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本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『「不自由」論』 仲正昌樹

2006年03月26日 | 教育関連書籍
 

これだけ自由で無限とも思える選択肢を与えられている日本の高校生たちにも、なりたいものがない、したいことが見つからないという状況が蔓延しています。フリーター、ニートの激増は申し上げるまでもありません。

自主性を尊重するゆとり教育、何でも自己責任、自己決定というグローバリズム的な風潮。いったい本当に人は自由に意思決定をするものなのかがテーマです。

大学の教育学では、ほぼ確実に取り上げられ、先生たちにとても人気の高いルソーの『エミール』。ルソーの自然人に対して考察を加え、その取り上げ方を批判します。他に教育界で発言の目立つ、苅谷剛彦氏や林道義氏、宮台真司氏、佐藤学氏らの考えを哲学的、論理的に論評します(宮台氏とは別書で対談を収録したものも
あります)。

我々学習塾の現場では、志望校や進路決定はどこまでが、自分で決めたとはいっても、自分の属する共同体の脈絡の中で決めている、とか、医療現場におけるインフォームドコンセントと言っても、患者には高度な専門知識はなく、形だけの自己決定とか。他にも多くの例が挙がります。

ただし、本書を読んで、すぐに何かが分かるというのはない、あるいは分かったからといって、すぐに行動すべきだと扇動する気もないというスタンスです。私が読んだ昨今の教育関連の本の中では出色だと思います。


「不自由」論―「何でも自己決定」の限界

筑摩書房

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『「新しい歴史教科書」の絶版を勧告する』谷沢永一

2006年03月26日 | 教育関連書籍
 

新しい歴史教科書をつくる会で内紛が起こっているという報道がありました。会長が事実上、解任されたというのですが、遠因は、二度目のチャンスだった前回の教科書採択率が伸びなかったということ。もう一つは会長が確か勝手に中国に行って、誰かに会ったとかいうものでした。詳しい情報を得ておりませんが、新しい歴史教科書そのものは、よくできていると思いますので、今回の内紛は足の引っ張り合いなのか、主導権争いなのか?とにかく残念です。

以前、もう一つ不可解な批判が、思想的には近いと思われる谷沢氏から出されました。それが本書です。谷沢氏はつくる会の内部の人間ではないのですが、確か、小林よしのり氏は渡部昇一氏との対談で、“我々を指導してもらいたいくらいの立場にいる方なのに不可解だ。批判も感情的だ”というような主旨の発言をしていたと記憶しています。

本書の書き出しはこうなっております。

★『中学校社会科歴史的分野』教科書は、無知、無学、誤記、誤認、虚偽、捏造、歪曲、粗放、出任せ、虚勢、出鱈目、あてずっぽう、傲慢、思い上がり、による内容空疎な叙述を、恥知らずで知ったかぶりのハッタリで色あげした愚書であるから、絶版に処せられるよう勧告する。

西尾幹二・八木哲・高橋史朗・坂本多加夫・田久保忠衛・藤岡信勝・小林よしのり・谷原茂生・高森明勅・中村守・広田好信 御一同様★

読んでみたのですが、私の知識ではどちらが正しいのか判断が付かないところがたくさんあったことと(谷沢氏のひどい間違えもあったようです)、指摘自体に、上記のような強烈なコメントを加えているので、谷沢氏の人間性を疑ってしまいました。

日本の歴史教育を改善しようとする、似たような立場にいる方々の中でも、権力闘争のようなものがあるのかという印象を持った一冊でした。

「新しい歴史教科書」の絶版を勧告する

ビジネス社

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『授業の復権』 森口朗

2006年03月24日 | 教育関連書籍


バブル崩壊後の日本経済を“失われた十年”などと形容しますが、教育界においてもまったく同様の“失われた十年”であり、経済の方は復活の兆候を見せていますが、教育界はこのままではさらに“破滅への十年”となりかねないという現状認識を筆者は持っています。

学力低下の問題を語るときには、様々な視点が考えられます。指導要領改定に伴う授業時間の減少や、地域社会を含めた家庭の教育力の低下、競争は悪という思想を喧伝する組合や政治勢力の責任などです。どれにもある程度の信憑性のあるデータが示されたり、論争が展開されてきましたが、著者は、その中でも、質の高い授業を目指して、努力を怠らず、成果を上げている“授業達人”の教員に注目します。

本書では百マス計算で有名になった陰山英男氏を含め、六人の先生とその授業を紹介しています。それぞれの指導方法を産んだ背景などまで詳しく書かれており、非常に興味深く読むことができました。学校を取り巻く様々な要因を論ずることも大切ですが、何よりも“授業の質”が子供の将来や、学力に決定的に重要だという主張で、全く同感です。

教員が授業の質を上げることに全力を傾けることを可能にするには、学校周辺の状況整備を論ずることを抜きにはできないということもまた事実でしょう。そのあたりの筆者の主張は傾聴に値します。

今さら壊滅状態の日教組を攻撃しても現状打開に何の役にも立たない。むしろ日教組の果たしてきた授業力向上の機会が失われることの方が、若い教員にとってはマイナスだと分析します。

長くなりましたので筆者の教育再生プログラムを簡単に紹介しますと、

『第1段階.政治思想停戦、第2段階.競争の復活、第3段階.教師の誉め育て』です。授業力向上がすべてのポイントです。



P.S. 学校もそうですが、大学生のアルバイトをコンビニの時給並みで雇って、ろくな研修すらしない塾も多すぎます。ひどいところは学生にネクタイをさせてごまかしています。許せませんね。うちの塾はプロばかりですが、そうすると月謝は確かに高くなる。う~ん。話がそれてしまいました(笑)。とにかく勉強になる一冊です。

授業の復権

新潮社

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『親力で決まる』親野智可等

2006年03月20日 | 教育関連書籍
小学校5年生の自殺というのは、衝撃的なニュースでした。先生が厳しく叱ったからということになっていますが、どうなんでしょうか?きっかけにはなったかもしれませんが、ちょっと短絡的に過ぎる気がしています。もちろんこんな折に、親の責任云々とは報道されるわけもないのですが。

かなり以前に当教室のメルマガにも紹介されていた一冊ですが、ドラゴン桜を読んでいたら、途中に本書と筆者が登場したので、びっくり、あらためてご紹介します。

抜群に上手い文章で、読みやすく、まるで学級便りを手にしているかのような感じを与えてくれる一冊です。静岡県の小学校の先生(本名:杉山桂一)が主に家庭教育に関して書かれた本です。

工夫次第で子どもを勉強に向かわせることは、それほど難しくないことを具定例を挙げて説明してくれます。ただし、感情のコントロールだけは、親子あるいは大人対子どもでは、相当難しいということもあらためて認識させられます。

筆者が自分の子どもの担任だったら、私ももっとマメに学校に顔を出すと思います(笑)。安心して学校に任せられますし。そんな気持ちにさせられるのです。

非常に志の高い教育観がもとになっていますが、本文はどれも平易で、成績を上げたいと思っている親御さんも、行儀よくしてもらいたいと思っている方にも役立つはずです。親としてもうちょっと反省した方が良さそうだとか、これならできそうで、取り入れたいとか、そんなことがたくさんあるように感じた、本当にためになる一冊だと思います。

「親力」で決まる ! 子供を伸ばすために親にできること

宝島社

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『わかったつもり』西林克彦

2006年03月17日 | 教育関連書籍

私は英語の教師ですが、よく生徒たちから、長文読解ができるようになりたいという要望を受けます。その時に言うのは、英語の読解ができないのは何も読解力がないのではなく、単語や文法ができないのが原因、ということです。

英語を全部日本語に正しく訳すことができて、それでも得点できないのなら読解力不足といえますが、大抵は訳せないことが原因です。

国語の場合は話が違います。一応全部読めて、分かったつもりでも得点できないという状態ですから。

本書は、国語の読解力に関して、どうして力が付かないのかを丁寧に示します。基本的考え方は、読者が読んでいるものに対して『わかったつもり』になってしまうために、それ以上のことを考えずに読んでしまう。という感じでしょうか。

最初は小学校2年生の教科書から例題を取り出し、これを読ませます。こんな感じです。

『もし もし お母さん』
 ゆみちゃんの うちで 子ねこが三びき 生まれました。お母さんねこの たまが、おちちを のませて かわいがって いました。

 子ねこたちの 名前は、みけと しろと とらです。 (以下略)

まだまだ続くのですが、それにしても、このレベルの文のどこに読解の問題が生じるんだと思いませんか?ところが問題になるんです。興味ある方はぜひ手に取ってみて下さい。

最後には大学センター試験問題まで取り上げて、なぜ、選択肢を吟味して、正解とされているものの理由を分析します。そして軽く、これまでの国語教育に苦言を呈します。

ここまで書いて、私が本書を“わかったつもり”になっているに過ぎない可能性も充分あることに気付きました。面白い本なので、国語の読解に悩んでいる人や、国語の先生には参考になることが多いと思います。

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

光文社

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『偏差値は子どもを救う』森口朗

2006年03月14日 | 教育関連書籍

塾講師として長年やっておりますが、偏差値(標準偏差)の意味を誤解しておりました。筆者が指摘しているように、私の偏差値理解レベルは中級でした。お恥ずかしいのですが、なるほどと深くうなずいた次第です。

