tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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同時進行!平城遷都1300年(19)1300年祭≠平城宮跡会場

2010年04月20日 | 平城遷都1300年祭
平城遷都1300年祭の会場の1つである平城宮跡会場のオープンを4/24(土)に控え、次々に内覧会が催されている。私も縁あって、4/16(金)に行われた報道・旅行関係者向け内覧会に参加することができた。この日の様子は、同日の朝日新聞夕刊・1面トップで報じられた。タイトルは《遷都祭 来客ごまんと? 収容力は難題 ピーク時4.5万人試算》だった。

ジャーナリストが物事を批判的に見るのは大切なことではあるが、地元民である私の感覚とはズレがあるので、少しこの記事に茶々を入れてみたい。
※当ブログ記事の末尾に、最新情報を「追記」したので、ご参考に

《従来の神社仏閣頼みの観光客が伸び悩む奈良県。公式マスコット「せんとくん」などによって知名度がアップした平城遷都1300年祭の集客にかける期待は大きいが、パビリオンの受け入れ能力など課題は残されたままだ》。奈良の観光は確かに伸び悩んでいるが、それは「神社仏閣頼み」が理由なのではない。

それどころか、09年に世界各地の美術館で開かれた特別展の1日当たりの来場者数調査で、まさに「奈良の神社仏閣」に関する展示会が、ワールドランキング1位から3位を独占したのだ。それは、

1位 国宝 阿修羅展 東京国立博物館(阿修羅像は、興福寺の仏さまだ)
2位 正倉院展 奈良国立博物館(正倉院は、東大寺の正倉=宝物庫)
3位 皇室の名宝―日本美の華 東京国立博物館[正倉院宝物&春日権現絵巻など](春日権現絵巻は、春日大社に奉納するために描かれた絵巻である)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/366821162e2ca9e2ab8aabaa486eefee

《県や奈良市などでつくる平城遷都1300年記念事業協会は、平城宮跡会場の入場者数をピーク時の黄金週間や秋の紅葉シーズンで1日約4万5千人とみている。だが、平城京歴史館の収容能力は1日最大約3500人、平城京なりきり体験館の「天平衣装の着用体験」は同約400人、「発掘疑似体験」は同約370人にすぎない》。

今回の祭典は、パビリオンでお客を受け入れることを想定した祭典ではない。来場者すべてをパビリオンで受け入れるとしたら、いったいどれほどの数の箱ものが必要になるのか。奈良公園に来るお客を、すべて国立博物館や東大寺や興福寺の伽藍で収容するためには…、というのと同様の乱暴な話である。

朱雀門から、このたび復原された大極殿(=トップ写真)までは約1kmある。平城宮(今でいう宮城・皇居)だけでも、約130haあるのだ。これは東京デイズニーランドとディズニーシーを合わせた面積(約100ha)より広いのである。130haという広大なスペースの「収容能力」に思い馳せてほしい。

そのため、4/24~11/7まで、平城宮跡探訪ツアーが行われる。ガイド付きツアーは1.5時間コースと2.5時間コースがあり、当日申し込みもできる。専用端末によるセルフガイドシステムもある。平城宮跡では、ぜひ歩いて巡り、そのスケール感を味わっていただきたいと思う。75歳以上のお年寄りや障害者、3歳以下の子どもさん向けには、電動トラムやカートも用意されている。「古代行事の再現」や「まほろばステージ」など、気軽に楽しめる催しも多い。
http://www.1300.jp/event/detail/kyuuseki/keve100326.html

1300年祭の運営の不備などは、来場者の反応などを見ながら、今後改善されていくことだろう。

《パビリオンがこの二つしかないのは、企業の寄付集めが難航し、総事業費を350億円から100億円に圧縮したためだ。当初は9棟の建設が計画された。荒井正吾知事は「奈良県には1300年祭以外にも見どころがたくさんあるので、施設はあまりない方がいい」と意に介さない。平城宮跡会場を、奈良の歴史・文化に触れる「玄関口」と位置づける》。

パビリオンは2つではない。平城宮跡資料館も遺構展示館もある。「新設」されたのが2つというだけだ。しかも、その理由は《企業の寄付集めが難航し、総事業費を350億円から100億円に圧縮したため》ではなく、文化庁の反対が主たる理由である。朝日新聞奈良版(07.3.2付)に《当初計画では、大極殿から約800m南の朱雀門までメーンストリートを設け、両側に奈良時代の建物をイメージした外観を持つパビリオンを建設。しかし、文化庁は「当時そのような大きな建物はなく、来場者の誤解を招く」などと反対》とある。
※同時進行!平城遷都1300年(8)(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/1051e96909c74e7f374e36456c6814b7

そもそも、箱ものに頼って失敗したイベントは、枚挙にいとまがない。奈良県は、箱もの中心だったイベント「なら・シルクロード博」(1988年)の失敗を覚えているのだろう。9棟ものパビリオンを作っても、祭典が終わればゴミとがれきの9つの山を築くだけである。「平城遷都1300年祭の会場≠平城宮跡会場」だ。宮跡は祭典の象徴であり、数ある会場の一つである。近鉄電車からも眺められるのだ。当初から、祭典の会場は奈良県全域とされてきた。

