tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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大和五條の「藤岡家住宅」

2009年05月10日 | 奈良にこだわる
4/25(土)、藤岡家住宅(五條市近内町526)を訪ねた。昨年(08年)11/11の「藤岡家住宅の修復が完成」という嬉しいニュースは、まだ記憶に新しいところだ。奈良新聞(08.11.12付)の記事からピックアップすると、
※同住宅を管理する「NPO法人うちのの館」の公式ホームページ
http://www.uchinono-yakata.com/

《修復でよみがえる感動―五條・「藤岡家住宅」開館記念式典 五條市近内町の登録有形文化財「藤岡家住宅」が2年8カ月をかけて修復され、11日、関係者や地域住民ら約120人が出席して開館記念式典が行われた。NPO法人うちのの館(田中修司理事長)の運営で一般に公開される》。


貴賓の間から母屋を振り返ったところ

《同住宅は、寛政9(1797)年の内蔵や江戸時代から明治後期にかけての建造物10棟(土塀、薬医門含む)を有し、平成18年3月に登録有形文化財の指定を受けた。藤岡家は江戸時代からの庄屋で、同住宅に住んだ最後の当主、藤岡長和さん(ふじおか・ながかず 明治21―昭和41年)は和歌山県などの官選知事を務める一方、雅号の玉骨(ぎょっこつ)を名乗り、与謝野鉄幹、晶子夫妻、高浜虚子らとも親交のあった文化人》。晩年は、南都銀行の役員もされていたそうだ。


森鴎外書の扁額

《藤岡家の現当主で長和さんの孫、藤岡宇太郎さん(60)=茨城県在住=が同住宅の保存、活用について「地域で活用されるなら」と私費修復を決断。有志の輪を広げ、平成18年3月、修復作業に着手していた》。
http://www.nara-np.co.jp/n_soc/081112/soc081112a.shtml


蔵の手前にある坪庭。アサガオ(小便器)がきれいだ


蔵が展示場になっている

なお、私がタイトルに「大和五條の…」とつけたのは、ならまち(奈良市元興寺町)にも藤岡家住宅(重要文化財)があるからだ。たまに混同する人がいるので、お間違えなきよう。
http://narashikanko.jp/kan_spot/kan_spot_data/w_si172.html

玉骨と復元建物のことは、ならリビングの特集記事「奈良の句碑を訪ねて」(08.9.19付)に詳しい。《玉骨は文化人との交流も幅広く、与謝野鉄幹・晶子、石川啄木、森鴎外など当時の名だたる文人たちと交わされた書簡や直筆の書画など、貴重な資料も多く残っています》。


玉骨愛用の品々。とてもダンディーな方だったとか


ラジオは健在で、ニュースが流れていた。蓄音機は日本で初めて製造されたもの

《平成10年に台風で大きな被害を受けた「藤岡家住宅」を現当主が復元し、今後は資料の展示だけでなく俳句会やパソコン教室など文化交流の場、金剛登山の休憩所としてNPO法人「うちのの館」によって管理運営されます。今年の2月には庭に玉骨の句碑が建立されました》。


貴賓の間の北にある別座敷


屋久島の杉が使われている

《「200年残ってくれたものを後の時代につなげたい。みんなの力が集まってできた館。みんなが集まる場となって欲しい」と理事長の田中修司さん(78)。「玉骨さんの句を読んでいると、次に進もうという前向きさを感じます」とは同館学芸員の川村優理さん(50)。文化財とは建物や資料だけでなく、これらを創り、残してきた人たちのことなのかもしれません》。

http://www.naraliving.com/special/spe_080919.html


茶室(貴賓の間の西奥)


トイレというより厠(かわや)と呼ぶ方がふさわしい。究極の和空間

田中さんは(株)柿の葉すし本舗たなかの創業者(現・相談役)でいらっしゃる。川村さんは、日本児童文芸家協会会員で、生涯学習インストラクター(古文書分野)。現在、奈良日日新聞に《うちのの里を眺めると 登録有形文化財「藤岡家住宅」学芸員日記》を連載中である。私が訪れた日は、このお2人と事務局長の岩本孝さんのご厄介になった。


貴賓の間から中庭を望む。ここでNHK奈良のドラマ「万葉ラブストーリー 春」の撮影があった


大広間

俳号の「玉骨」は、大辞泉によると「1.貴人または美人の骨。2.梅の幹枝をたとえていう語」とある。私は「玉骨はたとい南山(吉野)の苔に埋るとも、魂魄(こんぱく=死者のたましい)は常に北闕(ほっけつ=京都)の天を望まん」という太平記に記された後醍醐天皇の遺言から取られたものだと思っていた(1.の意味)が、どうやら「2.」の意味のようである。庭には樹齢250年の「長兵衛梅」があった。


田中さんと川村さんが、屏風を出して下さった


花鳥屏風(江戸時代後期)。「仮住みといへども伝家の屏風なる」と玉骨の句にある


薬医門を望む

それにしてもすごいお家である。NHK教育テレビの「美の壺」に推薦したいくらいだ。屏風に襖(ふすま)、床柱に天井、といったところだけでなく、電灯の笠やスイッチ、トイレや便器など、細部に至るまで「美」を追求されている。このお屋敷については、『月刊大和路 ならら』(09年3月号)が特集を組んで紹介しているので、ご興味のある方はこちらをご覧いただきたい。
http://www.narara.co.jp/sub/0903.html


電灯の笠も、こんなにお洒落だ


隣室の光が欄間に投影し、こんなきれいな影絵ができる


スイッチにも手が込んでいる

さて、見学のあとはお茶。邸内には、玉骨の娘の部屋をリフォームした茶房「梅が枝」がある。この日はまだ4月だったので、華やかな桜の板絵が掛けられていた。



喫茶メニューはいくつかあって、ほうじ茶と大和のつるし柿(または丁稚ようかん)400円、抹茶と干菓子500円、コーヒー(または紅茶)と小さいお菓子400円など。下の写真はつるし柿(あんぽ柿=ソフトな干し柿)と丁稚ようかんを並べたところである。柿は柔らかくジューシーで甘く、ようかんはあっさり・つるんとしていて、どちらも美味しかった。



邸内は、人数がまとまれば、ボランティア・スタッフの方が案内して下さる。ぜひ説明をお聞きになりながら、見学されることをお薦めする。

田中理事長さん、川村学芸員さん、岩本事務局長さん、当日はご案内有り難うございました。またお邪魔しますので、どうぞよろしくお願いします。

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