tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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同時進行!平城遷都1300年(10)

2008年02月13日 | 平城遷都1300年祭
昨日(2/12)、いよいよ平城遷都1300年祭の「実施基本計画(案)」が発表された。実施基本計画は過去にも発表されたことがあるが、今回のものは荒井知事に交代し、事業が見直されたことに伴う「修正計画」だ。奇しくも「同時進行…」シリーズ10回目で全体計画を紹介するめぐり合わせとなった。

柿本前知事時代には協会事業規模は350億円(うち200億円は民間寄付と入場料収入)で計画されていたが、現在は100億円(20億円は民間、80億円は県と奈良市が出捐)と下方修正されている。また名称も、これまでの「平城遷都1300年記念事業」が「…祭」に変更され、やっと呼びやすくなった。ざっと概要を紹介すると、

1.会期…平成22(2010)年 1月1日から12月31日
2.会場…平城宮跡(主会場)、奈良県内、関西等の各地
3.構成…平城宮跡事業、県内各地事業、関連広域事業、事前展開事業の4つ
4.参加者見込み…平城宮跡事業 約200~250万人(記念イベント全体 約1,200~1,300万人)

協会ホームページには《具体的な事業展開としては、平城宮跡の国営公園化と相まって、恒久・継続、全県・広域型に見直し、平城宮跡では、2010年秋の「平城遷都1300年記念祝典」開催のほか、基本的に無料・開放型で、往時の再現された施設活用を中心に、歴史文化を実体験できる展示や催事等を計画します。県内各地では、2010年の1年間を通して、国宝など“本物の魅力”に親しめる周遊型イベント等の展開を図ります。さらに、これらの事業に関連して、県内外の各地において、コンベンション、フォーラム、古京ゆかりの各地等との連携イベントなどの取り組みを進めます》とある。目玉は宮跡のパビリオン「平城京歴史館」で、平城京の造営や暮らしを映像や模型で学ぶという。
http://www.1300.jp/gaiyou/080212kgaiyo.html

新計画の詳細は上記ホームページをご参照いただきたいが、今朝(2/13)の奈良新聞の見出しを追うと《堅実型へ見直し 仮設施設は最低限に 大極殿活用も視野》《継続・全県型に期待の声》《早期具体化望む》《PR積極的に/交通手段は?/周辺地域と連携》、知事会見のタイトルは《主会場は無料/後に残る祭りごとに/赤字出さない》。これだけでも、全体の雰囲気を感じ取っていただけるだろう。

なお朝日新聞の見出しは《企業協賛金集まらず 事業費7割減に》《目玉のパビリオンどこに? 事業規模は? 国待ちであいまいさ 背景に国営公園化》《市町村、独自催しへの不満の声》と手厳しい。100億円の総事業費の内訳がはっきりしないこと、宮跡の整備計画が国抜きでは決められないこと、市町村は関連イベントの開催を求められても(助成金の有無が分からない状態では)動きがとれないことなどを指摘したものだ。同紙は山根一眞氏の《過去に学んで未来をどう構築するかという鮮烈な提案がなければ人々の関心を集めることはできない。今回発表の計画は総花的で、歴史の学習展といった印象だ》という辛口コメントも紹介している。

産経新聞は「視点」(奈良版2/13付)で、県政担当記者が《「急ごしらえ」の感がぬぐえない》、国の整備費負担が決まるのは《今年夏頃になるという。県や市町村の負担割合も現時点では未定。パビリオン2館も、単独施設か複合施設かを決めかねている》、《県民に詳しく説明できないような計画では、先行きに常に不安感がつきまとう》と記している。

極め付きは籔内佐斗司氏(彫刻家・東京芸大教授)制作のマスコットキャラクターで、同記者は《公募することもなく、大手広告代理店を通じて選んだデザイナー候補者の中なかから、すでに昨年3月には1人に絞り込んでいたという》、《デザイン料や著作権料は500万円》、《なぜ公募もなく約1年も前にキャラクターを内定し、かつ公表しなかったのか。愛称募集でも盛り上がりに欠けることが懸念される》とする。確かにこのキャラは、籔内氏の十八番である「童子」(=異界からやってくる不思議な子供)シリーズの延長線上にあるもので、彼に依頼すればこういうキャラになることは予想されたはずだ。
※籔内佐斗司の世界
http://uwamuki.com/j/indexJ.html#Anchor-AMUSEMENT-49575

「まだ服を着ているだけマシ」ともいえるだろうが、このキャラには寺院関係者からも強い反発の声があるという(角を生やしているのは鬼=四天王などの足元にいる邪鬼だから)。これが地元の芳岡ひでき氏の愛らしいデザインだったら良かったのに、とタメ息をつくのは私だけだろうか。
※芳岡ひできのファンタジーアイランド
http://www.socks.co.jp/

