tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(28)神戸っ子の評価

2009年07月12日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
「奈良のむらづくり協議会」をご存じだろうか。《住む人と訪れる人との間に信頼関係が醸成され、各地域の自律発展につながる「むらづくり」を進めていくために、奈良にこだわりをもち、積極的な活動を展開されている方々の総力を結集した「奈良のむらづくり」プロジェクトを実行する》ことを目的に、07年2月に設立された。「むらづくり」は「地域おこし」のことだ。代表幹事は、村田武一郎氏(奈良県立大学教授)である。
http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/cgi-bin/profile/data.cgi?number=5036

同協議会の活動事例としては《(1)奈良のモニターツアー 奈良県東部・中部の「自然」「ふるさと」に焦点を当て「従来の奈良」のイメージを変える新しい切り口の「奈良旅行」を全国に向けて提案。モニターツアーを実施 (2)奈良県東部・中部の山間地域における工房街道づくり 旧室生村から川上村にかけて、工房が多く立地しており、「工房街道」として認識してもらえるように、工房街道ウィーク、工房街道ツアー等を開催 (3)交流の促進 奈良にこだわりをもち、積極的な活動を展開されている方々の総力を結集するための交流を促進するためのイベント等(シンポジウム、物産展)を開催》というものである。
http://www.naranomura.jp/


神戸花鳥園(ポートアイランド南駅 07.3.10 撮影)
 
同協議会は、過去に2回「奈良観光の評価に関する調査」を実施・公表しているが、その3回目(2009年春期調査結果)が、先週発表された。県下のマスコミは奈良市長・市議選の報道で多忙なのか、まだ報道していないし、Webでも出回っていないが、興味深い結果が出ているので、いち早く当ブログで公表させていただくことにする。

このアンケート調査は《奈良・神戸が私鉄により直結したことから、兵庫県在住者の奈良への評価情報(評価できること、改善すべきこと)を得、今後の奈良の観光交流の改善に資することを目的に実施した》というものである。私も先日「快走!阪神なんば線」というブログ記事で兵庫県からの来県客が増えたことをお伝えしたが、今回の調査では中身を詳細に調べて分析されている。
※快走!阪神なんば線(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/638331bc0c14729ad99e506230679a1d


神戸花鳥園(同)

ただ、結果の分析(コメント部分)は、村田武一郎氏(神戸市在住)一流のシニカルな論調で貫かれていて、私が(素直に)結果数字から受けた印象とは、ずいぶん違う。マスコミは村田氏のコメントをそのまま載せるのだろうが、当ブログでは《 》で引用した以外の部分は、私の意見を書かせていただくことにしたい。
※「奈良観光の評価に関する調査」2009年春期調査結果
http://mail.google.com/mail/?ui=2&ik=15d665318f&view=att&th=1225eca9bbac6c55&attid=0.1&disp=vah&zw

この調査は《近鉄奈良駅前広場において、4月25日(土)~5月6日(水)、兵庫県下へ帰る観光客にアンケート調査票(ハガキ)を手渡し、郵送回収により、334人から回答を得た(兵庫県在住者への配布4,154票、回収率8.0%)》《回答者の居住地は、神戸市が約45%を占め、神戸・阪神間で約77%であった。なお、加古川市・明石市・姫路市など阪神電鉄と相互乗入れしている山陽電鉄沿線からも10%超が来訪している》。


神戸花鳥園(同)

Ⅰ.観光消費額は伸びている。
《日帰り客一人あたり消費額は、7,045円にものぼった。この金額は、従来の奈良の観光調査における同消費額3,150~3,600円をはるかに上回る。神戸市の日帰り客一人あたり消費額が約8,800円であり、日帰り観光にその程度のお金を使うことが普通になっている兵庫県民を調査対象としたことから出てきた数値であり、神戸との直結は、地域経済に好影響をもたらしていると考えられる》。

