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tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

万博も開幕し、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

不況が人生観を変える

2009年05月16日 | 日々是雑感
面白い新聞記事を読んだ。フジサンケイビジネスアイの「技ありマーケティング」だ。3回の連載で、それぞれのタイトルは「(上)節約意識 逆手にチャンス」(5/5付)「(中)大不況は人生観も変える」(5/6付)「(下)こだわり消費には物語性」(5/8付)だ。筆者は電通総研・消費の未来研究部長の四元正弘(よつもと・まさひろ)氏である。

《リーマンショックを契機に、一気に冷え込んだ日本の消費。一部に下げ止まりの兆しもみられるものの、消費者心理は「厳冬」のままだ。しかし、こうした最悪期にもかかわらず、消費者の心をつかんで離さない商品・サービスも存在する。現在の消費実態を分析し、売れる商品づくりのヒントなどを探る》という。

私自身も、最近はデパートへ立ち寄っても、目的のものだけ買うとさっさと立ち去っている。財布のヒモを締めていることもあるが、それ以上に「家には必要なものが揃っているし、これ以上買っては邪魔だ(家が狭くなる)。それほど画期的な新製品が生まれているわけでもないし…」という心理が働くのだ。必ず立ち寄っていたデパ地下も「食べ物は、家で用意しているもので十分」と素通りしている。こういう「厳冬」の消費者心理に対し、売り手はどう対処すればよいのか、記事の要点を列挙してみる。

【(上)節約意識 逆手にチャンス】
《電通総研では、まず同じように絶望のふちに立たされた第1次石油危機後の数年間に注目して消費動向を分析。不況期に特徴的に強まる8つの消費志向性を抽出した。その結果、予想通りと言うべきか、目立って強いのが節約意識である》。
http://www.business-i.jp/news/venture-page/news/200905050002a.nwc

《節約を心掛ける消費者に対する最もストレートな対応は、値下げに尽きる。しかし、愚直に値下げをするだけでは、企業の収益力は著しく低下する。それとともに、消費者の心に生まれる「この商品は安くて当たり前」という思い込みがブランド価値をも傷つけ、その回復には多大な費用と期間を要することにもなりかねない。従って、節約意識に応えるにしても、結果的に消費者とのきずなの強化にも貢献する「技ありマーケティング」という発想が重要になる》。

四元氏は、ユニクロ成功の背景を次のように分析する。《例えば同じ値下げでも、薄利を前提とした単純な値下げにとどまらず、値下げを可能にする仕組み(新技術、新ビジネスモデルなど)にも納得・感心してもらい、企業そのもののファンに昇華させる戦略がそうだ。独り勝ちとも言われるカジュアル衣料品店「ユニクロ」の成功の背景には、そのような消費者心理のメカニズムがあるというのが私の見解である》。

【(中)大不況は人生観も変える】
《大不況は人生観の見直しを迫る効能をもっているのかもしれない。第1次石油危機直後の数年間をみると「家族回帰」と「シンプルライフ」志向が同時に強まった》。
http://www.business-i.jp/news/venture-page/news/200905060003a.nwc

《家族回帰志向の背景には、不況で残業が減り、帰宅が早まると同時に、休日は遠出を避けるようになるので、いやが応でも家族関係が濃くなる事情があるようだ。特に子供が低年齢なほど、理想の家族像を意識する傾向がみられる》《のり巻きが簡単にできる「のりまきまっきー」(バンダイ)や、手打ちパスタを自作できる「パスタパスタ」(タカラトミー)がファミリーに人気だと聞く。日常生活の範囲であっても家族全員で盛り上がれるというプチ・ハレ性が人気の秘訣(ひけつ)であり、「Wii」(任天堂)の大ヒットも同根だろう》。

《シンプルライフ志向は、家族回帰志向と連動しつつも、自宅の中をスッキリとさせて快適に暮らしたいという心理の発露だと解釈できる》《成熟した消費者に対して、我慢や質素のシンプルは不評を買うだけだ。今の消費者は「素(もと)の自分・等身大の自分」を素直に肯定する気質が強いことを踏まえると、今の気持ちにピッタリの軽快かつ健康的なシンプルさを訴求することが重要。しかもシンプルは節約とも同調しやすく、エコにも通じる。上手に使えば、不況の今だからこそ、シンプル化は無敵のコンセプトになり得るのだ》。

