその経過を明らかにしたものです。いったい本多氏というのはどういう人物か、その報道姿勢の問題点、裁判に至った経緯、公判でのやり取り、さらにその間の双方の動きなどをつまびらかにしています。


殿岡氏本人は、大新聞社の大記者相手の裁判にほとほと疲れ果てた様子ですが、非常におもしろく読めました。裁判の様子や、本多氏の作戦の展開などがまるで小説を読んでいるかのようで引き込まれました。実に執念深い戦いぶりです。


以下が目次です。

第1部 裁判提起まで(本多勝一氏との争い;前哨戦(1)東京学芸大学への公開質問状
前哨戦(1)本多氏と堤『諸君!』編集長との文書合戦)

第2部
 裁判始まる(人違い裁判?;くい違う争点)

第3部
 証人尋問(証人席の本多氏;対比の妙、硬派・村田氏VS.軟派・筑紫氏;剛直の堤氏)

第4部
 録音テープをめぐる攻防(いわれない“改竄”の汚名;本多氏の謀略;最終弁論)

第5部
 判決下る(地裁判決;完全勝利;高裁判決;最高裁判決)


センセーショナルな週刊誌の書き方に対し、政党や政治家、また出版社が訴えるということを耳にします。つい数日前にも、民主党の議員となった、“さくらパパ” こと横峯良郎氏さんが、賭けゴルフなどを報道した週刊誌を訴えると伝えられましたね。

しかし実際は、その後の裁判の経緯が細かく報道されるのは大きな事件だけで、名誉毀損などの裁判の詳細がいちいち伝えられることはまれです。つまり訴えるということ自体がポーズかなと思わせるようなものばかりです。


おそらく本多氏の提訴もそういう意味合いがあるのですが、本多氏の執念がすごいのです。筆者の主張は、本多ルポルタージュはルポの名を借りた、政治宣伝であるというような内容です。

本多氏を好きな方もそうでない方も、あるいはまったくご存じない方にもお薦めできる興味深い一冊だと思います。



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体験的本多勝一論―本多ルポルタージュ破産の証明
殿岡 昭郎
日新報道

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