《マイカーでの来場による交通渋滞、ホテル・旅館不足も悩みの種だ。奈良市では観光シーズンに市中心部へ1日7万台近い車が流入する。協会は、ピーク時の来場者4万5千人(1日あたり)のうち、マイカー客が1万人を超すと予想。その対策として、行事が集中する春、夏、秋には、平城宮跡会場から約5キロ離れた郊外に3カ所の駐車場(計2千台)を設営し、会場とシャトルバスで結ぶ予定だ》。

パーク&バスライドの実現は、今後の奈良観光に必須の要件である。1300年祭では、「リアルタイム駐車場情報」で、郊外駐車場などの空き状況を知ることができる。1300年祭をテストケースとして、パーク&バスライドはぜひ実現させてほしいものである。新聞は声を大にして、「マイカー自粛」を呼びかけてほしい。
http://www.1300.jp/traffic/parking.php

《県によると、大手旅行会社3社を通じた県内宿泊施設の4~6月の予約は約4万2千人で、前年同期比5割増。市中心部の大手施設は5月末までほぼ満室状態だという。ホテル日航奈良(奈良市)の担当者は「平城宮跡会場がオープンする4月24日前後は半年以上前から予約で満室なのに、まだ問い合わせがやまない」と悲鳴を上げる》。昨年は新型インフルエンザで修学旅行生が激減したから、5割増という数字になったのである。ホテルが「嬉しい悲鳴」を上げるのは、当然だろう。

《奈良観光は、大阪や京都のホテルなどに宿泊し、日帰りで訪れるのが定番になっている。このためか、奈良県内の2008年度のホテル・旅館の客室数(計9436室)は全国最下位。県や市は1300年祭を見据え、市中心部へのホテル誘致を進めたが、不況の影響で実現しなかった》。奈良では観光ピーク時の春秋とボトム時の夏冬の差がありすぎるので、リスクを恐れて宿泊施設の新規開業が進まないのである。企業数が少ないのでホテルの宴会需要が見込めない、という背景もある。

《関西社会経済研究所(大阪市)が試算した1300年祭の経済波及効果は08~11年で、奈良県988億円、大阪府324億円、兵庫県95億円、京都府74億円。武者(むしゃ)加苗研究員は「奈良にもっと宿泊施設があれば経済効果はアップした」と語る》。犬が西向きゃ尾は東、「宿泊施設があれば経済効果はアップした」は、理の当然。ここ10年で、主に修学旅行生向けの旅館の廃業が相次いだ。奈良は「市中心部の大手施設」に頼るのではなく、民宿やB&B、宿坊のように、観光ピーク時の受け皿となるような小回りの利く宿泊施設をもっと増やすべきである。

たまたま朝日新聞を俎上に載せたが、同紙に限らず《メーン会場 住民公開 開場から400人が列》(4/19付 読売新聞 4/19付)、《奈良の平城遷都1300年祭 メーン会場、収容力に不安も 地元住民向け内覧会》(同 産経新聞)、《大極殿1時間待ち 踏切渡り地元2万8000人》(同 奈良日日新聞)と、よく似た見出しがずらりと並んでいて、げんなりする。その点、奈良新聞のコラム「國原譜(くにはらふ)」だけが《1300年祭は平城宮跡会場だけではない。今年の元日からスタートしているのであり、県内各地での関連イベントも含め、全国・海外から(奈良県に)訪れるすべてが来場者だ》(筆者は「北」氏)としているのには、全く同感である。

すべては「平城遷都1300年祭の会場は、平城宮跡会場である」という誤解から始まっている。だから「すべての来場者を2つの新設パビリオンで受け入れるためには…」という風に誤った論理が展開していく。

1300年祭は、同時多発・県下広域分散型の1年間の長きにわたる祭典である。「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」などは、県下の約50か所で秘仏などを拝観でき、人気を集めている。

「1300年祭の奈良に訪れよう」という向きは、(通常の観光と同じく)ゴールデンウィークなどの混雑ピークを避け、ゆったりとしたスケジュールで県下各地のお好みの見どころを訪ねていただきたい。奈良はのんびり歩くに限る。ガラスケースに入っていない阿修羅像などが間近で拝める興福寺国宝館(このたび新装された・600円)などは、穴場である。待ち時間も短いし、「大遣唐使展」の奈良国立博物館も近い。国宝館は近鉄奈良駅から徒歩5分なので、ぜひ電車で訪れていただきますように。

※追記(4/22)
4/21、平城遷都記念事業協会は、4/24~5/9までの「平城京歴史館」の開館延長などの措置を発表した。
http://www.1300.jp/about/news/topics/2010/topi100423.html

奈良新聞(4/22付)によると《協会は平城京歴史館に関し、同館北側で午前の部(午前9時~午後2時)と午後(午後2時~同4時20分)に分けて入場時間指定の整理券を配布。配布時間と枚数は、午前8時50分に2250枚、午後1時に1350枚を配る》。
http://www.1300.jp/event/kyuuseki/topics/2010-1/kyuu100326.html

《さらに、開館時間を午後5時半から同7時半に延長。同時間帯については午後4時に「夕暮れ特別拝観」ととして900人分の整理券を配布する計画》。シャトルバスの増便や、徒歩で近鉄西大寺駅に帰る人のための臨時照明も設置するという。
http://www.1300.jp/about/news/press/2010/100421-2.html

《「なりきり体験館」でも、疑似発掘体験、天平衣装体験など、いずれも午前9時と午後1時に時間指定チケットを販売。団体予約を除いて、当日の個人申し込みに応じる》。
コメント (16)
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