Ⅱ.「もてなし」は不足気味だが、大した問題ではない。
《奈良観光の「全体的満足度」は、「とても満足」約22%、「ほぼ満足」約59%で、回答者の約81%が満足しているが、「もてなし対応」については、「とても満足」約15%、「ほぼ満足」約51%で、満足している回答者の割合が約66%》。全体的満足度に比べてもてなし満足度は15ポイント低いので、やや「もてなし」が不足という感じだ。しかし、過半数が満足しているし、もてなしが「不満」は6.1%(全体の「不満」は4.6%)に過ぎないので、大きな問題ではない。なお《「飲食店・土産物店」の「もてなし」は、神戸と奈良で「かわらない」が約59%で大勢であるが、「神戸が上」の約24%に対して、「奈良が上」は約17%》。


奈良ホテル玄関(07.7.25撮影)

Ⅲ.史跡などに高い評価
《「神社仏閣・公園・史跡・博物館等」は、回答者の約84%が「奈良が上」と評価しており、「神戸と違って歴史の重みが感じられる」などの意見が挙げられた》。
なお《「見どころの多さやまちの雰囲気」は、「神戸が上」の約20%に対し、「奈良が上」は約45%あり、神戸にはない「まちのゆとりや佇まい」が評価されている》。

Ⅳ.飲食店・土産物店の値段は安いが、中身の向上が必要
《「飲食店・土産物店」の「価格」は、神戸と奈良で「かわらない」という回答が約48%あるが、「神戸が安い」の約23%に対して、「奈良が安い」は約30%あり、神戸に多いオシャレな飲食店等の価格の高さを反映していると言えよう》。
《「飲食店・土産物店」の「内容」は、回答者310人のうち180人(約58%)が「神戸が上」と評価しており、「奈良が上」との評価は10%にも達しなかった》《奈良は、神戸に比べ人口・都市集積が低く、また、新規参入しにくい風土があり、多様で質が高い飲食店等が揃うことは期待しにくいが、新規参入を容易にするインキュベータ施設の整備により、飲食店等の質・量を着実に確保していくことが望まれる》。


旬彩(しゅんさい)ひよりのご主人・尾崎さん。味ももてなしも、抜群のお店だ(5/21撮影)
※旬彩ひより(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7e4e182c63653809d01d959153c80ca2

Ⅴ.特徴的な意見
調査結果に掲載された「奈良に対する代表的な声」および「奈良での訪問施設とその評価」から、私の目を引いたものをピックアップしてみる。
1.良かったこと
(1)全体・もてなし対応
《人々がせかせかしておらず、穏やかに行動されていて良かったです》《県庁前広場のマジックショーが良かった。/県庁が開放されていて係員が最高》《タクシーの運転手さんが皆とても親切でした。/気軽に接される》。

(2)飲食店の内容(全文)
《葛をつかった料理が神戸にはあまりないのでおいしかったです。/出されるお茶もおいしく食事もホッとする。昔からのひなびた感じがありとても良かったです。/テーブルの上にあった抹茶ドリンクがものすごくおいしく、良かった。/柿の葉ずしとソーメンのセットがおいしかった。お茶などもこちらから言わずに入れてくれた。/静か。一人でも気兼ねがない。/茶粥がおいしかった。雨が降って寒く、アツアツのお粥をおかわりできるのがうれしかったです。/奈良らしい建物とそれにマッチした食事内容。/メニューの説明をしてくれた(アレルギーなど)/風情があった。/食べ方を説明してくれたことは良かった。/京都のように現代化されていない昔ながらの優しい味が良い》。


旬彩ひより名物の蒸し野菜。田原本町の畑から直送される(同)

2.改善すべきこと
(1)全体・もてなし対応
《歴史の見せ方が京都よりヘタだと思う》《京都と比べると食事する所が少ない(割烹料理屋とかフランス料理等)。/駐車場のあるレストランが少ない》《GWで混んでいて食べるところに困りました》《観光案内所が無いし、観光バスのチケット売り場の人の接客が悪い》《「奈良まち散策マップ」に某所で「抹茶をいただけます」と書かれていましたが、これは無料でいただけると勘違いします。記載には注意してください》。