なお各紙には、地元の知人たちもコメントを寄せていた。《2010年をスタートラインに考えてもらっているのはうれしい。ただ、ビジネスとして客を誘致するには、わくわくするようなイベントの核が見当たらない》(奈良ロイヤルホテル 八坂豊社長:奈良新聞)。

《宿泊しながら奈良を学ぶ講座を作ってみてはどうか。それが人気を呼び、新たな奈良ファンを産むだろう。大極殿など復元建物だけでなく、滞在型イベントも継続させて、経済活性化へつなげてほしい》(奈良県立大学 安村克己教授:朝日新聞)。

《奈良の歴史遺産に頼りすぎている。もっと地域文化のすばらしさも伝え、観光客に地域へ入り込んでもらわないと真の経済効果につながらないのではないか。(中略)地域の人が主体となってイベントをする。県がそれらをしっかりサポートする形が望ましい》(地域活性局 藤丸正明代表:朝日新聞)

下方修正計画であれ、国の指示待ちであれ、開催2年前というギリギリのタイミングで実施計画案が出てきたことで、私は少し安心した。奈良時代の貴族の衣裳で会見に現れた荒井知事は「平成22年をピークに終わるのではなく、県の観光をグレードアップできる事業を目指している」と語った。市役所南の県営プールを撤去し、高級ホテルを誘致する意向も表明している。

思えば、1997年(平成9年)に「平城遷都1300年を考える奈良の会」が開かれ、この会の提言で99年(11年)「平城遷都1300年記念2010年委員会」が設立された。それから8年が経過して、やっとここまでたどり着いたのだ。異論はあるだろうし私も不満があるが、地元が地域活性化の目玉と期待するイベントであることは間違いがない。県民の知恵と力を合わせて、この事業を成功に導こうではないか。

※参考:同時進行!平城遷都1300年(9)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4185b8badd29211ae064ac447f2568ea

※写真は平城宮跡・朱雀門(05.4.24撮影)。記念事業協会ホームページのトップ画像をマネてみた。 

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23 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
早々の情報ありがとうございます (鹿鳴人)
2008-02-13 18:42:17
tetsudaさん。早朝からたくさんの情報ありがとうございます。
平城宮跡隣接の積水工場でのホテルプランが伝えられていましたが、県営プールが老朽化ゆえそのあとに300室以上のホテルというプランですね。そんなに広いのかなとも思いますが、いろいろなプラン期待したいですね。
そして何より、遷都1300年がゴールではなく、そこがスタートだという認識が必要だと思います。
総事業費などが縮小になったといわれますが、それが現実的ではないかなという気がします。

それから、実質所得、東京についで奈良が2番だというきょうの日経新聞朝刊の記事はどう考えればよいのでしょうね。
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1300年祭のマスコットについて (usagito)
2008-02-13 22:41:33
はじめてコメントします。なら県民電子会議室ではお世話になっています。
けさ新聞を見て、愕然としました。イベント内容はともかく、マスコットがあまりにもひどい。事業協会に要望書を書いて送りました。日記に書きましたので、よろしければご覧ください。

報道では、産経は朝日よりもさらに辛口です。

一昨日の竹送りには自転車で京田辺まで往復してきたので、写真入りで日記を書こうと思っていたのですが、マスコットの件があまりにもショックだったのでこれを先に書きました。今後ともよろしくお願いします。
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裏目に出るのは (横田)
2008-02-14 00:25:27
大仏さんの手のひらのバッチも、巷の「STOP!飲酒運転」とかち合ってしまったし、今度のマスコットも世間の好みが読めてなさそうです。
なんでかなーと、usagitoさんのblogから、1300~協会会長「秋山喜久」で検索してみて納得・・・
そういや大和北道路トンネル案を奈良国際文化観光都市建設審議会で了承しよりよった杉江雅彦会長も同じ1931年生まれです。
「新・京都迷宮案内」の第4話、「 倒木更新」ですかねえ。
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同感です! (anne.m.m)
2008-02-14 01:13:00
usagitoさん、始めまして
私も今朝の新聞見て目を疑いましたよ。
ひどかったですねぇ・・・プロの仕事だとしたら何かはき違えておられます。

「人寄せパンダ」という言葉がありますが、「人除けパンダ」になっちゃいます。

何とかできないものなんでしょうか・・・


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ホテルは25m (横田)
2008-02-14 13:35:08
県営プール跡地に外資なホテルだそうですが、旧ならそごう(30m)など周辺よりも低く平城京跡が見渡せなくなるにも関わらず市の条例を遵守した高さ25mなのは評価するとしても、外資ホテルについては、行状の宜しくないファンドが経営権を持ったりしないかが不安です。

