tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

朽ちゆく国宝

2006年12月12日 | 環境問題
写真(12/4撮影)は、東大寺大仏殿前にある金銅(金メッキした銅)製の「八角燈籠(とうろう)」である。

高さが4.6mもある大燈籠で、平重衡(たいらのしげひら)の南都焼き討ちも、松永久秀の兵火もくぐり抜けた国宝だ。扉の4面には音声菩薩(おんじょうぼさつ)、4面には雲の中を走る獅子が浮き彫りにされている。

その大燈籠が、酸性雨に侵されている。お寺の関係者によると、年に1度は取り外して補修し、さび止め油を塗る。近年は特に傷みが激しく「このまま放っておくと、ボロボロに朽ちてしまう」という。

同様の被害は鎌倉大仏や上野の西郷さんにも発生し、無数の「アシッドライン」(緑や白の糸状のサビ)が浮き出ているという。

欧米ではもっと被害が甚大で、ニューヨークの「自由の女神」像は銅板を大修理したし、ローマの「マルクス・アウレリウスの騎馬像」は全身に凹凸が発生したため、像を馬から切り離して修理しているそうだ。

それにしても、東大寺創建当初から戦火にも耐えた天平の遺品を、平成の酸性雨で朽ちさせてはなるまい。日本で降る酸性雨は、国内だけでなく、中国大陸で排出される(排気ガスなど含まれる)硫黄酸化物や窒素酸化物に由来している。

経済優先・効率重視のシステムが、文化財や森林や湖沼や、ひいては人体にまで悪影響を及ぼしているのである。

この八角燈籠を、奈良における酸性雨被害のバロメータとして見守っていきたい。
コメント (2)
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