それ一つわかっただけでも本書を読んでよかったと思ったのですが、本書には他に多くの示唆に富んだ指摘がありました。塾講師はどうしても、偏差値だけで良いではないかと考えがちなのですが、その効用と限界を非常にわかりやすく説明してくれています。

学校現場を知った人間だからこそ思いいたることなのだと思いました。しかも森口氏自身が小学生の時、特殊学級に在籍していたというではありませんか。

別の著作を読んだ時には、議論の進め方が雑だという感想を持ちましたが、本書は緻密な分析が施されています。言

実に有用な一冊で、多くの教育関係者やご父兄にお薦めしたいですね。もっともっと売れて欲しいんですが、やっぱり書名が何となく時代遅れなんでしょうか(笑)。内容的には、『偏差値は子どもを救う』でしょうが、それこそ“バカ”がはやっていますので『バカ親が子どもを滅ぼす』なんてしたら注目されたかもなんて思いました。

偏差値は子どもを救う

草思社

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『ニッポンの公文、ドイツの教育に出会う』フックス真理子

2006年03月10日 | 教育関連書籍

ドイツでは初の女性首相が誕生しました。国柄や教育は国によって千差万別ですが、ドイツも日本とは相当異なっているようです。昔、ドイツはどこの大学も無料で、何年でも在籍していても良いのだと聞いた時は本当に驚きました。

本書はドイツで公文教室を開いている筆者がドイツの教育制度や社会習慣などを紹介、考察した一冊です。エッセーで、非常に読みやすく書かれています。

日本同様ドイツも学力低下がかなり社会問題化しています。かつてはマイスターと呼ばれる職人になる道もしっかりとできており、エリートとのすみわけのようなものができていたそうですが、どうも社会の構造変化に教育システムが適応していない状況のようです。

失業率もかなり高く、深刻な経済、教育問題が描かれています。筆者の夫がドイツ人でもあります。フランスで暴動があったり、イギリスでテロがあったり、ドイツの選挙後の混乱といい、ヨーロッパの大国が大きな問題に直面していますが、変動する社会に対応した柔軟な教育制度を持つのはどこでも困難なようです。

ニッポンの公文、ドイツの教育に出会う

筑摩書房

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『子どものことを子どもにきく』杉山亮

2006年03月03日 | 教育関連書籍
 
筆者は保父さんとして保育園や幼稚園に7年勤めたあと、『おもちゃいろいろなぞなぞ工房』というおもちゃ屋さん開業されました。現在職業は児童書作家または“おもちゃ作家”だそうです(笑)。

本書は筆者がある雑誌に、何かを書いてくれといわれて、良いテーマが浮かばない時に、当時3歳になった自分の息子のインタビューをまとめて編集したそうです。すると好評で、それ以降、年に一回10歳になるまで続けたものをまとめたものです。

それにしても“子ども”の成長は早い、ということと、子どもと大人を隔てるのは何だろうという気がしてきます。子どもの世界観は当然のことながら大人と違い、インタビューの受け答えは、相手が父親でも意表を付かれてばかり。

私も二児の父親ですが、こんな受け答えがあったことを思い出します。子育てはいろいろ考えさせられますが、筆者のように、冷静に、優しく成長を見守るという姿勢は中々持てません。どうしても親子双方の日々のスケジュールをこなすことが精一杯です。

気軽にも読めますし、じっくり読んでも価値のある一冊じゃないでしょうか。
子どものことを子どもにきく―八年間の親子インタビューから

岩波書店

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『教科書採択の真相』藤岡信勝

2006年02月24日 | 教育関連書籍
新しい歴史教科書を作る会の藤岡氏が、
またも厳しい採択結果になったことを受けて、
その間の経緯や裏側を語っています。
確かに、扶桑社の『新しい歴史教科書』の採択は、
全国の需要数約132万冊中のわずか521冊。
率に直すと0.039%と限りなく
ゼロの大敗北ですが、
ご存知のように市販された教科書は60万部も売れました。

コミックじゃあるまいし、
つまらない書物の代表のように言われる教科書が
これほど注目を集めた訳です。
やはりその影響は大きく、私も市販本を手にして、
『どこが右翼の本なんだろう?』と不思議に思いました。

いったいどういう理由で、どんな手口を使って、
扶桑社の本を排除したのかが
教科書採択の歴史から始まって、詳しく紹介されています。
自虐史観を批判した本はたくさん出ていますが、
採択を牛耳る連中のやり方を
丁寧に追った本は始めて読みました。

弱くなったとはいえ、共産党、旧社会党、
そして日教組というのは恐ろしいと感じました。
ぜひお読み下さい。非常に興味深いです。
こんなことがあっても良いのか?という感想です。

教科書採択の真相 かくして歴史は歪められる

PHP研究所

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