リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

自殺対策に取り組む僧侶の講演会

2012年03月26日 | Weblog
鈴の音ホールで松川村の人権フォーラムの講演会。
いのちを見つめる 自死に向き合う~いま、私にできること~というタイトルで自殺対策に取り組む僧侶の会代表の藤澤克己氏のお話があった。

お坊さんがどんな話をするのか興味があったので参加してみた。
最近やたらと多い自殺対策関係の企画かとおもったら男女共同参画の企画らしい。いろんな予算があるものだ。


(すずのねホールがかなり埋まった)

「自殺対策に取り組む僧侶の会」の活動として

・独りよがりの返事にならないよう3人一組で話し合って返信している手紙相談「自死への問い、お坊さんとの往復書簡」
・自死者追悼法要
・自死遺族の分かち合いの集い
・研修会
・立ち上げ支援

などをしているそうだ。


場を作るという意味では、まさに活動家。
やっていることはパーソルサポートだ。


僧侶は死んでからあとが仕事?いやそうではないという。
何故僧侶が自死対策を始めたのか。
それは仏教は抜苦与楽が本来の役目だからだだそうだ。

あえて自殺ではなく自死という言葉を使っている。
自殺に良い悪いはない、ただ自死を引き起こすものが悪いという考え方。

死にたくて自死する人はいない。
本当は生きたい、生きていくことができないほどつらい、死ぬしかない、、。ということ。

基本的態度は関心を持つ、精神的支援としてはは感情に寄り添うこと、実務的支援しては具体的解決に向けて一緒に考えて行動すること
大切なのは困っている人、苦しんでいる人のペースに合わせること。

資格や準備がないからといって何もできないわけではない。
例えは相談窓口を探すということは当人にはなかなかできない。
分からないけど一緒に考える、手伝う。
窓口に連絡して付き添うなどのことはできる。

共感的理解を示すことが大切。

・よく頑張って来ましたね。
・私はあなたのことが心配です。
・死んでほしくはありません。
・一人じゃありません。
・一緒に考えましょう。

(ワークショップの内容。手紙への返事の例、悪い例といい例の紹介)

自死対策の心得として、あらかじめ用意されている答えはない。
分からないけど一緒に考えるという覚悟が必要
温かい見守りと伴走が肝心である。

なぜなら人には誰にも回復力がある!から。

まったく普段自分たちがやっていることとほぼ同じ実践そして方法論だと思った。


この時代、この社会をともに生きる仲間。
支え合う、お互いさま、声を掛け合う。
困ったら助けてもらいたい、困っている人にはてをさしのべる、ご恩返しは次の人(世代)へ。

人に迷惑をかけてはいけないと教えるのは間違い。
そんなことは誰にも出来ない。それよりもどれだけ人に迷惑をかけ助けられているかに気づくことが大切。
「すみません」より「ありがとう(有り難う)」

ただ自死者の数が減ればいいのではない、生き生きと暮らすようになり、その結果、自死する人が減って欲しい。
安心して悲しみ悩むことができる社会を目指しましょう。

いい話ではあったが、もう少し坊さんならではの話を聞きたかったかな。
自殺対策に取り組む僧侶の会の他の支援団体や支援者との協業について質問させていただいたが、個人的な精神科に紹介したり、近くなら包括支援センターに同行したりということにとどまっているらしい。
多方面とのコラボレーションも課題。
医療は宗教とどうコラボできるだろうか?
宗教が「駆け込み寺」となり場をつくり、再び本来の役割を果たすようになれば精神医療も縮小していけるのだろうが。(^_^;)
医師には診断や障がいの評価をして社会的責務を軽減したり支援の必要性を裏打ちしたり、投薬など侵襲的となりうることをしたりといった役割は残るのだろうけれども・・。

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