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久しぶりに「京を歩けば」のつづきを書いてみようかと思う。紅葉の季節以来である。
京都市内ではほとんど雪らしい雪も見ぬまま、梅の季節を迎えた。2月の後半には不況に輪をかけて気をめいらせるような雨の日がつづき、観梅へ出かけようとする足も鈍りがちだった。新型の通勤電車の車両には乗降扉の上にモニターがついていて、沿線の案内や天気予報や広告などを際限もなく垂れ流しているが、いつ撮影したかわからない北野天満宮や中山寺の梅林の映像が、何となくそらぞらしく眼に映った。
3月最初の一日は珍しくからりと晴れ、気温も上がるという予報である。京都の梅も、ぼちぼち見ごろにさしかかっているだろう。暖かい陽気に釣られるようにして、少しぶらついてみることにした。
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まず足を向けたのは、月並みといわれればそれまでだが、二条城だ。去年だったか、小雪の舞う日に訪れて以来のことである。ここはといえば修学旅行のメッカだが、シーズンには少し早いのか、あるいは遅すぎるのか、学生たちは見かけない。そのかわりに好奇心旺盛な外国からの旅行者が、歓声を上げながら興味深げに散策しているのが眼についた。そういえばもう何年も前、ドイツ語をかじろうと思ってテレビの語学講座を見ていたら、出演していたタレントが修了試験でドイツ人とぶっつけ本番で話すという課題を与えられ、ロケに来ていたのが二条城であった。京都のなかでも外国人がとりわけ多いところなのだろう。
団体客も多く、首から名札を下げた係員に導かれて、二の丸御殿の縁の下にもぐり込んでいる人たちがいた。あとで調べてみたら、どうやら鶯張りの廊下の仕掛けが見えるらしい。だが、こんなことを個人の客がやっていたら怪しまれるに決まっている。ぼくは建物を観察するのを後回しにして、梅林へと向かった。大阪城公園とはちがって、道はいっさい舗装されていないので砂利を踏んで歩かねばならず、靴底のすり減った足には厳しいものがなくはないが、そこは辛抱するしかない。
梅は七分咲きぐらいだったろうか。紅梅と白梅、そしてその両方がひとつの木に咲く「源平咲き分け」と呼ばれる梅もあった。外国人たちは携帯電話のカメラで、やや年配のアマチュアカメラマン然とした人たちはびっくりするような望遠のレンズで花を狙っている。ぼくもそれに交じって、やや旧式のデジタルカメラを手に歩きまわってみた。
それにしても、梅の花というのは撮りにくいものだとつくづく思う。満開の桜の場合は、まるで霞を凝固させたようにふんわりとしたかたまりに見え、いわばマッスの重なりとして苦もなくファインダーに入ってくれる(邪魔なのは、たむろする人間ばかり)。しかし梅の花は枝々の上に行儀よく並んで咲くので、空間を線状に縫ってのび、ジグザグに飛ぶ羽虫をつかまえるのが難しいように、とらえどころがないのである。
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せっかくの機会なので、広大な二条城の敷地をぐるっとまわってみることにした。
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