例の空気が読めてないマスコットって、どこかで似たような画風を見たような気がします。すぐには思い出せないのですが・・・。
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奈良のホテル (soliano)
2008-02-14 16:41:02
 奈良に行くたび、いつも思うのはホテルの貧弱さです。特に県中部・南部はそう思います。

 奈良市も、クラシックな味わいの奈良ホテルはそれとして、あまり魅力的なホテルはありません。

 おそらくホテル日航奈良がシティホテルとしては最上位にランクされるのでしょうが、ここも三井ガーデンホテルからの居抜きです。

 県は、県営プールの跡地に外資高級ホテルを誘致したいようですが、果たしてどうでしょうか。

 奈良の住民ではないので、断定的なことは言えませんが、プール跡地は、およそ交通の便もよくなければ、景観もすぐれているとは言いがたいと思います。

 荒井知事の発言からすると、いわゆる超高級ラグジュアリー系ホテルをイメージしているようですが、なかなか難しいと思います。

 最近東京に相次いで開業した、その範疇となるラグジュアリーホテル(マンダリン・オリエンタル東京、リッツカールトン東京、ペニンシュラ東京)は、いずれも客室面積50㎡以上、1室1泊単価50,000円以上です。

 こういうホテルがあるのは西日本では大阪だけで、京都にもまだありません。最近、ハイアットリージェンシー京都が開業し、かなりの高級感を出してはいますが、いかんせん築30年以上のホテルの改装なのがつらいところです。

 JR奈良駅前に、マリオットが進出するようですが、実際はマリオットのブランドでは下位に位置づけられるコートヤードです。このブランドはアメリカでは完全にビジネスホテルです。

 しかし、外国人観光客誘致などを考えると、こうした国際的ネットワークを持つチェーンの進出は歓迎すべきでしょう。

 拙速に超高級ホテルの進出を狙わず、実質的なインターナショナルチェーン(ホリディ・イン、ベストウェスタン等)を有効に進出させれば、我々日本人も手軽に宿泊できるし、世界的な送客も期待できると思います。

 かつて近鉄奈良駅ビルの中に、奈良ホテル別館なんてありましたが、交通の中心である近鉄奈良駅の近辺に、もう少しホテルは欲しい気がします。
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Unknown (ゆうき)
2008-02-14 19:13:44
根本的に、見積もりが甘すぎるようですね。



シルクロード博の二の舞にならぬように、もっと県民が参加出来るようにせないかんと思います。
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Unknown (まほろば)
2008-02-14 20:40:26
キャラクターの作者籔内佐斗司氏は
昨年興福寺大圓堂の特別公開のときに
前庭で『興福童子の秋祭り』展をしていた彫刻家ですよね。
私は違和感を覚えたのを記憶しています。
作風は個性的ではあるけれど、
万人に愛されるべきマスコットキャラクターとしてはどうかなと思います。
着ぐるみにしたらもっと不気味な感じになるでしょう。
今からでも変えてほしいです。

それにしても・・・・
ほんまに奈良の人はヘタやなあとあきれました。

返信する
テンションがた落ち (NANARA)
2008-02-14 20:49:42
2010年までに、なにがなんでも奈良まほろばソムリエになって、遷都事業を盛り上げるために最大限の協力をするぞ!
と思っていた自分が馬鹿に思えてきました。
こんな事のために、無駄な情熱を燃やしていたのかと思います。
この基本計画、正直言ってショックです。
とどめはマスコット。
このままではこのイベント、こけますね。

年末年始に遊びに行きたいのも我慢して、こつこつと勉強していた事が、ばかばかしくなります。

重源上人のような石のような根性と情熱が、事業協会の中には無いようです。
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もとより市民の手になど (しげぞう)
2008-02-15 21:03:06
tetsudaさん、こんばんは
この事業は、もとより市民意志の下にはないと思います
あくまでも官・財による事業(目線)であって、市民との連帯やチャンネルは限りなく乏しいかと
イベントによる一種のトリクルダウン的効果を一概に否定するつもりはありませんが
一時的な恩恵が後に負荷となることは、かつてのシルクロード博が証明していることです
荒井知事は就任前も後もずっと中央を見ていますが(役人出だからそうなることは目に見えてましたが)、見るべきは我が町であり人ではないでしょうか
東京と平城宮跡、いったいどちらの景色を多く見たと言うのでしょう
ヨソから連れて来た「プロデューサー」なる人物も同じ、肩書きを持つ役員も皆同じです
そんな「事業」が、市民はもとより、訪れる人の心に響くとは到底思えません
とまあ、駄々子のようなことを言ってしまいましたが、そんな旧態依然とした行政を許している私たち自身に大きな責任があるのかと思います

発言できるこの場に感謝いたします
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