「我慢せよ」といわれれば反発したくなるが「健康に良い」「エコだ」となれば「それは大切だ」ということになる。このあたりが消費者心理の妙である。

【(下)こだわり消費には物語性】
《節約意識が高いほど無駄な買い物を極力避けようとするため、結果的に「本物」「定番」「一生モノ」「ナンバーワン」などのうたい文句が一層きくようになる。大不況だからこその「買うなら良品」志向にもなるわけだ。そして、良品志向に付随して、商品の短所やリスクを販売員から聞き出そうとする「生ヤリトリ」志向も石油危機直後に一層強まった》。
http://www.business-i.jp/news/venture-page/news/200905080008a.nwc

《私はこだわりの強い消費者は商品を単に買っているのではなく、商品がもたらす「未来の自分」を買っているのだと言い続けている。別の表現をすると、商品が誘う「消費者自身が主人公」の物語性がなければ、こだわりの消費は生まれてこないのだ》。

《「ターゲット消費者→主人公」「不満→敵」「商品・企業→味方」に置き換えて感動的物語を創作し、そこからマーケティングを発想するやり方が、こだわり消費を誘発する有効策なのではないだろうか。このとき最も重要なのが「ご褒美」。これこそが商品の真の価値であり、ここまで物語を描き切らないと、購入への強い動機は形成できない》。

四元氏は、黒烏龍茶成功の要因をこのように掘り下げる。《例えばサントリー「黒烏龍茶」は脂肪吸収抑制機能を訴求するだけでなく、物語のご褒美として「脂っぽい好物を心置きなく味わえる」というメッセージを発信しているために物語性が格段と高まり、消費者は商品の世界観にスーッと入っていけるというのが私の見方だ》。

《不況下の消費者は普段以上に消費に真剣になる。だからこそ、企業も真剣に消費者に対峙(たいじ)すべきだし、不況脱出後にそのような企業が躍進することは歴史が証明済みだ。要は消費者に振り回されるか、それとも消費者の先を行くか。物語マーケティングの発想ができるかどうかが岐路だと思う》。

四元氏がお書きのように、ユニクロやサントリー「黒烏龍茶」成功の要因は、「安さ」と「健康志向」だけでなく、「値下げを可能にしたビジネスモデル」への信頼感や「少しくらい油っぽいものを食べても大丈夫」というおトク感・納得感だろう。節約志向が徹底すれば、「一生モノを買って大事に使おう」という気にもなる。

買う側としては、上記のような売り手の目論見を見抜き、ムードに流されるのではなく、「未来の自分」のイメージをきちんと持ち、冷静な頭で消費しなければならない。売り手と買い手の知恵比べの時代だ。

※トップ写真は、奈良市中町の霊山寺(りょうせんじ)バラ庭園。08.5.25撮影。
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「しゃぶしゃぶ鹿の子」は生駒牛

2009年05月14日 | グルメガイド
連休明けの木曜日(5/7)、「生駒牛(いこまぎゅう)をご存じですか?」といきなり質問されて、面食らった。奈良県産の牛肉といえば、大和牛(やまとうし)か宇陀牛(うだぎゅう)。あとは「福寿館」と「うし源」のはいばら肉(榛原肉)くらいしか思い当たらない。しかも、この生駒牛とやらは、大変美味しいのだという。

農林部(県庁)の知人に聞いても知らなかったから、ブランドとして確立しているわけではなさそうだ。とはいえ、ものは試し、早速月曜日(5/11)に生駒牛を食べに行ってきた。



生駒牛が食べられるのは、近鉄新大宮駅前の「しゃぶしゃぶ鹿の子」(奈良市大宮町)と四条畷の「肉料理 六平(ろくべい)」(四條畷市田原台)の2軒だけだそうだ。それほど飼育頭数が少ないのだ。私は迷わず「しゃぶしゃぶ鹿の子」のノレンをくぐった。なお奈良市内には、日本料理の「鹿の子」(奈良市高畑町1307-1)という別の店があるので、お間違えなきよう。


しゃぶしゃぶ(3300円)の前菜。生駒牛のたたきに季節の野菜、手作りドレッシング

しゃぶしゃぶ鹿の子は、ケーブルテレビ(近鉄ケーブルネットワーク)に出られたことがあるようで「逸品げっちゅ~」という番組のサイトで紹介されていた。《落ち着いた和風のお店に入ると、カウンター中心の暖かい雰囲気漂う居心地の良い空間が広がります。食材にとことんこだわった店主の谷口さん。お肉は生駒市高山にある小林牧場で大切に育てられた生駒牛を毎週直接仕入れています》。
http://www.kcn.ne.jp/kcn1ch/k-para/getyou/021203/index2.html


