tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

インウンドバブルの「毒」を抜け! by アレックス・カー/観光地奈良の勝ち残り戦略(131)

2020年07月02日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
朝日新聞の「耕論」(2020.6.24付)「旅、変わる、変える 新型コロナ 岡部宏生さん、アレックス・カーさん、鈴木文さん」を読んだ。リード文は《人間は潜在的に旅する欲求を持っている。しかし、新型コロナ禍で移動そのものがままならない時代に。感染拡大の長期化も見込まれる中、これからの旅の形を考える》。とりわけアレックス・カー氏の指摘には、膝を打った。彼の話を抜粋して紹介する。
※トップ写真は、アレックス・カー氏。サイト「旅ぐるたび」から拝借

◆観光業界の「毒」抜く機会 アレックス・カーさん(東洋文化研究者)
観光庁が掲げてきた今年の訪日外国人4千万人の目標は、コロナ禍によって、ほぼ達成不可能になりました。観光業は日本にとって極めて大事な産業であり、政府も「観光立国」を掲げています。しかし、受け入れ側の準備が整わない中で急速に訪日客が増えたため、マイナス面も生んでいました。

私はコロナ禍という災厄を、日本の観光業が抱えている「毒」を解毒する機会と位置づけるべきだと考えます。「毒」とは、オーバーツーリズム(観光公害)です。京都のお寺で総門を抜けて最初に目に入ってくるのは、参道を埋め尽くす人々の波です。こんなカオスの状態で、日本古来の文化を本当の意味で味わうことはできません。

イタリアのボルゲーゼ美術館は入館の完全予約制を導入、南米の都市遺跡マチュピチュでも入場制限をしています。海外では対策が進む一方、日本は大きな後れをとっていました。本当に行きたい人が行けるような、公平な仕組み作りが求められます。

文化の稚拙化も「毒」の一種といえます。例えば、京都の二条城のふすま絵は劣化から守るため、複製に差し替えられました。キラキラと輝く派手な色合いが人気のようですが、外国人にこんなチープなものが日本文化だと思われて良いのでしょうか。

 「京都の台所」である錦市場も抹茶アイスクリームの売店やドラッグストアなど観光客好みの店が増えて、地元の人は足を運ばなくなっています。市場原理で売り上げは増えているのかもしれませんが、文化的には京都の町にとって損失です。

コロナ後は、訪日客の数など数値の回復ばかりが重視され、コロナ前に気づき始めていたマイナス面の解毒を忘れてしまうのではないかと心配です。コロナ対策で取り入れた入場制限などの対策が、騒動の収束とともになくなることも懸念しています。日本の製造業も公害問題という危機の時代に正面から向き合って対応することで、「健全」になることができた。観光業も同じです。

私は8年前から、徳島県の祖谷(いや)で古民家を修復した宿泊施設を運営しています。この地での滞在は異質な自然環境との出会いであり、深い谷間から湧き上がる霧は幻想的で、心が弾みます。日常から離れて煩悩から開放される。そういった「特別感」は旅に欠けてはならないものです。コロナ前の日本ではこの旅がもつ「特別感」が残念ながら失われていました。

全国の観光地がコロナ後にどのような観光の姿をめざすのか。それは、国が決めることではなく、その地に住む人たちや観光業者、行政機関が話し合ってどのような道を選ぶのか、だと思います。(聞き手・湯地正裕)


オーバーツーリズム(観光公害)や文化の稚拙化という「毒」を抜け、完全予約制や入場制限が必要、公害問題に正面から立ち向かって「健全」になった製造業に学べ、旅には日常から離れて煩悩(ぼんのう)から開放されるような「特別感」が必要、コロナ後の姿は住民・観光事業者・地元行政が話し合って絵を描け、なるほどもっともなことだと納得する。インバウンドバブルがはじけた今、奈良の観光業界も正念場を迎えている。

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