(2)飲食店の内容(全文)
《店に個性はない。奈良ならではの飲食物がほしい。/味もあまり特徴がない。/ランチやカフェはそれぞれ良い所があるのですが、神戸の方がオシャレ。/もう少しオシャレなカフェや店が多くなれば良い。/奈良は和のイメージが強いが食事は平凡だった。/味はおいしいが内容的には満足していない。神戸で2,800円だせばもっと満足する。/お昼の食べ物のメニューが少ないと思う。/奈良らしいものが少ない。/驚きを感じさせる店には残念ながらめったにめぐり会えない。/新しい商品や、ここにしかないというものが分かりづらい。/神戸は、神戸の雰囲気に合った料理・喫茶ともに観光客を喜ばせていると思う。/駅前でお弁当を買おうと思っても思うものがなかった。神戸はデパート地下で買える。/はじめに水を出してもらったのですが、コップがワンカップのコップみたいだった。/注文して出てくるまでに時間がかかった。/子ども用の椅子がない》。


日本料理 志まづ・夢しるべ風しるべ店の葛ご膳(ランチ・2100円)。吉野葛がたっぷり(08.7.12撮影)
※「夢しるべ風しるべ」の歩き方(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e949ebc60f825f141bc3770fe75557cb

ざっと調査結果をまとめると、以上のようなことになる。「調査結果の要点」には《この調査では、神戸へ行きなれた人たちから、奈良が一定の評価を得たと理解できるが、今後とも彼らに奈良訪問を続けてもらえるかとなると、疑問が生じる。観光行動のなかで、いまや重要な位置を占める飲食店・土産物店の内容の評価が低いからである》。

《神戸と奈良は、歴史過程も発展過程も極端に異なるまちである。双方の市民が、双方の良さを認識し合い、交流が深まること、奈良の飲食店・土産物店においても、神戸からの刺激による質の向上へと展開していくことが望まれる》。

「もてなし」は巷間言われているほど悪くなかった。それは県の「奈良・もてなしの心推進県民会議」会長をお務めになる村田氏ご自身が《従前の奈良は、来訪者に無関心で、その思いやニーズに応えようとは考えていませんでした。来てもらってうれしいという気持ち、気づかいや心くばりは、他地域に比べ劣っていたと言わざるを得ませんでした。しかし、この県民会議の発足から4年、県民・委員各位のご参画とご協力により、奈良のもてなしが日々向上していると感じます》とお書きの通りである。
※「奈良・もてなしの心推進県民会議 通信」第6号(08年10月)
http://www.pref.nara.jp/kenmin/motenasi/tsushin/tsushin6-1.pdf


山口水産のランチ600円。ご飯も漁師汁(魚のアラ汁)も、お代わり自由(4/9撮影)
※海鮮居酒屋「山口水産」(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/d28beefb19d347c72d9f0ba608b66de6

やはり問題は「飲食店」だ。Ⅴ.の(2)では、調査結果に掲載された全ての文章を紹介したが、なかでも「奈良ならではの飲食物がほしい」「奈良は和のイメージが強いが食事は平凡」「驚きを感じさせる店には残念ながらめったにめぐり会えない」「ここにしかないというものが分かりづらい」という意見には、グウの音も出ない。見せ方や料理そのものに工夫がなく、地場産品も使っていない、という私が感じていた不満が一挙に表面化した、という観がある。

奈良には、上記の写真で紹介したような美味しい食べ物屋さんが多いのだが、中には路地裏とか住宅地の中などにあって、場所が分かりにくい店があることも否めない。ガイド本には、十年一日のごとく同じ老舗がそのまま掲載されている。PRや情報発信が不足している店も多いので、観光客がそれを見つけ出すのは至難の業である。だから当ブログも存在価値がある訳だが、遷都1300年祭を控えて、これは情けない状況である。
※「ならまちで昼食を」シリーズ(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/327aef09af4dba618f5cf3a6273b477d

奈良で最強のグルメサイトは、naranaraさんの「奈良グルメ図鑑」で、私も愛用しているが、どなたかこれをうまく編集して、手軽で便利なガイド本に仕立てていただけないものだろうか。1300年祭記念事業として、十分通用する内容であるが…。
※奈良グルメ図鑑
http://www.eonet.ne.jp/~nara-gourmet/

※トップ写真は、奈良公園内の浮見堂(07.7.25撮影)
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする