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コメが買えない本当の理由 by 山下一仁氏(キヤノングローバル戦略研究所)

2024年09月05日 | 日々是雑感
相変わらず、コメがスーパーの店頭に並ばない。ウチはパスタや麺類をよく食べるので、今のところ不便はないが、それでも「いつまで続くのだろう」と、一抹の不安を覚える。今朝(9/5付)の毎日新聞では、新米の店頭価格が5㌔で3,000円と、例年より1,000円ほど高い、という事例も紹介されていた。
※トップ写真は、明日香村橘で2020.9.28に撮影

先週(2024.8.31付)の毎日新聞「オピニオン」欄に、「コメが買えない本当の理由」という記事が出ていた。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏へのインタビュー記事である。見出しは〈減反政策こそ主因/生産態勢ギリギリ/目指すべきは増産〉。減反をやめてコメを増産し、輸出に回すべきだという。以下に全文を紹介する。

スーパーや飲食店ではコメが品薄状態となり、コメの価格が高騰している。ほぼ100%国産なのに、なぜこんな事態に陥っているのか。元農水官僚の山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に「令和の米騒動」の内幕を尋ねると、消費者をないがしろにしたコメ政策の実態が見えてきた。【聞き手・宇田川恵】

減反政策こそ主因/生産態勢ギリギリ/目指すべきは増産
――なぜコメの高騰や品薄が起きているのですか。
◆昨年の猛暑による不作やインバウンド(訪日客)の増加で消費が増えたためと言われますが、それは主な要因ではありません。昨年産米の場合、コメの出来具合を示す「作況指数」は101で平年並みでした。また、月約300万人の訪日客が日本に1週間滞在し、日本人並みの量のコメを3食とると仮定しても、消費量はわずか0・5%程度に過ぎません。

――では大きな原因は何だと?
◆コメの不足は減反政策のせいです。減反とはコメの生産を減らして市場価格を上げること。コメから麦や大豆に転作すれば、国が農家に補助金を出す仕組みです。パンなどの消費が増える中、コメが余って値下がりしないよう生産は年々減らされています。最近は水田の約4割を減反して6割しか使わず、ピーク時(年1445万トン)の半分以下に抑えている。

ギリギリの生産態勢でやり繰りしているから、訪日客が少し増えるなど、ささいな需要の変動ですぐ品薄となり、価格が高騰してしまう。それが問題の本質です。

――そもそも減反政策は2018年、安倍晋三政権が廃止したのでは。
◆あれはごまかしです。廃止したのはコメの「生産数量目標」だけで、生産を減らせば補助金を出すという本丸は残したままです。当時の官邸は「減反廃止」で改革色を打ち出し、政権浮揚に利用しようとしたのでしょう。本当に減反を廃止したなら、生産は増えて価格はドンと下がり、農家から大変な抗議運動が起きたはずです。

――コメ離れが深刻とされますが、価格が下がれば、消費者はもっと食べますよね。
◆その通りで、減反というのはまったくひどい政策です。生産を減らすための補助金に年間3000億円超も支出し、わざわざ米価を高くして消費者の負担を増やしている。また減反政策のせいで、コメの単位面積当たりの収穫量「単収」を増やす品種改良は止められています。米カリフォルニアのコメの単収は今や日本の1・6倍、中国も日本を上回ります。

――減反はやめるべきだと?
◆50年以上も減反を続ける国は他にありません。減反を廃止し、どんどんコメを作って本格的な輸出に乗り出すべきです。減反をやめない限り、今後も品薄や価格高騰は繰り返されるでしょう。

輸出に大きなメリット
コメは日本がほぼ国内で生産できる唯一の穀物だ。食糧安全保障の重要性が高まる中、コメ増産は早急に検討すべき課題と言える。日本のコメの年間生産量は現在700万トン弱だが、山下さんは「減反をやめて、単収の高いコメに変えれば、年間1700万トンを生産する実力はある」という。

そして1700万トンのうち、国内で消費し切れない1000万トンを輸出に回せば、安全保障上のメリットは大きい、とも指摘する。もし台湾有事などで輸出入が止まった場合、輸出していた1000万トンは国民の食料に充てられるからだ。「輸出はいざという時の備蓄の役割を果たす」とも述べる。

日本が1000万トンのコメを輸出するなら、世界最大規模のコメ供給国となり、世界の食糧安全保障にも貢献できるという。「そんなチャンスがあるのに見向きもせず、日本はいつまで国内の米価を高く維持することだけに注力するつもりでしょうか」と山下さん。この問いかけを真剣に受け止めなければならない。
インタビューの詳細はサイト(https://mainichi.jp/articles/20240815/k00/00m/020/216000c)で紹介しています。

◆ことば コメの価格
JAなどの出荷業者と卸売業者が決める「相対取引価格」が代表的な指標とされる。農林水産省が発表した2023年産米の6月の同価格は全銘柄平均で玄米60キロ当たり1万5865円と約11年ぶりの高値となった。7月時点の23年産米の年度平均価格は22年産米より約11%高い。また卸売業者間で売買する取引価格も高騰しているという。

◆人物略歴
山下一仁(やました・かずひと)氏
1977年東京大法学部卒、旧農林省入省。経済協力開発機構(OECD)農業委員会副議長、農林水産省農村振興局次長などを歴任。専門は食料・農業政策など。「日本が飢える!世界食料危機の真実」など著書多数。


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