リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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逆ショートスティとキャンナス

2009年12月30日 | Weblog
年末年始である。
病院や介護施設も家族のお見舞いなども増え、病院や施設内もなんとなくにぎやかな雰囲気もある。
お正月くらいはと施設から外泊できる人、病状が悪く病院にとどまる人。
それぞれである。
若い世代は産業・雇用構造の変化、長引く不況もあり子供世代は先の見えない不安定な雇用情勢の中にいる。
自分たちに時間的、経済的、精神的余裕も無く子育てすらままならない状況の中で、認知症を抱えた高齢者の気持ちに配慮して優しく接しましょうといっても難しい話である。
家族が崩壊し身体障害のみならまだしも認知症をあわせもっていれば、自営業や農家、専業主婦などで経済的な余裕もある家でないととても家での在宅療養生活を続けていくことは難しい。
お金さえ何とかなるなら施設へというのは当然の流れかもしれない。

高齢者の福祉を産業と考えると大もうけもできないだろうが、需要はありハズレも無い産業であるから団塊の世代が蓄えた財産をねらって施設はどんどん増えているようで、家ではない施設(特養やケアホーム)で暮らす障害高齢者はどんどん増えている。残念ながら・・。(ただ、うちの地域は施設も少ない)


そうなってくると今度は施設を生活のベースにして週末や連休など家族が集まれるときなどに家に帰る「逆ショートスティ」みたいな形が求められてくるのではないだろうか?
普段は施設で生活していても、住み慣れた家に戻り家族と過ごしたいというニーズはあるだろうから・・。
しかしそういうときにフレキシブルに訪問系サービスを使えるような体制にはなっていない。
病院からの外泊のときですら、訪問看護や訪問介護などの介護保険サービスは使えないのだ。
介護保険制度をに関してはこの辺りはもう少しフレキシブルに出来ないものだろうか。
そういうときこそキャンナスに活躍してもらう手はあるかもしれないが・・。
(うちの地域でもほしい・・・)
しかし年末年始や休日はケアギバーも休みたいだろうからやはり難しいのか?

我々は思わぬ死や病を恐れ、医療を活用してそのリスクを軽減するために医療保険をつくった。
そして高齢化にともなう障害とともに生きる生活を恐れ、その衝撃を和らげるために介護保険をつくった。

しかしキュアベースの医療からケアベースの福祉へとパラダイムがチェンジするといっても、死生観が変わることなどは戦争や大規模災害、飢餓、疫病のパンデミックでも無い限りなかなか難しいだろう。
「人は死ぬということをわかってもらえない。」といって臨床を離れていった仲間もいた。
「さまよえる障害高齢者たち」なんていうテーマのシンポジウムが開かれたり、「高齢者問題研究会」(高齢者が問題みたいだ)なんてのがあるくらいだから妙案はない。
「自分もそろそろ寿命かと思い、徐々に食べる量を減らして、枯れて死ぬ。」なんてことをこれからの老人が死生観として持っているとも思えないし、結局終末期になって食べなくなったら抗うつ薬をだされて「ま、いいか。」と思わされたり、強制栄養をつづけるためにスパゲッティのようにされたり、それなりの医療行為は受けてしまう方が多いと思われる。

しばらくは一例一例に丁寧にかかわり介護し、看取っていくなかで、家族など関わる人たちの死の教育(デス・エデュケーション)をつづけ、一人一人がどう生き、どう死にたいのかを常日頃から考えていけるような文化を地域に作っていくしかなさそうだ。

参考リンク
日本中に星降るほどの訪問看護ステーションを。開業看護師を育てる会

参考エントリー
「ウェルハウスのぞみサンピア」に思う