1万2千円のステーキコースがお薦めだそうだ。飲み放題がついている

《自慢のしゃぶしゃぶは、生で食べられる極上のロースを贅沢に使用し 野菜は無農薬有機栽培。出汁は、最上級の利尻昆布をふんだんに使っています。人気のお肉は梅ビーフ。梅酒の梅を食べさせて育てたため ほんのりと梅の香りがするとも言われ、あっさりとした油が特徴の逸品だそうです》。


ご主人の谷口利雄さん。九州のご出身だ

お肉を供給されている小林牧場(くろんど池の畔)のサイトには《自然豊な生駒のふもとで黒毛和種を主体に安全な飼料をモットーに、のびのびと飼育しています。「おいしい牛肉は健康な牛から」と考え、血統のよい黒毛和種を開放的な畜舎で飼育しています》とある。
http://homepage1.nifty.com/naniwachiku/guest/chao/kobayasi/kobayasi000.htm


棚にはキープされたボトルがずらり。焼酎が中心だ

この日、私が注文したメニューは、トップ写真の「鹿の子 和牛しゃぶしゃぶ」3300円。前菜から締めのうどんまでのセットになっている。生駒牛は厚めにスライスされ、さっとお湯をくぐらせていただくと、肉の旨みがぱあっと口の中に広がる。こだわり野菜も手作りのタレも、とても美味しい。
http://www.tabi.tv/gourmet/66357/gourmet/p/14/coupon


しゃぷしゃぷ締めのうどん。ちゃんとうどんツユがついている

「鹿の子 和牛お肉おかわり」は2300円で、これを追加すると締めて5600円となる。他に「特選和牛しゃぶしゃぶ」4800円、一品は「和牛塩焼き」1500円、「和牛お造り」2300円など。生ビール(中)は500円だ。


昆布焼酎に刻んだ利尻昆布を加えると美味しい

生駒牛のほか、お店のウリは「利尻昆布」である。産地直送の利尻昆布でしゃぶしゃぶのダシを取るだけでなく、写真のように、昆布焼酎(札幌酒精工業の「りしり」)に浸していただくのである。これは新感覚だ。早速自宅でもマネて飲んでいる。麦焼酎などにダシ昆布を浸して置いておくと、あ~ら不思議、旨みが出てグッと美味しくなるのである。


食べ終えると、日はとっぷりと暮れていた

小林牧場直送の生駒牛が美味しいのはもちろん、ご主人も奥さんも、とても温かくもてなして下さる。それが、たくさんのリピーターが来られる理由になっているのだろう。

こんど定額給付金が出たら、ぜひ1万2千円のステーキコースを食べてみたいと思う。生駒牛の「しゃぷしゃぶ鹿の子」、ぜひいちどお試しいただきたい。

※奈良市大宮町5丁目3-20 アクシス(AXIS)1階
(大宮通の「HONDA」のすぐ裏だが、不思議と見逃しやすいのでご注意を。)
℡0120-066303(0742-35-6006) 営業時間:18:00~23:30(予約が無難) 日曜休
http://www.digi-pa.com/pc/com/eat/shop/e_details.php?k_no=24
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鳥光(とりみつ)阪神尼崎店

2009年05月12日 | グルメガイド
以前、阪神なんば線で尼崎に出張したついでに、南京町(神戸市)で中華を食べてきた、と書いたところ、「それは惜しいことをした。尼崎にも美味しい店があったのに」と言われてしまった。確かに、尼崎にもたくさん良い店がある。で、大阪に出張した帰り、今度は尼崎に立ち寄ることにした。尼崎へは、梅田から阪神電車でわずか7~8分である。市外局番も大阪と同じ「06」だというから、ほとんど大阪市内である。
※阪神なんば線で「南京町」へ
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/952f776eb31169277da50df559d7208b



阪神尼崎駅前(北へ徒歩1分)に「鳥光(とりみつ)」(阪神尼崎店)という焼鳥屋さんがあった。本店は神戸市須磨区だ。京都で創業されたのが1892年(明治25年)というから、今年で117年という老舗である。
※鳥光の公式ホームページ
http://www.torimitu.com/


