原題:『Werk ohne Autor』 英題:『Never Look Away』
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
撮影:キャレブ・デシャネル
出演:トム・シリング/セバスチャン・コッホ/パウラ・ベーア/オリヴァー・マスッチ
2018年/ドイツ
「退廃芸術」と「公認芸術」の組み合わせについて
ドイツのモダンアートの巨匠であるゲルハルト・リヒターの半生をモチーフとしているのだが、リヒターの作風が生まれるきっけかが分かるような気がした。
主人公のクルト・バーナートにはエリザベト・マイという叔母がいて、20歳のエリザベトはクルトを「退廃芸術展」に連れていったりする一方で、高校生の代表としてアドルフ・ヒトラーに花束を渡す役割を担い悦に入っている。つまりエリザベトは「退廃芸術」も「公認芸術」も両方の良さが理解できるのであり、それはバスのクラクションに美しい「ラ」の音階を聞き出したり裸でピアノを弾くという行動にも表れる。
クルト独特の作風である「フォト・ペインティング」とは写真と絵画の組み合わせで、元々は精神障害者としてナチスに連れていかれようとするエリザベトの姿を見たいけれど見ないようにと自らの目を手で覆ったことに端を発した「ソフト・フォーカス」なタッチなのだが、それは「退廃芸術」と「公認芸術」の組み合わせではなかっただろうか。
上映時間の188分があっという間に過ぎ去る傑作である。作品内で使われていたフランソワーズ・アルディの「恋の季節」を和訳しておきたい。
「Le Temps de L'amour」Françoise Hardy 日本語訳
恋の季節とは
仲間たちと「恋の駆け引き」の季節
その季節が通り過ぎるたびに
傷ついているにも関わらず夢中になっている
だって恋の季節とは長いようで短く
終わることはなく誰も忘れられない
20歳の頃は
誰でも自分がこの世の王様だと思う
そして永遠に
自分たちの目は青空で占められると思うんだ
恋の季節とは
仲間たちと「恋の駆け引き」の季節
その季節が通り過ぎるたびに
傷ついているにも関わらず夢中になっている
だって恋の季節はあなたの心に
たくさんの情熱と幸福を注ぐのだから
ある日、恋に出くわすと
心臓が激しく鼓動する
だって人生はそのように進み
恋をしている時が最高に幸せなのだから
恋の季節とは
仲間たちと「恋の駆け引き」の季節
その季節が通り過ぎるたびに
傷ついているにも関わらず夢中になっている
だって恋の季節とは長いようで短く
終わることはなく誰も忘れられない
誰も忘れられない
誰も忘れられない
誰も忘れられない
Françoise Hardy "Le temps de l'amour" | Archive INA