これだけ自由で無限とも思える選択肢を与えられている日本の高校生たちにも、なりたいものがない、したいことが見つからないという状況が蔓延しています。フリーター、ニートの激増は申し上げるまでもありません。
自主性を尊重するゆとり教育、何でも自己責任、自己決定というグローバリズム的な風潮。いったい本当に人は自由に意思決定をするものなのかがテーマです。
大学の教育学では、ほぼ確実に取り上げられ、先生たちにとても人気の高いルソーの『エミール』。ルソーの自然人に対して考察を加え、その取り上げ方を批判します。他に教育界で発言の目立つ、苅谷剛彦氏や林道義氏、宮台真司氏、佐藤学氏らの考えを哲学的、論理的に論評します(宮台氏とは別書で対談を収録したものも
あります)。
我々学習塾の現場では、志望校や進路決定はどこまでが、自分で決めたとはいっても、自分の属する共同体の脈絡の中で決めている、とか、医療現場におけるインフォームドコンセントと言っても、患者には高度な専門知識はなく、形だけの自己決定とか。他にも多くの例が挙がります。
ただし、本書を読んで、すぐに何かが分かるというのはない、あるいは分かったからといって、すぐに行動すべきだと扇動する気もないというスタンスです。私が読んだ昨今の教育関連の本の中では出色だと思います。
![]() | 「不自由」論―「何でも自己決定」の限界筑摩書房詳 細 |
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