tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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観光地奈良の勝ち残り戦略(31)料理人の技と心

2009年12月01日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
11/3(火・文化の日)から11/23(月・勤労感謝の日)まで、奈良で開催された「奈良フード フェスティバル」が閉幕した。このフェスティバルは「Cu-Cal in 奈良」(クーカル奈良)、「マルシェ&カフェ」、「街なかレストラン」の3つのゾーンに分かれていて、期間中の来場者(街なかレストランを除く)は16万人近くに上ったという。

最も話題を集めた「クーカル奈良」は、奈良公園浮雲園地特設会場(=トップ写真 11/5)と、「夢しるべ風しるべ」内の武家屋敷(普段は「リストランテ イ・ルンガ」が営業)で催された。料理を作るのは、全国から集まった超一流シェフたちである。《「うまいものなし」とやゆされる奈良の名誉挽回を狙い、荒井正悟知事の肝いりで誘致された》(朝日新聞 11/4付)ものだ。
※Cu-Cal in 奈良 あるいはA級グルメの祭典(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/92094fddcd605de2157623730492d5f4

奈良公園内のテントでは「シェフズステージ」としてランチ(1日2回)が、武家屋敷では「シェフズダイニング」としてランチとディナーが供された。名だたるシェフが、地元・奈良の食材を使って料理を作られたのだ。イベントを共催する奈良県(農林部マーケティング課)も「奈良は食材のブランド化が遅れていた。千筋みずなや宇陀金ごぼうなど、大和野菜などの食材をアピールできれば」(日経流通新聞 7/31付)と期待をかけていた。

このイベントには「食による地域おこし」の意味もある。「奈良フードフェスティバル2009実行委員会」委員長の門上武司氏(「あまから手帖」編集主幹)は、「僕が各地で続けているのは食を通じたまちおこし。これまでも関西の料理人に現地へ行ってもらって地元の食材で料理してもらったり、向こうから産物を送ってもらって料理したり。生産農家の人たちは目を丸くしますよ。私らの柿がこんなデザートになるのか、私らのサトイモがこんなにうまいグラタンに…。生産者と料理人、食べる人の顔の見える交流がもっと盛んになればいいなと思います。もちろん行政のサポートは必要ですが、まずは産地のモチベーションが大事だから」(産経新聞 11/19付)。


大和太ネギのトルティーノ(イ・ルンガ)

クーカルの席はすべて予約制だったが、ほぼ全席埋まったそうだ。特に後半は「誰の料理でも良いから、とにかく食べたい」という人がほとんどで、キャンセル待ちが多かったとか。ご本家の軽井沢をしのぐ人気だったのだ。当ブログでも「早めにご予約を」と呼びかけたが、これは正解だったのだ。
※参考:クーカル奈良・有馬邦明シェフ「パッソ・ア・パッソ」(おぜんさんのブログ「膳-Sai」)
http://blog.goo.ne.jp/ozen1_2006/e/55d3905de45a0b4b64543ce5578da65f

私も何度か、クーカルに足を運んだ。私が初めて訪ねた日(11/5のシェフズステージ)は、イ・ルンガ・堀江純一郎シェフの出番だった。奈良の食材をふんだんに使い、本場仕込みの調理法で、素晴らしい料理を出されていた。カウンターで堀江氏の前に陣取った私たちが口々に「これは美味しい」「やはり、シェフの腕前ですかね」などと言っていると、シェフはきっぱりとおっしゃった。「料理の7割は素材です。あとの3割が調理の仕方。奈良には素晴らしい食材がたくさんありますよ」。

堀江氏はピエモンテ州(イタリア)の「ピステルナ」のオープニングシェフとして、開店2年目にイタリア版ミシュランで1つ星を獲得された(日本人初)。東京の「グラティスカ」のシェフを経て、09年8月、奈良に来られて「リストランテ イ・ルンガ」を開店された。


大和肉鶏もも肉の煮込み(イ・ルンガ)

堀江氏がクーカルで出されたのは、ヤマトポークの岩塩包み焼き、大和太ネギのトルティーノ(2つ上の写真)、大和肉鶏もも肉の煮込み(上の写真)、奈良の地物蜂蜜のパルフェなど、まさに奈良尽くしだった。別のシェフは「三条通のJA特産品アンテナショップの野菜は、安くて品質がいいね」とおっしゃっていた。散歩していて、偶然発見されたのだそうだ。


アマゴのラビオリ(神戸北野ホテル)

アマゴ(アメノウオ)を推すシェフも多かった。「神戸北野ホテル」の山口浩シェフはアマゴのラビオリ(上の写真)、「ル・マンジュ・トゥー」(新宿区)の谷昇シェフはアマゴのムニエル(下の写真)、「ジョヴァノット」(心斎橋)の上村和世シェフはアマゴとエビのサフラン風味のタヤリン(細いパスタ)を出されていた。
※山口浩シェフ「神戸北野ホテル」(膳-Sai)
http://blog.goo.ne.jp/ozen1_2006/e/e3beb15e5d135e8a6d537cbfba7e5a83

私もアマゴは大好物である。田中敏子さんの『大和の味 改訂版』(奈良新聞社刊)には《鮮度の良いものは塩焼きのほかに薄づくりや糸づくりにして酢味噌で食べる。から揚げ、フライ、バター焼き、またマリネなど、いろいろな調理法で賞味することができて、まさに渓谷の女王格である》と紹介されている。堀江氏も「アマゴは食べたあとの余韻や甘みが、強くて長いです」と賞賛されている。
※かんばれ!アマゴくん(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/fb2ff948e799e261e42e6231eaa09670


