tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(25)ブログと写真ギャラリー

2009年05月21日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
日曜日(5/17)の新聞コラム(奈良日日新聞「悠言録」)に、こんな話が載っていた。《JR奈良駅前バス停で中年の夫婦に「法隆寺へはタクシーで何分かかる」と尋ねられ「なぜ車で」と聞くと「奈良市内にあると思って」》《5年ほど前京都へ向かう近鉄特急で隣の席の4人連れの娘さんの1人が「大きな宅地造成じゃない」と言った。窓外に見えたのは平城宮跡だった。連れの「昔の奈良の都の跡でしょう」の一言でこの話は終わった》

知識人も油断できない。《「今年のお花見は吉野へ行った。吉野は京都かと思ったら奈良だった。どうも私の場合は行ってみなければわからない。京都のどこか奥まった山だと勘違いしていた」。これは新潮社の月刊PR誌の「波」平成4年6月号のエッセー「魚眼レンズのお花見」の書き出しだ。書いた人は作家尾辻克彦》《この一連の勘違いの共通点は、奈良は正しく知られていないに尽きる》

尾辻克彦(赤瀬川原平)は芥川賞作家であるが、それでもこのレベルなのだ。全く奈良は正しく知られていない、逆にいえば情報発信が不足しているのである。吉野山が世界遺産(紀伊山地の霊場と参詣道)に登録された今も、この状況が大きく改善されたとは思えない。

奈良に来る人は、どうやって情報を入手しているのだろう。奈良のむらづくり協議会の「奈良観光の評価に関する調査結果の概要」(08年1月)によれば、ホームページ(29.9%)、新聞(21.2%)、テレビ(14.6%)、口コミ(13.9%)の順である。しかしその評価で「十分得られた」は31.5%に過ぎない。
http://www.naranomura.jp/report_survey.pdf

「今後欲しい情報」の設問には、季節ごとの見どころ情報・楽しみ方など(51.1%)、地元の人しか知らないような穴場情報(29.1%)に答えが集中し、入手方法は「インターネット」が45.8%と、ほぼ半数を占めている…。

ここまで書いてきて、当ブログを始めた頃(05年11月)のことを思い出した。30年近く奈良に住み続けているので、地元の季節の移ろいや、街の話題などをアップすれば良いだろうと考えた。好きな花の写真や、美味しい食べ物屋さんのことなどをぼちぼちと書くだけなら、簡単だ…。

そのうちアクセス数もコメントもどんどん増えてきたので、「これはマジで取り組まなければ」と、いろんなトピックを織り交ぜるようになった。いきおい文章の量が多くなり、写真点数も増えていった。おかげさまで、今では1日平均700人にアクセスいただき、1日約2000ページビュー(記事数)も読んでいただいている。電卓をたたいてみると、この3年半の累計で、のべ45万人もの方にアクセスしていただいた計算になり、自分でも驚いている[=3.5年×365日×(700÷2)]。図らずも上記アンケートで明らかになった傾向(季節のみどころや穴場情報をネットで情報収集する)に、うまくマッチしたのだ。

今は宿泊予約でも、旅行代理店ではなく、じゃらんnetや楽天トラベルなどの旅行情報サイトから申し込むケースが最も多い。この「じゃらんnet」は宿泊施設のための有料オプション(販促用)として、ブログや写真ギャラリー機能(200枚の写真を閲覧できる)を用意している。通り一遍の説明ではなく、施設や観光地のリアルタイムの情報を、多くの画像とともに知らせたいということなのだろう。確かにこういう情報は、既存旅行代理店のパンフレットからうかがい知ることはできない。

「正しく知られていない」奈良としては、このような県外への情報発信にこれからも一層注力しなければならない。それは行政だけではなく、民間業者や県民にも求められている。

もっといえば、県民はもっと地元のことを勉強しなければならない。一昨日、奈良に転勤してまだ1か月という方にお目にかかった。お住まいは大阪で、奈良での勤務は初めてという管理職である。「何か、奈良の美味しい食べ物を発見されましたか?」とお聞きすると「いえ、ランチに美味しい所を知っているかと(県内在住の)社員に聞いても、教えてくれるのは(大手外食の)チェーン店ばかりで…」と頭をかく。しかし彼の会社は、情報に敏感なはずの広告代理店なのである。

先週も、さるメディアの営業担当の方とお会いする機会があって、地元出身・在住の何人かの社員さんに「他府県の方に奈良の食べ物を紹介する場合、何を推しますか?」と質問した。しかし考え込むばかりで、なかなか答が出てこない。数分後にやっと出てきた答えは「柿の葉寿司」と「三輪そうめん」という平凡なものだった。せめて「吉野山ひょうたろうの柿の葉寿司」とか「長岳寺の庫裏でいただくにゅうめん」といった「地元の人しか知らないような穴場情報」を盛り込んでほしかったのだが…。

県外の方が奈良を知らないのは当然である。だから県外に向けては情報発信に注力しなければならない。メインツールはインターネットであり、提供すべき情報は「季節ごとの見どころ情報・楽しみ方」と「地元の人しか知らないような穴場情報」である。

一方奈良県民は情報提供者側として、自分で情報収集して、口コミでも良いから、県外の人に機会をとらえてお伝えすべきである。そのためには、あらかじめ自分で足を運んでおかなければならないが、そもそも県民が自県のことをよく知らない。知らないから奈良の良さを伝えられない、という悲惨な状況になっている。

以前、茂木健一郎が奈良で開かれたシンポジウムで、こんなことを言っていた。《奈良の人はもっと地元に誇りを持たなければいけない。先日バリ島に行ったが、島民は「ここが世界の文明の中心だ」としきりに言っていた。奈良の人も「ここが文明の中心」とアピールすべきだ。そのためには、本気でそのように思わなければいけない》。県民が訪れる人に「奈良は文明の中心だ」と言って、誰が迷惑するだろう。
※「祈りの時代」を考える(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f7a3adcef3fc44de1f4430ef818fc648

冒頭の新聞コラムは《奈良のみやげ物店の一番目立つところに桃割れ髪で正座した人形が京都名物の生やつはしの宣伝をしている。奈良の独自性は? 来年の大事業を控え徹底したPRを!》と締めくくられている。最後の「!」に筆者のイラ立ちがこもっている。1300年祭で奈良に来られるお客さまのために、われわれ県民がすべきことは数多い。

※トップ写真は県庁前(奈良公園)。08.5.1撮影。
コメント (7)
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