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精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

ADL指向病棟、QOL指向病棟、ケアリビング

2006年06月26日 | Weblog
 本日の療養型の病棟会議では、病棟の今後についての話し合いがあった。
 
4月からの診療報酬改定では療養型病床の制度再編が行われた。厚生労働省のもくろみは、介護療養病床は6年後には完全に廃止、医療療養型病床はより医療依存度の高い人を集めるよう誘導し、介護が中心となる人は在宅等、介護保険制度のもとでの施設やケアリビングに誘導するというものだ。リハも急性期に重点的に投入する誘導がなされている。

 当院の療養型病棟は6年前につくられ、回復期リハ病棟もどきのリハ病棟の機能、それから、いろいろの事情でうちに帰れない人が他院や施設や天国へいくまでのあいだのバッファーとしての機能を担ってきた。

 しかし今度の制度改定で療養型病床で、今までのようにリハを行うことは病院経営上も不可能となった。新制度の療養型病棟でいくのか、回復期リハビリテーション病棟としてあらたに出発するのかを迫られている。(何をいまさらやってんのと言われそうだが、それはうちの病院の戦略の甘さゆえである。)

 新制度下での医療療養型病棟として行くのなら必然的に老健等の介護保険施設ではみることは難しい医療依存度が高い人たち、たとえば気切、呼吸器、酸素吸入、点滴、疼痛コントロールなどが必要な、癌や神経難病の患者さん、あるいは高齢、脳梗塞、繰り返す誤嚥などで点滴一本で看取りまである終末期の人たちなど、基本的に家や施設にいくことができない人たちを最後まで看るという役割が中心となる。(今度の改定で癌の疼痛コントロールに必要な薬剤は包括部分からはずされたので緩和ケアを行うことも可能。)患者本人と、その家族のQOLを重視したQOL指向病棟とならざるを得ない。病棟での生活、病棟からの社会参加の仕組み、アメニティやスピリチュアルケアも重要になるだろう。その場合回復期のリハを中心に行う人の場所は別に確保する必要がある。

 回復期リハビリテーション病棟とするのなら、リハ適応のある人にリハビリティティブな環境で過ごしてもらい、病棟の力で元気にして、地域の暮らしにもどる手助けをするというADL指向病棟となる。手術でもなく、薬でもなく、訓練室だけでのリハビリでもなく、病棟という場がまさに治療の場となる、ヒーローはいないし、あまり切れ味のよい武器はない。しかし患者さんごとに結成された多職種のチームの力を終結して元気にし地域での暮らしの準備をすすめる。もちろん患者さん自身も家族もチームの一員だ。

 近森病院、初台リハビリテーション病院での石川誠らの実践(参考:「夢にかけた男たち」、「東京へ、この国へリハの風を」)から制度化されたこの病棟だが、よいものを実現するに当たり課題は多い。当院の療養型病棟ではリハスタッフの病棟専従はすでになされているし、病床の基準はすでにOKである。しかし医師の病棟専従、訓練室一体型病棟、看護、ケアスタッフの配置の問題。リハスタッフのADLのゴールデンタイムへのケアへの参加(朝、夕)、365日のリハ(現状は日曜のみ休み)、さらなる情報共有の仕組み(電子カルテ、データーベース、カンファレンス)、急性期それから維持期(地域での生活、在宅、社会復帰)とのスムーズな連携の仕組みは欠かせない。(クリニカルパスの活用ということになるだろう。)また今までの療養型病棟がになっていた終末期やバッファーの機能をどうするかという問題もある。どう頑張っても家で暮らしていくのは困難な障害をもった高齢者は増えるのだから、地域ごとに老健や特養、ケア付きのコレクティブハウジング、宅幼老所やグループホームなどのケアリビングはますます増やしていかなくてはならない。(病院のOBに期待、福祉部門を充実、あるいは別組織を作る必要あり。)、また、これらに看取りの機能も持たせる必要があるだろう。当院は病院に地域ケア科という在宅部門があり、他にはできない独自の展開もできそうだ。

 どちらにするにしろ課題は山積みであるが、一歩一歩前進するしかない。

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