時代劇にでも出てきそうな店内

尼崎店の開店は1975年(昭和50年)だそうだが、建物は古色蒼然としている。別の商家として営業していたのだろう。真田幸村と同じ六文銭のマークがついていたので、幸村と関係があるのだろうかと期待して店に入った。



お店のHPに「鳥光のこだわり」が載っていた。《創業明治25年から守り続けられる秘伝の「たれ」を使用しています。百年余り継ぎ足しで使う「たれ」には、旨味がじっくり蓄えられ、焼鳥に良く馴染みます。鳥光の「焼鳥」は上質な鳥肉に深みのある「たれ」が乗る、絶妙の味わいです》。


2階でも焼けるようになっている

《炭火は強い火力を持つと同時に、赤外線効果を持っています。だから、表面を焦がしすぎず、中までやわらかく火を通すことが可能なのです。 また、炭の火が、煙を燻し、なんとも言えず香ばしいという香りで焼き上がります。鳥光では炭の中でも最高級と言われる紀州備長炭を使用しています》《炭火は燃え方も一定ではなく、炭の大きさも形もまちまちです。 この扱いにくい炭火を使って、最高の状態に焼き上げるのに、熟練の焼き手は欠かせません。鳥光では、100年余培った技術を伝えつづけています》。


2階の座敷。他にも部屋があって、とても広い

ところで「六文銭」であるが、店員さんにお聞きすると、経営者の姓が「真田」さんなので、六文銭マークをつけているのだそうだ。残念ながら紀州九度山(私の故郷で、幸村が配流されていた)や信州上田(真田氏の本拠地)とは関係がなさそうだ。


お通し、肝焼き(タレ 3本)400円、地鶏ネギ身焼き(塩 2本)430円とお酒

さて、メニューである。たくさんの焼鳥メニューが揃っている。私は1品ものを注文したが、割安な2500円の「おすすめコース」(先付、鳥刺身、串焼き盛合せ、鳥から揚盛合わせ、おすすめ一品 ただし2人前から注文)や、会席料理(3680円~)もある。


皮(塩 3本)400円、なんこつ串(塩 2本)400円。焼鳥は、皮に始まり皮に終わる

秘伝のタレに漬けたタレ焼きも良いが、私には、鳥の旨みがダイレクトに伝わる塩焼きが美味しかった。味噌漬焼きは、あまり他店で見かけないメニューだが、これはイケる。


手羽味噌漬焼き740円

それにしても大きな焼鳥屋さんだ。こんな規模の店は奈良では見かけない。味も雰囲気も良いし、値段はリーズナブル。こんなお店の2階で、歓送迎会でもやってみたいものだ。

阪神尼崎へは、近鉄奈良駅から快速三宮行きで約50分という近さである。ぜひ、いちどお立ち寄りいただきたい。
※ぐるなびの同店サイト
http://r.gnavi.co.jp/k681201/
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大和五條の「藤岡家住宅」

2009年05月10日 | 奈良にこだわる
4/25(土)、藤岡家住宅(五條市近内町526)を訪ねた。昨年(08年)11/11の「藤岡家住宅の修復が完成」という嬉しいニュースは、まだ記憶に新しいところだ。奈良新聞(08.11.12付)の記事からピックアップすると、
※同住宅を管理する「NPO法人うちのの館」の公式ホームページ
http://www.uchinono-yakata.com/

《修復でよみがえる感動―五條・「藤岡家住宅」開館記念式典 五條市近内町の登録有形文化財「藤岡家住宅」が2年8カ月をかけて修復され、11日、関係者や地域住民ら約120人が出席して開館記念式典が行われた。NPO法人うちのの館(田中修司理事長)の運営で一般に公開される》。


貴賓の間から母屋を振り返ったところ

《同住宅は、寛政9(1797)年の内蔵や江戸時代から明治後期にかけての建造物10棟(土塀、薬医門含む)を有し、平成18年3月に登録有形文化財の指定を受けた。藤岡家は江戸時代からの庄屋で、同住宅に住んだ最後の当主、藤岡長和さん(ふじおか・ながかず 明治21―昭和41年)は和歌山県などの官選知事を務める一方、雅号の玉骨(ぎょっこつ)を名乗り、与謝野鉄幹、晶子夫妻、高浜虚子らとも親交のあった文化人》。晩年は、南都銀行の役員もされていたそうだ。


森鴎外書の扁額

《藤岡家の現当主で長和さんの孫、藤岡宇太郎さん(60)=茨城県在住=が同住宅の保存、活用について「地域で活用されるなら」と私費修復を決断。有志の輪を広げ、平成18年3月、修復作業に着手していた》。
http://www.nara-np.co.jp/n_soc/081112/soc081112a.shtml


