tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

増田悦佐著『大阪経済 大復活』

2008年02月12日 | ブック・レビュー
増田悦佐(ますだ・えつすけ)氏は経済評論家で建設・住宅・不動産アナリスト、プリヴェ企業投資の常務執行役員でもある。

この2月7日(木)~8日(金)に開催された第46回関西財界セミナーでは第五分科会(テーマ:新たなコンバージェンス[=融合]型産業の創出)に参加し、「東京圏のマネではない関西圏独自の成長戦略が必要」と提言された。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/200802/news0208.html#02081

そんな増田氏を囲む勉強会が奈良市内で開かれた。私のブログのコメント欄でおなじみの南都さん(=証券アナリスト)にお世話いただき、大雪に見舞われた2/9(土)の午後5時、氏を含む総勢7人が江戸川ならまち店(奈良市下御門町)に集まった。事前にご用意いただいた資料は財界セミナーでも使われた本格的なものだったが、氏にはこれを1時間でご説明いただき、あとは食事しながらの質疑応答となった。

この勉強会に参加されなかったブログ読者の皆さんはぜひ、増田悦佐著『大阪経済大復活』(PHP研究所刊)をお読みいただきたいと思う。氏の主張はすべて、この著書に凝縮されている。

版元の解説には《30年間の停滞と地盤沈下を超えて、大阪地域経済、関西地方経済は飛躍的な成長期を迎えようとしている。本書では、その情況を詳しく分析するとともに、それをさらに加速させるための7つの具体的提言を大胆に行なう》とある。
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69340-8

以下、同書および勉強会(および関西財界セミナー第5分科会)で氏が提言された「大阪(関西)経済完全復活」のための7項目をかいつまんで紹介する。

1.新幹線の大阪駅乗り入れと、京阪神通勤鉄道の利便性(ネットワーク)改善を。
東京圏に比べ関西圏では、鉄道を利用しようとすると、とても不便(よそ者に不親切)。乗換駅の総合駅化で魅力的な街が生まれる。

2.大阪市中心部(梅田、中之島、心斎橋、難波)に4つの都心型キャンパスを。
大学は人口吸引力の高い機関。大阪市の大学生比率(居住人口に占める割合)は、全国の主要都市(55都市)中、下から4番目。

3.人口減少・少子高齢化対策にもなる保育所・幼稚園の大増設を。
大阪府の、小さな子供を持った女性の就労比率は全国でも最下位レベル。

4.大阪商人の小売力を生かしたデパート集客特区の制定を。
大阪の小売施設投資は、圧倒的な過小投資だった。都心部商業施設の活性化は、大きな意義がある。

5.町工場集積地帯の老朽工場建て替え、耐震補強、道路拡幅を支援する基金の創設を。
工場誘致に巨額の資金を投じるより、既存の町工場を安全で環境の良い就労環境に変える努力に資金投入を。

6.大阪湾岸地域(臨海埋め立て地帯)を東アジアの物流ハブに。
東アジア諸国との貿易の拡大に牽引されて大阪港のコンテナ荷扱い量が順調に増加。大阪港周辺は画期的に成長する。

7.関西発のロボットに海洋堂おたくフィギュアの感性を。
関西はおたく文化発祥の地。大阪のロボット技術に海洋堂(本社=門真市)の特性を取り入れよ。

私が目からウロコだったのは、「工場等制限法」のこと。この法律により1964年から、大阪湾岸沿いの地域で、大規模工場と大学キャンパスの新増設が全面禁止されていたそうだ(東京圏も、59年から禁止されていた)。この法律のせいで、大阪経済は過去30年間地盤沈下を続けていた。それが02年夏に撤廃されたことから設備投資が画期的に拡大し、それが雇用の拡大などに波及しているという。
※参考:なか見!検索ができるAmazonの同書サイト
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%A4%A7%E5%BE%A9%E6%B4%BB-%E5%A2%97%E7%94%B0-%E6%82%A6%E4%BD%90/dp/4569693407

それにしても私たち関西人には、元気が湧いてくるとても有り難いお話であった。

大雪の中、ご足労いただいた増田氏と、お世話いただいた南都さん、そして参加いただいた皆さんには、厚くお礼申し上げます。有り難うございました。

※参考:福嶋聡氏の的確な書評が読めるサイト
http://www.jimbunshoin.co.jp/rmj/crmaf72.htm

※写真は、大阪地下鉄中央線・朝潮橋駅付近。07.10.10撮影。

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「鹿男あをによし」第4話 | トップ | 同時進行!平城遷都1300年(10) »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
新大阪の機能性 (横田)
2008-02-12 23:38:18
新大阪駅から東海道新幹線を大阪駅(北側かな?)へ延伸するのは物理的には可能そうだけど、JR東海は「全部そっちで作って」と言いだしそう。

