リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

いまこそ政治を機能させるために。

2013年01月01日 | Weblog
新年、明けましておめでとうございます。

日本漢字能力検定協会の昨年の一文字は「金」だそうですが、私は「怒」だと思います。
何に対して「怒」っているかというと民主主義とそれをささえる装置である政治、言論の自由、マスコミの機能不全に対してです。



2011年3月11日とそれに続く日々は、ほとんどの日本人にとっては決して忘れることはできない日になったと思います。
地震と津波の大災害とそれに引き続く原発事故で多くの人の故郷が失われました。

2012年の12月に震災原発事故後、初の解散総選挙が行われました。

しかしこの選挙とその前後の動きの中で我が国においてシステムとしての政治がもはや機能していなくなってきていることを痛感しました。

野田元総理が解散したタイミングは仲間であるはずの民主党議員にとって惨敗必至の最悪なタイミングでした。

なぜ野田元総理はこのタイミングで解散したのでしょうか?
野田おろしを察知した野田元首相自らが自爆テロ的に解散したのでしょうか?
そういう側面もあるでしょうが政権交代当初はともかく今の民主党はもはや自民党の劣化コピーですから自民党がやりたくてしかたなかった増税を打ちだすなどのことも含めて自民党ともなんらかの裏取引があったのではないかと疑わざるをえません。
もちろん裏にはアメリカの意図が見え隠れしています。


(利権としがらみにまみれて、アメリカの言いなりで、おまかせ政治で一部の人がやりたい放題の日本を取り戻す)

自民党は「日本を取り戻す」という取り戻したいのは既得権益と権力だろと突っ込みたいスローガンで、民主党は「決められる政治、今と未来に誠実でありたい」というこれまたギャグかと突っ込みたいスローガンでした。
「新しい公共、コンクリートから人へ、国民の生活が第一」と言っていたかつての民主党は何処へいってしまったのでしょう。

自民党以外の政党にとって公明党や共産党はともかく、政治システムの転覆を狙ういわゆる第3極や、反原発反TPPを主張する勢力にとっても十分な準備をする時間がなく結果として自民党の大勝につながりました。

私の選挙区でも実質的に自民党の候補か民主党の候補の実質2者からしか選べず、脱原発、反TPP、社会保障の充実、雇用の柔軟化を明確に訴える政党、候補を選べませんでした。
なんじゃこの選挙。

なんにも選べない投票なのだから投票率が低くなったのは有権者のせいだけじゃないよな・・・。


そもそも野田首相が言っていたように当初、今回の選挙の主たるテーマの一つはTPP参加の是非のはずでした。

ここ数年、日本の大手マスコミは「アジアの成長をとりこめ。バスに乗り遅れるな。平成の開国。新しい貿易のルール作りに参加を。」などと参加するのが当然というムードをつくってきました。
しかしTPPは参加交渉のテーブルにつかないと情報が入らないのに、交渉テーブルにつくと脱退は難しい、ぼったくりバーみたいなものです。
それぞれの国の文化やこれまでの構造を丁寧な議論を得ずにぶち壊そうとする大量破壊兵器です。
反民主主義的なTPPの内実が知れるに知れるに連れ国内の反対世論も盛り上がり野田総理は交渉参加への道筋をつけられませんでした。
米が主導する21世紀の貿易ルールづくりに参加をと民主党の野田総理は解散前にTPP参加を主張し、それを選挙の主たる争点として戦うと主張していたはずです。

しかし何故かいつの間にかマスコミも民主党もTPPを対立軸として扱わなくなりました。
これは衆院選での民主党の惨敗が不可避とみられるなかTPP参加反対が日本の民意となり、日本の交渉参加がさらに暗礁に乗りかねないと米側は危惧してクレームをつけてきたからのようです。

米政権が「TPP争点化」に「NO」!! 首相の衆院選戦略狂う


米政府のクレームを忖度した大手マスコミもTPPを選挙の主たるテーマとして取り上げなくなりました。
民主党内にもTPP慎重派、反対派の議員も多くおり、そのまま選挙に突入し結局争点がぼやけてしまいました。

自民党も一見TPP参加 に反対しているようで、「どうともとれる玉虫色の表現」をして選挙に勝ちました。
案の定、政権交代した途端、対米従属を主たる政策とする安倍首相はさっそくTPPへの参加を匂わす発言をしています。
自民党は「聖域なき関税撤廃が条件である限り、反対」としていますが、関税など為替しだいで吹けば飛ぶようなものでTPPで本当に問題なのは非関税障壁の撤廃とISD条項なのですよ・・。
なんだかコメの関税をまもったからとかいって目眩ましをかけてTPP参加を強行されそうです。
油断なきよう。