蔵の手前にある坪庭。アサガオ(小便器)がきれいだ


蔵が展示場になっている

なお、私がタイトルに「大和五條の…」とつけたのは、ならまち(奈良市元興寺町)にも藤岡家住宅(重要文化財)があるからだ。たまに混同する人がいるので、お間違えなきよう。
http://narashikanko.jp/kan_spot/kan_spot_data/w_si172.html

玉骨と復元建物のことは、ならリビングの特集記事「奈良の句碑を訪ねて」(08.9.19付)に詳しい。《玉骨は文化人との交流も幅広く、与謝野鉄幹・晶子、石川啄木、森鴎外など当時の名だたる文人たちと交わされた書簡や直筆の書画など、貴重な資料も多く残っています》。


玉骨愛用の品々。とてもダンディーな方だったとか


ラジオは健在で、ニュースが流れていた。蓄音機は日本で初めて製造されたもの

《平成10年に台風で大きな被害を受けた「藤岡家住宅」を現当主が復元し、今後は資料の展示だけでなく俳句会やパソコン教室など文化交流の場、金剛登山の休憩所としてNPO法人「うちのの館」によって管理運営されます。今年の2月には庭に玉骨の句碑が建立されました》。


貴賓の間の北にある別座敷


屋久島の杉が使われている

《「200年残ってくれたものを後の時代につなげたい。みんなの力が集まってできた館。みんなが集まる場となって欲しい」と理事長の田中修司さん(78)。「玉骨さんの句を読んでいると、次に進もうという前向きさを感じます」とは同館学芸員の川村優理さん(50)。文化財とは建物や資料だけでなく、これらを創り、残してきた人たちのことなのかもしれません》。

http://www.naraliving.com/special/spe_080919.html


茶室(貴賓の間の西奥)


トイレというより厠(かわや)と呼ぶ方がふさわしい。究極の和空間

田中さんは(株)柿の葉すし本舗たなかの創業者(現・相談役)でいらっしゃる。川村さんは、日本児童文芸家協会会員で、生涯学習インストラクター(古文書分野)。現在、奈良日日新聞に《うちのの里を眺めると 登録有形文化財「藤岡家住宅」学芸員日記》を連載中である。私が訪れた日は、このお2人と事務局長の岩本孝さんのご厄介になった。


貴賓の間から中庭を望む。ここでNHK奈良のドラマ「万葉ラブストーリー 春」の撮影があった


大広間

俳号の「玉骨」は、大辞泉によると「1.貴人または美人の骨。2.梅の幹枝をたとえていう語」とある。私は「玉骨はたとい南山(吉野)の苔に埋るとも、魂魄(こんぱく=死者のたましい)は常に北闕(ほっけつ=京都)の天を望まん」という太平記に記された後醍醐天皇の遺言から取られたものだと思っていた(1.の意味)が、どうやら「2.」の意味のようである。庭には樹齢250年の「長兵衛梅」があった。


田中さんと川村さんが、屏風を出して下さった


花鳥屏風(江戸時代後期)。「仮住みといへども伝家の屏風なる」と玉骨の句にある


薬医門を望む

それにしてもすごいお家である。NHK教育テレビの「美の壺」に推薦したいくらいだ。屏風に襖(ふすま)、床柱に天井、といったところだけでなく、電灯の笠やスイッチ、トイレや便器など、細部に至るまで「美」を追求されている。このお屋敷については、『月刊大和路 ならら』(09年3月号)が特集を組んで紹介しているので、ご興味のある方はこちらをご覧いただきたい。
http://www.narara.co.jp/sub/0903.html


電灯の笠も、こんなにお洒落だ


隣室の光が欄間に投影し、こんなきれいな影絵ができる


スイッチにも手が込んでいる

さて、見学のあとはお茶。邸内には、玉骨の娘の部屋をリフォームした茶房「梅が枝」がある。この日はまだ4月だったので、華やかな桜の板絵が掛けられていた。



喫茶メニューはいくつかあって、ほうじ茶と大和のつるし柿(または丁稚ようかん)400円、抹茶と干菓子500円、コーヒー(または紅茶)と小さいお菓子400円など。下の写真はつるし柿(あんぽ柿=ソフトな干し柿)と丁稚ようかんを並べたところである。柿は柔らかくジューシーで甘く、ようかんはあっさり・つるんとしていて、どちらも美味しかった。



邸内は、人数がまとまれば、ボランティア・スタッフの方が案内して下さる。ぜひ説明をお聞きになりながら、見学されることをお薦めする。

田中理事長さん、川村学芸員さん、岩本事務局長さん、当日はご案内有り難うございました。またお邪魔しますので、どうぞよろしくお願いします。
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「プロトンダイニング」はフルコース3800円!