アマゴのムニエル(ル・マンジュ・トゥー)

一方、東京のさるシェフ(クーカル奈良で料理を提供)から、こんな話を伺った。「昨夜、奈良の若手料理人たちと話をして、参りました。彼ら、全然元気がないんです。僕も元気を吸い取られて、体調を崩しそうになりましたよ」。

「彼らは『努力してる』って言うんですけどね、その度合いが僕らと違うんです。『本当に、真剣にやってんのか』『血の汗かいてんのか』ってやり返しましたよ」。激しい競争にもまれている東京のシェフと奈良の料理人とでは、仕事にかける意気込みが違うのだ。「僕なんて、1日17時間働いていますからね」と彼は笑った。


アマゴとエビのサフラン風味のタヤリン(ジョヴァノット)

私も以前、「奈良の料理人は(まだやれる余地があるのに)、十分にやりきっていない」というプロの料理人の話を人づてに聞いたことがある。

「料理の7割は素材」で、奈良はその素材には恵まれている。あとの3割が「調理の仕方」と「努力」だとすれば、これらはすべて、料理人の精進で克服できることではないか。スポーツは「心・技・体」だといわれるが、技(調理の技術・腕前)と心(意気込み・向上心)が不足しているのだ。
※音羽和紀シェフ「オトワレストラン」(膳-Sai)
http://blog.goo.ne.jp/ozen1_2006/e/7670bb69e90892249423fcd7bec02b6f

前述の東京のシェフは、「東京の料理人を奈良に引っ張ってきて料理させるのではなく、奈良の料理人が、大挙して東京になだれ込むくらいの意気込みがほしい」ともおっしゃっていた。

クーカル奈良は、私たち奈良の住民にとっては、地元食材のすばらしさを再認識する好機だったし、奈良の料理人にとっては、良い刺激になったこととだろう。このイベントは、来年も再来年も開催されると聞いているが、全国の超一流シェを呼び込むだけではなく、地元料理人と「大和野菜対決」「大和肉鶏対決」などをやってはどうだろう、往年の「料理の鉄人」のように。そうなれぱ、私は喜んで岸朝子役をお引き受けする用意があるのだが…。

このイベントを誘致されたマーケティング課(県農林部)の皆さん、門上さん・西森さん・土田さん・鐵東さんはじめ、実行委員会の皆さん、本当に有り難うございました。良質な奈良の食材を全国に発信する、素晴らしい機会になりました。何度も会場に足を運ばれたおぜんさん、ブログ記事を引用させていただき、深謝です。

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4 コメント

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ありがとうございます。 (おぜん)
2009-12-01 16:06:40
いつも、ブログをご紹介くださいまして、ありがとうございます。

クーカルがどんな風に記事になって登場するのか、楽しみにしていました。tetsudaさん風ですね。

檄を飛ばしたのは、もしかして、あの有名なTシェフでしょうか??
奈良のあるシェフからこのお話聞きました。
大阪でも京都でもシェフ同士の交流会のようなものがあり、情報を共有し、お互い高めあってるようです。でも、奈良にはそのようなものがないそうです。クーカルをきっかけに、そのような場ができ、そこに生産者も加わり、お互いに良い食材、調理で奈良の食を盛り上げてくれればうれしいな。
実は、私は今、そんな場を作れないか考えてるところなんです。良いアイデアがありましたら
教えてください。

返信する
交流会 (tetsuda)
2009-12-02 06:25:16
おぜんさん、コメント有り難うございました。

> いつも、ブログをご紹介くださいまして、ありがとうございます。

こちらこそ。引用させていただいて、助かりました。

> クーカルがどんな風に記事になって登場するのか、楽しみにしていました。

本当はお店ごとに紹介したかったのですが…。とりあえず、まとめておきました。詳細は「おぜんさんのブログ参照」ということで。

> 大阪でも京都でもシェフ同士の交流会のようなものが
> あり、情報を共有し、お互い高めあってるようです。

月に1回、お客さんと若手料理人たちが集まって、簡単な食事をしながら、ワイワイワと話をする場ができれば、面白いですね。開催場所は持ち回りにして。

当番になった料理人さんが、20~30分、自分の思いを話すとか。おぜんさんのネットワークなら、可能ではないでしょうか。
返信する
昨日はありがとうございました。 (井上@奈良県商工会青年部連合会)
2009-12-02 22:47:32
早速のメールありがとうございました。
そして、昨日は有意義な時間を過ごせたことを感謝致しております。
弊社は宅建業を幹としており、水曜日は定休日なのでメールチェックが遅くなり、申し訳ございません。
我々20代30代の青年経済人として、しっかり自覚し、
地域のために、そして各事業所の発展のために日々努力している(はずです^^;)
私も春からブログを始めましたので、覗いて下さいね!
と言っても、機械音痴なので、完成度は低いのですが・・・
ヤフーで『井上会長』で検索して頂けたら、2,3番目に出てくるはずです。
では、今後ともよろしくお願い致します。
返信する
斑鳩町 (tetsuda)
2009-12-03 06:38:29
井上会長、早速コメント有難うございました。

> 私も春からブログを始めましたので、覗いて下さいね!

おお、これは立派なブログではないですか。井上会長の多彩な活動ぶりがよく分かります。
http://maaa226.blog72.fc2.com/

世界遺産のある斑鳩町は、法隆寺などのお寺以外は、いまひとつイメージが明確でないように思います。逆にいえば、それだけ地域振興の余地を残しているということ。今後のご活躍を大いに期待しています。
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