これまで何度も述べてきたようにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の対立軸というのは米国VS日本、製造業VS農業などといったものではなく、グローバル企業VS民主主義、1%VS99%です。
グローバル企業は環境への規制や労働力が安く確保できるところで生産し、売れる市場があるところで売り、税金の安いところで税をおさめる一方、国家は国民の生活や環境を守る責任を負っています。
経済ごときが国権全てを超越して強欲を欲しいままに振る舞う究極の愚挙であり、いざというときに守りたくても守るべきものが守れないのがTPPの仕組みです。
情報のないところで食の安全・医療・社会システムを壊すかもしれないところにあえて突入する必要はありません。
TPP問題はグローバル企業というモンスターから民主主義や国民の生活をどう守るかどうかということなのです。

一方でTPPは国家安全保障上の問題であるという主張もあります。
北朝鮮や中国の軍事的脅威から日本をまもるためには同盟国たる米国との関係を強化するしかない、そのためには日米経済同盟(不平等条約)としてのTPPに参加するのもやむを得ないという理屈です。
そして予想どおり選挙直前になって、北朝鮮のロケットが発射され事実上のミサイルだと騒がれ、尖閣諸島に中国の航空機が侵入しマスコミは大騒ぎしました。米国の諜報組織であるCIAが動いたのだと思います。
米国は日本の憲法を改正させ再軍備させ日本に駐留する米軍の変わりに配備し、軍事兵器を売り込む市場とするとともに中国へのカウンターパワーの一翼を担わす魂胆です。
イラクやアフガンの例をみるまでもなく戦争があることで利益を上げている軍需産業は確実にあるのです。
脅しに屈してTPPに参加した先にどのような未来があるのでしょうか?
米国はもう日本など守ってはくれません。そんな余裕はないでしょう。

自民党は憲法改正、国防軍の創設などおかしなことを言い始めていますが、インテリジェンス機能を強化したり周辺諸国としたたかな関係を結ぶ道を探ることが先決ではないでしょうか。

さて、もう一つのテーマになるはずだったのが原発再稼働の問題でした。
震災、津波に引きつづいた原発事故で、あれだけの取り返しの付かない事故をおこし原発の未熟成、管理の危険性が明らかになりました。この事故は繰り返し予想されていたものでした。その意味ではこれは人災です。
放射性物質がばらまかれ、故郷は失われ、放射性物質に関する法律は反故にされ汚染地帯に人々は見捨てられ多くの人が被曝をしつづけています。政府はあえて東電を潰さず、賠償と責任逃れの隠れ蓑にし続けています。
悲惨な事故を経て明らかになったように原発はその原発事故の対応や廃炉のコストなどまで考えると決して安価で安全な発電方法ではありませんが、原子力発電所関連の施設が資産となるか負債となるかの分かれ道ですので電力会社にとっても必死の事態なのでしょう。

事故後、原発に関してはそれまでも国民は電力不足で計画停電が必要だの電気料金の値上げせざるをえないだの、景気が悪くなるだので散々脅されてきました。



しかし一番の問題は核の廃棄物(放射性物質)の処理がどうするかということへの解決法に決着がついていないものを使い続けるのかということなのです。
さらにその廃棄物であるプルトニウムは核兵器の原料となりえ、もっともいつでも我が国が核兵器をつくれるようにするために原発を動かさなければいけないという国家安全保障上の理由が原発をやめられない裏の理由の一つになっています。

では消費税増税、税と社会保障の一体改革のテーマは一体どうなったのでしょう。
民主党政権当初、年金政策について深く切り込んでいっていましたが、いつの間にか立ち消えてしまいました。
教育、セーフティネット、雇用対策などを踏まえた社会保障のグランドデザインが見えて来ません。

野田総理は3年前のマニュフェストにもなかった消費税増税を強行したのはなぜでしょう。
限られた税金の使い道を優先順位をつけてきめていくのが政治のはずです。
優先順位をつけることなく国債を際限なく発行し、未来へツケをのこし、増税を繰り返すのなら政治は必要ありません。
それを「決められる政治」とはちゃんちゃらおかしい話です。

庶民から、未来の国民(子どもたち)から財界やグローバル企業へとお金が流れていきますが、それを望む人たちがいます。
大きな力に突き動かされています。
自民党も、誰もが嫌がる増税というテーマに関しては死に体の民主党政権の間に押し付けておくという裏取引があったのではないでしょうか?