2009年05月09日 | グルメガイド
本年(09年)3/18にオープンした「プロトンダイニング」(奈良市大宮町6-3-10)をご存じだろうか。プロトンサポート(株)(二宮一就社長)が運営しているフランス料理店で、何しろフルコース(9品)が3800円、ショートコース(7品)が2800円という安さなのだ。実は、この安さには秘密がある。

お店のHPには《「食」は安全でありたい「味」は「自然」でありたい「材料」は「新鮮」でありたい「食事」はゆっくりとくつろいでいただきたい これらの願いを実現する為に、全国のプロトン仲間の協力とプロトン技術の結集でこのダイニングができました。プロトンには秘密があります》(コンセプト)。
http://www.proton-dining.com/

では「プロトン技術」とは何か。話は昨年(08年)11/21に開催された「食」の商談会(南都銀行主催)にさかのぼる…。
http://www.nantobank.co.jp/news/081104.htm


ユースフル・フリーザー(08.11.21)

この商談会に、プロトンサポートの親会社、(株)菱豊フリーズシステムズ(二宮一就社長)が出展していた。そこに写真の「ユースフル・フリーザー」が展示されていたのだ。説明書きには《通常の凍結では「氷の粒」が大きくなり、解凍後の品物の品質が低下してしまいます。「氷の粒」を大きくしないようにするには、「多くの氷核を一度に作り、大きな氷結晶の成長を妨げる」ことと考えます》とある。解凍には、低温蒸気を利用した同社の「ヒュージョン・ディフリーザー」を使う。
http://www.freeze01.com/puroton.html


扉を開けると、にぎり寿司が冷凍されているのが見える(08.11.21)


解凍された寿司。冷凍ものとは信じられない味だった(09.4.14撮影。以下同じ)

つまり通常の冷凍では氷の粒がふくらんで食物の細胞を破壊する。だから解凍時にドリップが出るのだが、この技術だと、氷の粒が小さいので細胞を壊さず、解凍時にも旨みが流れ出ないのだ。なおプロトンとは「陽子、つまり水素の原子核(H+)」のこと。水素の原子核は陽子1個だけで構成されるので(つまり水素イオンは陽子そのものなので)、水素イオンはプロトンと呼ばれる。





その後、今年の4月になって、菱豊フリーズシステムズはこの技術で第2回奈良県ビジネス大賞の最優秀賞を受賞した。表彰式は5/20に行われる。
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-8595.htm




野菜の下に和牛が隠れている

というわけで、「プロトンダイニング」では、知らないところで優れた冷凍・解凍技術が使われているため、この低価格・高品質が実現したというわけである。







コースメニューは週ごとに替わり、店内では毎晩生演奏が無料で楽しめる(アーチストは日替わり)。
※必見!お店のブログ「プロトン日記」。食べてから見るか、見てから食べるか…
http://protondiary.at.webry.info/



あとで聞くと、ならコープ(奈良市民生協)で売っているサンドイッチや天むすも、この技術で冷凍されたものだと知った。以前から、そうと知らずにいただいていたのである。
http://www.kakinohasushi.com/tabekata/


冷凍柿の葉寿司(「柿の葉ずしのみよし野」のホームページより。以下同じ)


冷凍いなり


冷凍カツサンド

この店は午後11時まで開いている。「奈良には美味しいものがない」とか「奈良の店は閉店が早いからつまらない」などとよく言われるが、探せばまだまだこのような店はたくさんあるのだ。

プロトン技術のことを内緒にしてご家族をお連れになり、あとで「これって、実はね…」と種明かしするのも面白い。県最優秀賞を受賞した独自技術で誕生したこのお店、ぜひいちどお訪ねいただきたい。
※同店を紹介する「クレーる」のサイト
http://www.e-claire.info/shop/show/id/518

奈良市大宮町6-3-10藤本ビル1F(奈良信用金庫の西隣)℡0742-36-7665
営業時間 17:00~23:00(ラストオーダー 22:30) 不定休
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