新大阪とUSJの交通機関については、もしかしたら既に書かれているかもしれませんが、「はるか」「くろしお」が西九条に停まるので、この案内の強化と、新幹線乗り継ぎ自由席(300円)を購入しやすいようにすればいいと思う。(JR東海→JR西の間の中間改札で特急券を回収されてしまうので、JR東海の中で購入できるようにするか、JR西で乗車券の経路や刻印された通過時間を判断して融通して発券するようにすれば良いのに)
新神戸より西から奈良だといきおい新大阪乗り換えになるので、同様に「はるか」「くろしお」で天王寺で後続の奈良行きに同一ホームで乗り換えさせられますね。

大学誘致にしても学費・生活費を稼ぐためのバイト環境も必要になりそうな気もするけど…どうなんだろ?
返信する
ソフトパワー (南都)
2008-02-13 00:16:59
勉強会お疲れ様でした。

非常に活発な意見交換、議論が出来て良かったです。

関西は、大阪の吉本にしろ、海洋堂にしろ、京都の映画スタジオにしろ、能や文楽にしろ、ソフト力が素晴らしいのでもっと活かせる仕組みを考えるべきでしょうね。

そういう意味では正倉院展の運営や国立博物館の魅せ方など奈良もソフト発信力でやるべき余地は大きそうです。

それにしても大学生の町として奈良が意外に上位とは驚きでした。
是非、奈良女、奈良教、奈良先端技大等に匹敵するか或いはそれ以上の教育機関には来てもらいたいものです。
海外名門校のアジア哲学科や文化財研究科、美術史科などが望ましいと思えるのですが。。。
返信する
大学の力 (tetsuda)
2008-02-13 04:08:17
横田さん、南都さん、コメント有難うございました。

シルク博のとき、JR奈良→新大阪の直通列車が走り、これが私たち住民にとっても、とても便利でした。途中から貨物線を走り、福島あたりでは地上からホテルプラザが眺められたという記憶があります。

> 学費・生活費を稼ぐためのバイト環境も必要になりそうな気もするけど…どうなんだろ?

市内だと、かえって心配ないのでは?今のように郊外に大学があると、とても不便です。そもそも大阪には、学生街というものがほとんどありません。

> 大学生の町として奈良が意外に上位とは驚きでした。

> 海外名門校のアジア哲学科や文化財研究科、美術史科などが望ましいと思えるのですが。

かつて全国一学生比率の高い町として、天理市の名前が上がっていましたが、奈良市がこんなに高いとは意外でした。

今、ヨーロッパのお金持ちの間で、家の内装を和風にしたり、和風のインテリアを取り入れるのが人気だそうですね。和食もそうだし。いろんな観点から奈良のソフトを見直し、うまく情報発信することが大切だと思います。
返信する
恥ずかしながら・・・ (蔵武S)
2008-02-13 09:51:46
 最初、タイトルを読んだ時は「なぜ大阪経済大学(通称“ダイケイダイ”)が話題になるのかな?」と思い、余りの自分自身の経済オンチというか社会的無智に赤面です。ところで学生比率の高い町という話はどこからの引用ですか? この書にかかれてあるのでしょうか。京都といい、東京といい、古本屋の多い町はいいですね。学生比率と古本屋比率は比例するのだろうか。ある知人は数年前「古本屋するなら天理やで」と言ってました。
返信する
古本屋比率 (tetsuda)
2008-02-14 05:56:36
蔵武Sさん、コメント有難うございました。

> なぜ大阪経済大学(通称“ダイケイダイ”)が話題になるのかな?

関西人はつい「大阪経済大 復活」と読んでしまいますね。

> 学生比率の高い町という話はどこからの引用ですか? 

主要55都市の大学生比率が、この本に出ています。出所は(財)北九州都市協会『住みよい都市-全国主要都市の比較調査-』(2004年、共同通信社刊)だそうです。京都市が1位、奈良市は11位です。

> 学生比率と古本屋比率は比例するのだろうか。
> ある知人は数年前「古本屋するなら天理やで」と言ってました。

東京の神田や早稲田は、とても充実した古本屋街ですね。やはり学生が多いと古本屋さんは多いようです。天理も良い市場では。私もたまに、豊中駅前のBOOK・OFFにくり出すことがあります。100円コーナーで掘り出し物を見つけるのが楽しみです。
返信する

コメントを投稿

ブック・レビュー」カテゴリの最新記事