今回の選挙前、TPPや原発、増税という対立軸に対して原発再稼働に明確に反対していた日本未来の党、日本共産党の主張を大手マスコミはあまりとりあげませんでした。
一方で政策すらまとまっていない橋下徹氏と石原慎太郎氏の野合政党である維新の会を第3極として大々的に扱いました。維新の会はとんがっているだけで大筋の政策では新自由主義礼賛で自民党と変わりありません。

さらに自民党が大勝するという世論調査の結果をもとにした予想を直前まで流し続けました。
明らかに意図的でバランスを欠いた扱いです。マスコミしかPRの手段がなくネットによる選挙活動を封じているなど、新たな政党には手も足も出ませんでした。

その結果、民主党に対する懲罰が唯一のテーマとなり自民党はわずか国民の2割の得票で政権を奪取しました。

自民党は原発再稼働と自己に関する情報の隠蔽、責任の曖昧化にしたまま政権交代して早速「2030年代原発ゼロ」どころではなく、新しい原発をつくるという話になっています。
早速訪米しオバマ大統領に日本国民の生活を売り渡すTPP参加表明を手土産にしようとしています。
社会保障に関しては自助を基本とするといい生活保護の切り下げからはじまり、穴だらけのザルセーフティーネットを放置し、景気が上がれば全てが解決すると未来に借金を重ね、様々な理由をつけて税金だけはあげようとしています。
もっとも参院選まではTPPや原発、外交などには本格的には手を付けず、金融緩和、消費税増税前の前借りの需要喚起、バラマキなどでとりあえずの景気対策に終始するでしょうが・・・。
参議院選挙でも自民党が勝つようなことがあればもうやりたい放題です。

こんな政治では、とても民意が反映されているとはいえません・・。
国民をバカにした話です。

民主主義における選挙は1人1票が原則です。
(一票の格差は是正しなければなりませんが‥‥)
しかし言論の自由が保証され、様々な議論が巻き起こり、個人個人が真剣に考えるようにならなければ、資金を投じてマスコミを牛耳る大企業、組織票を集められる宗教団体や各種団体などの意向のみが反映される結果になるでしょう。
いまやマスコミと政治はワンセットになってしまっています。
権力の監視機構たる役割をわすれ、お金の力で世論を操作できる大手マスコミは言いたい放題で、だれでもコストを掛けずに発信できるネットでの選挙活動を規制する。
おかしな事です大企業や米国の手先となってしまった大手メディアの報道のみにまかせては結局民主主義は成り立ちません。
(そのことで得しているのは誰でしょう?)

それには選挙の時だけではなく常日頃からネットも活用した多種多様なメディアで政府や国会議員、官僚に情報を提供し、議論し、監視して協働して予算や制度や法律をつくるなどのことが民主主義の肥やしとなります。

政治家はたまたま代表として議会にでているだけで当選したからといって全権委任したわけではなく、市民一人ひとりが政治家を政治につながるハブとしてどんどん使えばいいのです。
(インターネットを使った個人的なロビー活動です。)
逆に言えばネットワークのハブたる政治家を選び、政治家をハブになるように育てて行かなければいけません。

私自身も多くの人と同様に社会でもがきながら様々な人の居場所と出番をつくるとともに、政治や政治家の動きを監視し、応援し、自分が見聞きしたもの、感じたもの、考えたものを発信し、ひろく議論して政治を動かしていこうと思います。

ただ日本は、基本的人権、特に表現の自由や通信の秘密を脅かす可能性が非常に高いACTA条約に批准しており、著作権違反というイチャモンがついて言論を恣意的に制限される可能性があります。
また自民党の憲法改正案は個人の人権を義務と引き換にし為政者の都合で制限しようという立憲主義の体をなしていないひどいものです。
この動きを放置しておけばますます民主主義は機能しなくなるでしょう。
国民の不断の努力によって憲法が保証する自由と権利を保持しなければならなりませんね。

願わくば今年の一文字が「希」となりますように・・・。

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2 コメント

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change (noga)
2013-01-03 05:27:30
日本人には、目指す世界がない。
むしろ、何も動かないのが、天下泰平の世の中であり、伝統的にそれを人民が願っているのだ。
「我々はどこから来たか」「何者であるか」「どこに行くか」という考え方はない。
日本語には、時制 (過去・現在・未来の世界を分けて考える考え方) がないからである。
一寸先を闇と見る政治家たちに行く先を案内されるのは不安でたまらない。
つかみどころのない人間ばかりの社会では、とかくこの世は無責任となる。
国がひっくり返っても、責任者は出なかった。その責任感の無さ。

人にはいろいろな意見がある。
だから、社会のことには、政治的な決着が必要である。
万難を排して、原発は再稼働を停止する。
これは、終戦詔勅を受け入れる時のようなものである。ことは人の命の問題である。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、もつて万世のために太平を開かんと欲す。

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Unknown (といぴ)
2013-01-03 15:43:35
政治をおまかせして監視せず、投票せず、声を上げず丸投げしていた国民一人ひとりに責任はあります。
福沢諭吉の時代からこのテーマは変わりません。一人ひとりが賢くなるしかないのですが・・。

民主主義は明治、大正時代よりもむしろ交代しているかもしれません。
いまこそ平成デモクラシーを。
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